月末の経理処理中。
クレジットカードの明細に見慣れない、でもどこかで見たことのある名前がある。
SYSTEM_ABC_PRO_PLAN 120,000
「え……?」
記憶の糸を手繰り寄せる。
あれは確か、1年前に「ちょっと試してみよう」と無料トライアルに申し込んだツール。
「使いにくいからやめよう」という話になって、そのまま放置していたはず。
まさか、解約していなかった? いや、したつもりだったけど、最後の「確定ボタン」を押していなかった?
顔面蒼白になりながら管理画面にログインすると、そこには残酷な文字が。
「契約状況:有効(次回更新日:2027年1月)」
「最終ログイン日:2025年1月(1年前)」
つまり、誰も使っていないツールに、会社のお金を1年間(あるいは数年間)払い続けていたことになる。
金額にして12万円。社長になんて説明しよう。始末書か? 給料から天引きか?
今回は、そんな「ゾンビスクリプション(ゾンビ化したサブスク)」を発見してしまった時の、正しい対処法と、二度と「意図しない課金」を発生させないための管理術を解説します。
1. 緊急対応:まずは「止血」せよ。返金は期待するな
発見した瞬間、パニックになって「お問い合わせフォーム」に怒りのメールを送りたくなる気持ちはわかります。
「使ってないんだから返金しろ!」と。
しかし、残念ながらBtoB(法人契約)の場合、返金される可能性は極めて低いです。
「使っていなかった」のはこちらの都合であり、サービス側は「使える状態を提供していた」からです。
まずは感情を捨て、事務的に「止血(解約)」をしてください。
- 即時解約する
「次回更新まで使えます」と出ても関係ありません。今すぐ自動更新をOFFにしてください。1秒遅れれば、その間に更新日が来てしまうかもしれません。 - アカウントを削除しない
ここが重要です。怒りに任せて「退会(アカウント削除)」してはいけません。「課金されていた事実」と「解約完了画面」の証拠(スクリーンショット)を残すまでは、アカウントが必要です。 - ダメ元で問い合わせる(低姿勢で)
「こちらの不手際で更新されてしまったが、全く利用履歴がない。今回に限り、返金や日割り対応は可能か?」と、あくまで相談ベースで聞いてみましょう。外資系SaaSなどでは、ごく稀に温情対応してくれるケースがあります(期待値は5%くらいですが、聞くのはタダです)。
2. なぜ「解約忘れ」は起きるのか
自分を責める前に、敵の手口を知りましょう。
サブスクリプション・ビジネスは「人間に忘れさせること」に命をかけています。
- 「無料トライアル」の罠
「カード情報を入力してください(期間終了後に課金開始します)」というパターン。14日後のことなんて、忙しいあなたは確実に忘れます。 - 「担当者の退職」という盲点
契約した本人が退職し、アカウント情報もわからず、引き落としだけが続く。これはバックオフィスあるある怪談の定番です。 - 「年払い」のステルス性
毎月なら明細で気づきますが、「年払い」は1年に1回しか登場しません。忘れた頃にやってきて、高額なダメージを与えて去っていきます。
これらは、人間の記憶力に頼っている限り、絶対に防げません。
だからこそ、記憶に頼らない「物理的な仕組み」が必要です。
3. 再発防止策①:Googleカレンダーを「契約書」にする
今日から、サブスクを契約したら、その場ですぐにGoogleカレンダーに「解約予定日」を入力してください。
ただし、普通に入れてはいけません。
- 日付
無料期間終了の「3日前」や、更新月の「1ヶ月前」。 - 件名
【解約警告】〇〇ツールの解約判断をする(担当:佐藤) - 通知設定
「メール」と「ポップアップ」の両方をONにする。 - 繰り返し設定
年払いの場合は「毎年」に設定する。
ポイントは、「解約するかどうか考える日」をスケジュールしてしまうことです。
「使い続けるならこの予定を削除、やめるなら即解約」というルールにすれば、意図しない更新は防げます。
4. 再発防止策②:プリペイドカードで「兵糧攻め」にする
これが最強の物理防御です。
海外のSaaSなど、解約方法がわかりにくい(英語で電話しろとか言われる)サービスを契約する場合、会社のメインカードを使ってはいけません。
「バーチャルカード(プリペイド型)」を使ってください。
(例:Revolut, UPSIDER, バンドルカードなど)
- そのサービス専用のカード番号を発行する。
- 必要な金額(1ヶ月分や1年分)だけを入金しておく。
- 残高がなくなれば、決済エラーで勝手に止まる。
これなら、解約を忘れていても、勝手にお金が引き落とされることは物理的にあり得ません。
「決済できませんでした」というメールが来て、「あ、そういえば契約してたな。もういらないや」と気づくことができます。
「お金の出口を塞ぐ」これこそが、ゾンビに対する最強の攻撃です。
5. 再発防止策③:「固定費一覧表」という名のデスノート
アナログですが、結局これが一番管理しやすいです。
Googleスプレッドシートで「固定費デスノート」を作ってください。
| サービス名 | 金額 | 更新サイクル | 担当者 | ログインID | 解約方法 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Adobe CC | 6,800円 | 月次 | 佐藤 | sato@… | Web | 必須ツール |
| 謎の便利ツール | 980円 | 年次 | 田中 |
そして、毎月の経費精算の時に、このシートとカード明細を「指差し確認」します。
リストにない引き落としがあれば、それは即ち「不正」か「忘れ」です。
このリストさえあれば、担当者が退職しても、IDがわからなくて解約できないという地獄は防げます。
6. まとめ:無駄金は、会社の利益を直接削る
売上を10万円増やすのは大変ですが、無駄なサブスクを10万円分削るのは(解約ボタンを押すだけなので)一瞬です。
そして、その効果は利益に直結します。
今回の「冷や汗」は、会社にとっての「止血ポイント」を見つける良い機会だったと捉えましょう。
もし、「すでに管理不能なほどサブスクが増えてしまった」「退職者の置き土産(不明な引き落とし)の止め方がわからない」という場合は、「うしろぽっけ」にご相談ください。
- 現在の固定費の棚卸しサポート
- 「更新アラート」が自動で飛んでくるスプレッドシートの作成
- 海外サービスの解約代行(英語サポート)
私たちは、あなたの会社の財布の紐を、あなたと一緒に守ります。
無駄な固定費をダイエットして、その分で美味しいランチでも食べに行きましょう。
(無料)