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​ツールを入れるのは最後。業務の「解像度」を上げ、現場を楽にする「見える化」の正しい手順

目次

​見える化の失敗は「きれいに描こうとする」ことから始まる

​「業務を見える化しよう」と思い立ったとき、多くの人が最初に手に取るのはフローチャート作成ツールや、色鮮やかな付箋、あるいは分厚いマニュアルのテンプレートかもしれません。

​しかし、10年近くPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)として多くの現場を見てきた経験から言えるのは、「きれいに描こうとする見える化」は、ほぼ確実に失敗するということです。

​立派な業務フロー図を作ったものの、数ヶ月後には誰も見なくなり、結局「あの人に聞かないと分からない」という属人化に戻ってしまう。この悲劇の原因は、手法の古さではなく、業務の「解像度」が低いまま、表面だけをなぞって可視化したことにあります。

​本当の見える化とは、図を描くことではありません。現場で起きている「名もなき事務作業」や「担当者の頭の中にある暗黙のロジック」を一つひとつ、誰にでも分かる言葉で定義し直す作業。つまり、業務の解像度を上げる作業そのものなのです。

​解決の鍵は「業務の解像度」という視点

​なぜ「解像度」という言葉を使うのか。それは、多くの現場が「モヤがかかった状態」で動いているからです。

​例えば、「届いたメールを確認して、適切に処理する」という業務があるとします。

解像度が低い状態では、この一文だけで片付けられてしまいます。しかし、いざ新人が担当すると、「適切って何?」「どのメールが優先?」という迷いが生じ、結局ベテランが横について教えなければなりません。

​解像度が高い状態とは何か

​解像度が高い状態とは、その業務が以下の3要素に分解されている状態を指します。

要素内容解像度が低い例解像度が高い例
トリガー何がきっかけで始まるかメールが届いたら件名に【発注】と入ったメールを受信したら
ロジックどんなルールで判断するかいい感じに振り分ける金額が10万円以上なら課長、未満なら係長へ
アウトプット最終的にどうなるか返信する共通フォルダの「受注台帳.xlsx」に転記し、返信

「見える化」の第一歩は、この「なんとなくやっている判断」を「数式化できるレベルのロジック」まで分解することにあります。これができていない状態で高価なITツールを導入しても、ツール側が「適切に判断」してくれることはありません。

放置された「名もなき事務作業」を捕まえる

​検索エンジンで「業務効率化」と調べると、多くの記事は「DX」や「大規模システム導入」を勧めます。しかし、現場を本当に疲弊させているのは、システムの隙間に落ちている「名もなき事務作業」です。

  • ​共有フォルダの迷宮から、最新のファイルを探し出す時間
  • ​エクセルの表記ゆれ(全角・半角)を一つずつ手修正する時間
  • ​「あの人」の承認をもらうためだけに、チャットの返信を待つ時間

​これらは「業務」として認識されにくいため、既存のシステムでは救われません。そして、この領域こそが、競合が手をつけていない「ブルーオーシャン」な改善ポイントです。

​「うしろぽっけ」が提唱するのは、こうした細かい、しかし確実に現場の体力を奪っている「淀み(よどみ)」を見つけ出し、ロジックの力で交通整理をすることです。

​属人化を解消する「情報の入り口と出口」の設計

​「あの人がいないと仕事が止まる」という属人化の問題。これも、根気や個人の能力の問題ではなく、情報の「入り口」と「出口」が繋がっていないことが原因です。

​情報の入り口(依頼やデータが来る場所)と、出口(最終的な保存場所や納品物)が曖昧だと、その間を繋ぐために「担当者の記憶」という頼りない橋が必要になります。

  1. 入り口を縛る
    依頼をチャット、メール、口頭でバラバラに受けない。
  2. 出口を固める
    「最新版」がどこにあるか、誰でも1秒で分かる場所を決める。

​この「入り口」と「出口」さえガチガチに固めてしまえば、その中間にある「処理」の自由度は高くても、業務は止まりません。これが、現場に負担をかけずに属人化を殺す、最も現実的な見える化の手順です。

10年のPMO経験が辿り着いた「情報の交通整理」3ステップ

​「見える化」という言葉が抽象的に聞こえるのは、何を、どの順番で整理すべきかが定義されていないからです。私はこれを「情報の交通整理」と呼んでいます。道路が渋滞しているときに信号機だけ増やしても意味がないように、業務もまた「流れ」そのものを整える必要があります。

​ステップ1:感情を捨てて「事実」だけを棚卸しする

​最初に行うのは、業務の洗い出しです。ここで多くの人が「本来はこうあるべき」という理想を書いてしまいますが、それはNGです。必要なのは「今、実際に行われている泥臭い手順」の全貌です。

  • ​「〇〇さんにチャットで確認する」
  • ​「デスクトップの付箋にメモを取る」
  • ​「前回のファイルをコピーして上書きする」

​こうした、システム化の際に見落とされがちな「人間系のつなぎ作業」こそが、業務の解像度を左右する核心部です。

​ステップ2:情報の「入り口」と「出口」を一本化する

​交通渋滞の最大の原因は、合流地点が多すぎることです。

依頼がメールで来たり、チャットで来たり、時には口頭で来たり。入り口がバラバラな状態で「見える化」は不可能です。

  • 入り口の固定
    依頼は必ずこの「SharePointリスト」か「専用フォーム」から受ける。
  • 出口の固定
    成果物は必ずこのフォルダの、この命名規則で保存する。

​この「入り口」と「出口」さえガチガチに固めてしまえば、その中間にある「処理」が多少複雑でも、情報の迷子は激減します。

​ステップ3:判断基準を「もしAならB」の形に翻訳する

​最後に、担当者の頭の中にある「判断」を言語化します。「状況を見て判断する」という言葉を禁止し「もし期限が明日までならA、そうでなければB」という条件分岐(ロジック)に置き換えます。ここまで解像度が上がって初めて、業務は「誰でもできるもの」へと昇華されます。

​エクセルを「卒業」する前に。今の道具を「ロジックの箱」に変える方法

​「見える化ができないのは、古いエクセルを使っているからだ」と考えるのは早計です。最新のSaaSを導入しても、中のロジックがグチャグチャであれば、単に「高価な箱にゴミを入れている」のと変わりません。

​むしろ、多くの現場では「エクセルの限界」ではなく「使い方の限界」が起きています。

​なぜ、あなたのエクセルは重く、分かりにくいのか

​それは、エクセルを「計算機」や「データベース」としてではなく、「方眼紙」や「ただのメモ帳」として使っているからです。

  • ​1つのセルに複数の情報を詰め込む
  • ​表の中に勝手に空行や合計行を挟む
  • ​色分けだけで意味を持たせる(システムには色が読めない)

​これらの行為は、情報の解像度を著しく下げます。見える化の土台を作るには、エクセルを「データの入れ物」として正しく扱う作法が必要です。

​SharePointやPower Automateへのスムーズな移行

​エクセルの解像度が上がると、Microsoft 365の他のツールへの移行は驚くほど簡単になります。

例えば、エクセルの表(テーブル)をSharePointの「リスト」に移し替えるだけで、同時編集が可能になり、更新履歴が残り、属人化は一気に解消へ向かいます。さらに、Power Automateを組み合わせれば、通知や承認の自動化も手の届くものになります。

​「うしろぽっけ」が目指すのは、身の丈に合わない高価な武器を買うことではなく、今持っているポケットの中の道具(M365等)を、最大限の解像度で使いこなすことです。

​マニュアルが「ダメ」な理由と、常にアップデートされる「仕組み」の作り方

​せっかく作った「見える化」の成果物(手順書やマニュアル)が、なぜ1ヶ月後には形骸化してしまうのか。それは、マニュアルを「完成させること」が目的になっているからです。

​「形骸化したマニュアル」の共通点

  • ​文言が多すぎて、読むのに気合が必要。
  • ​例外処理が載っておらず、結局誰かに聞く必要がある。
  • ​修正する手順が決まっておらず、最新版がどれか分からない。

​マニュアルは、一度作ったら終わりではありません。業務が変わるたびに後ろ側のポケットからさっと取り出して、その場で1行書き足せるような「軽さ」が必要です。

​解像度を維持する「Q&A駆動型」の改善

​私は、マニュアルを完璧に作るよりも「質問が来たらマニュアルを直す」という運用を推奨しています。

誰かから「ここ、どうするんですか?」と聞かれたら、口頭で答えて終わりにするのではなく、「その答えをマニュアルに1行追記して、リンクを送る」。

​この繰り返しこそが、業務の解像度を常に高く保ち、サイトの資産価値を上げ続ける唯一の道です。

​見える化がもたらす「本当の自由」

​業務の見える化(解像度を上げること)の終着点は、決して「ロボットのように働くこと」ではありません。

​むしろその逆です。

「考えなくていいこと(定型業務)」を徹底的にロジック化し、脳のメモリから解放すること。

それによって空いた時間で、顧客の声に耳を傾けたり、新しい企画を練ったり、あるいは定時に帰って家族と過ごしたりする。

​この「心の余裕」こそが、バックオフィスを支えるあなたが手に入れるべき、本当の成果です。

​まとめ:まずは自分の立ち位置を知ることから

​ここまで、業務の見える化の「本質」と「手順」、そして「道具の扱い方」について解説してきました。

しかし、いざ自分の現場で始めようと思うと、「どこから手をつければいいのか?」と迷うかもしれません。

​そんなときは、まず現状の「健康診断」から始めてみてください。

20個の質問に答えるだけで、あなたの業務の解像度が今どれくらいなのか、どこが「渋滞」の原因なのかが可視化されます。

​まとめ:『見える化』の先にある、淀みのないバックオフィスを目指して

​「業務の見える化」という言葉は、今やどの職場でも当たり前のように語られています。しかし、その本質が「きれいな図を描くこと」ではなく「現場の解像度を上げ、一つひとつのロジックを定義し直すこと」にあると気づいている人は、まだ多くありません。

​10年という月日をバックオフィスの現場で過ごしてきて、私が確信していることがあります。それは「仕組みが整えば、人はもっと自由になれる」ということです。

​属人化に怯え、エクセルの不具合に時間を溶かし、誰にも気づかれない「淀み」を一人で解消し続ける。そんな日々は、もう終わりにしましょう。あなたが本来向き合うべきは、目の前の複雑なシートではなく、その先にある「より良い仕事」や「自分自身の時間」のはずです。

​ツールはあくまで、あなたのポケットの中にある道具に過ぎません。まずは道具を握りしめる前に、あなたの仕事の「今」を、クリアな視点で見つめ直すことから始めてみてください。

あなたの業務は、いま「どのステージ」にありますか?

ここまで読み進めていただいたあなたは、きっと「今のままではいけない」という確信に近い想いを感じているはずです。

しかし、闇雲に改善を始めるのはおすすめしません。大切なのは、あなたの現場が抱えている「詰まり」の正体を、客観的な数字で把握することです。

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