「座って話すだけの仕事」? いいえ、あなたは「声のコンシェルジュ」であり「企業の最前線」です。
「コールセンターで働きたいです。人と話すのが好きだし、座って仕事ができるから体力的に楽そうですよね」
未経験からこの職種を目指す際、そう考えるのは自然なことです。しかし、現場でヘッドセットをつけた瞬間、その認識は「良い意味で」裏切られます。
「では、受話器を取った瞬間、『ずっと待っていたんだぞ!』と感情を露わにしているお客様に対し、1秒も動じることなく、『大変お待たせいたしました』と、慈愛に満ちた声で謝罪できますか? マニュアルにない難しいご要望をいただいても、保留ボタンを押して深呼吸し、冷静に『代替案』を即座に組み立てられますか?」
コールセンター(Customer Support)の仕事。
それは、ただマニュアルを読み上げるだけの仕事ではありません。
顔の見えない相手からの「感情(期待、不安、時にはお叱り)」をダイレクトに受け止め、声という武器一つで解決に導く「感情のスペシャリスト」です。
あなたが対応を間違えれば、そのお客様は二度と戻ってきません。
しかし、あなたが素晴らしい対応をすれば、「あなたのおかげで助かったよ、ありがとう」と、一瞬で企業のファンになってくれます。
今回は、そんな企業のブランドイメージを最前線で守るコールセンターに向いている人の「リアルな適性」を5つ紹介します。
必要なのは、流暢な敬語力だけではありません。
相手の感情に巻き込まれない「プロとしての境界線」と、声色を自在に操る「表現力」です。
特徴1:【プロの境界線】厳しい言葉を「課題」として処理できる
カスタマーサポートには、時に厳しいご意見(クレーム)が寄せられます。
製品の不具合やサービスの不備に対し、お客様の感情が高ぶっていることもあります。
向いている人は、これを「自分への個人攻撃」とは受け取りません。
「あ、このお客様は『私』を責めているのではない。『不便な状況』や『会社の仕組み』に対して困っていらっしゃるんだ」
と、客観的に捉えることができます。
相手の感情を真正面から受け止めて傷つくのではなく「解決すべき課題(タスク)」として冷静に切り分けられる「プロフェッショナルな境界線」。
この「メンタルコントロール力」がある人は、どんな状況でも安定したパフォーマンスを発揮できます。
特徴2:【声の演技力】「申し訳ございません」を7色で演じ分ける
オペレーターは、姿が見えません。だからこそ「声のトーン(声色)」が全ての情報を伝えます。
向いている人は、状況に合わせて「声の表情」を変えることができます。
- お急ぎのお客様には
テキパキと、少し高めのトーンで。「はい! すぐにお調べして参ります!」(安心感とスピード感) - お困りのお客様には
重心(トーン)を下げて、ゆっくりと。「さようでございましたか……。ご不便をおかけしております」(共感と誠実さ) - ご高齢のお客様には
孫のように、一語一語をはっきりと。「お手元の、赤いボタンでございますね」(親しみやすさ)
自分の地声ではなく、相手が求めている「理想の対応者」を瞬時に演じ分ける。
あなたは、電話口という舞台に立つ「声の役者」**なのです。
特徴3:【聖徳太子の処理能力】「会話」しながら「入力」する
コールセンターの業務は、実は高度な「マルチタスク」です。
お客様の話に相槌を打ちながら(Listening)、
その内容をPCに打ち込み(Typing)、
同時にマニュアルや顧客情報を検索する(Searching)。
これをリアルタイムで行わなければなりません。
向いている人は「手と口と目が連動して動く」人です。
「はい、左様でございますね(カチャカチャ……ターン!)」
会話を途切れさせずに、裏側でシステムを操作し、最適解を導き出す。
ピアノを弾きながら歌うような「高度な事務処理能力」が求められます。
特徴4:【要約のコンサルタント】「結局、何が言いたいの?」を整理する
電話をかけてくるお客様の多くは、トラブルで混乱しており、話がまとまっていません。
「なんかPCが動かなくて、昨日までは使えてたんだけど、息子が触ったかも知れなくて、でも画面は青くて……」
向いている人は、この複雑な状況から、一瞬で「事実」だけを抜き出します。
「なるほど。ご不安ですよね。整理しますと、『昨日から画面が青くなって動かない』という状態ですね?」
お客様のダラダラした話を、ロジカルに**「要約」し、解決への最短ルートを提示する。
これこそが、通話時間(AHT)を短縮し、お客様のストレスを減らす鍵です。
「聞き上手」とは、ただ黙って聞くことではなく、「相手の頭の中を整理してあげること」なのです。
特徴5:【瞬間リセット力】「前の電話」を引きずらない
1日に50件、100件と電話を取ります。
直前の電話で長時間対応をして疲弊しても、受話器を置いた瞬間に「リセット」しなければなりません。
次の電話の相手は、全く別の新しいお客様だからです。
向いている人は、「終わったことは終わったこと」と割り切るのが得意です。
「よし、今の件は解決! 深呼吸して、次のお客様には最高の『お電話ありがとうございます』を届けよう!」
気持ちを次の電話に持ち越さない。
常に「ゼロの状態」で新鮮な対応ができる「気分の切り替え力」が、プロフェッショナルの証です。
AI時代、オペレーターは「回答マシーン」から「カスタマーサクセス」へ
「よくある質問(FAQ)や簡単な手続きは、チャットボットやボイスボット(AI)で自動化される」と言われます。
確かに、「パスワード変更」や「残高照会」といった単純な問い合わせは、AIに置き換わるでしょう。
しかし、「複雑すぎてAIが文脈を理解できない悩み」や、「不安でパニックになっている相手への感情的ケア」は、今のAIには困難です。
AIは、「どうしても今日中に届けてほしいんです、娘の誕生日なんです!」と焦るお客様に対し、
「ルール上できません」とは言えても、
「お気持ちは痛いほど分かります。では、代替案として、配送センターで直接受け取る方法はいかがでしょう?」と「心」に寄り添った提案(ホスピタリティ)をすることはできません。
これからのオペレーターは、マニュアル通りに答えるだけの仕事から、人間の複雑な感情を受け止め、顧客の成功を支援する「カスタマーサクセス(Customer Success)」の専門職として、より高い価値を持つようになります。
まとめ:あなたは会社の「声」そのものだ
もしあなたが、
「毎日同じことの繰り返しで疲れる」
「誰でもできる仕事だと思われている気がする」
と悩んでいるなら、思い出してください。
お客様にとって、社長の声も、部長の声も届きません。
唯一聞こえるのは、受話器の向こうの「あなたの声」だけです。
あなたが優しくすれば「なんていい会社だ」と思われるし、あなたが頼りなければ「この会社は大丈夫か?」と思われます。
あなたは会社のブランドイメージそのものを背負っている「代表者」です。
その声一つで、誰かの1日を明るくし、トラブルを解決に導くことができる。
そんな社会的意義のある仕事を、どうぞ誇りに思ってください。
あなたの「隠れた才能」と「お疲れ度」、こっそり測ってみませんか?
「記事を読んで『これ私のことかも?』と思ったけど、実際どうなんだろう?」
「毎日いろんなお客様と話しすぎて、電話の着信音が鳴るだけでドキッとしちゃう……」
そんなふうに思った方のために、うしろぽっけでは2つの無料診断を用意しました。
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① 12問でわかる「バックオフィス適職診断」
一口に事務職と言っても、「黙々と作業するのが得意なタイプ」もいれば、今回の記事のように「声で相手の心を動かすコールセンタータイプ」もいます。
心理学(RIASEC理論)に基づいて、あなたの性格が一番輝くポジションを分析します。
② 笑うのに疲れたら。「職場ピエロ度診断」
コールセンターは、どんなにお叱りを受けても、声のトーンを上げて「申し訳ございません」と言わなければなりません。
「本当は言い返したいのに…」と、感情を抑えて対応していませんか?
そんなあなたの「心の摩耗度」を可視化してみませんか?