「華やかな人事」のイメージで入ると、3日で絶望します
「人事部に行きたいです! 人と話すのが好きだし、社員のモチベーションを上げたいから!」
そう目を輝かせて異動願いを出す若手社員がいますが、もし配属先が人事部の中の「労務課(または労務チーム)」だった場合、そのキラキラした夢は一瞬で砕け散ります。
世間一般でイメージされる「学生と笑顔で話す採用活動」や「研修で熱く語る教育担当」は、あくまで人事の一部(HRM)です。
一方、「労務(ろうむ)」の世界は、全くの別次元です。
そこにあるのは、膨大な数字の羅列、複雑怪奇な法律(労働基準法)、絶対に1円も間違えられない給与計算、そして役所(労基署・年金事務所)との泥臭い交渉……。
華やかさは1ミリもありません。地味で、堅苦しくて、細かい。
しかし、断言します。
社員の「命と生活」に直結しているのは、間違いなく「労務」の方です。
- 給料が1日でも遅れたら、社員は家賃が払えません。
- 保険証の発行が遅れたら、社員の子供が高熱を出しても病院に行けません。
- 違法な残業管理を放置したら、会社は書類送検され、社会的に死にます。
会社と社員の生活が崩壊しないように、水面下で支え続ける「守りのスペシャリスト」
今回はそんな労務担当に向いている人の「リアルな適性」を5つ紹介します。
年末調整 社会保険 36協定 給与計算 といった専門用語の裏にある、「この仕事の真の価値」をお伝えします。
特徴1:【法律ゲーマー】六法全書が「攻略本」に見える
労務の仕事は、常に法律との戦いです。
労働基準法をはじめ、労働安全衛生法、雇用保険法、育児・介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法……。
しかも、これらの法律は毎年のように改正されます。
普通の人は「うわ、漢字ばかりで読みたくない」と逃げ出します。
しかし、労務に向いている人は、法改正のニュースを見ると「お、ルールが変わったぞ。どう攻略してやろうか」とゲーマーのように目が輝きます。
- 「今度の法改正、ウチの就業規則の第〇条に引っかかるな。今のうちに改定案を作ろう」
- 「この『36協定(サブロク協定)』の特別条項、今の運用だと残業時間の上限ギリギリだな。部署ごとにアラートを出す仕組みを作ろう」
- 「男性育休の助成金が変わるから、申請フローを見直せば会社が得するな」
法律を「面倒な縛り」ではなく、会社と社員を守るための「武器」や「攻略本」として捉えられる知的好奇心。
「知らないことはリスクだ」と本能的に理解し、常に最新情報をアップデートし続ける「学習マニア」は、労務担当者の絶対条件です。
特徴2:【デッドラインの鬼】「給与計算」という絶対納期に燃える
この世で絶対に許されないミス。それが「給与計算ミス」と「給与遅配」です。
毎月25日が給料日なら、25日の朝9時には、1円の狂いもなく、全社員の口座にお金が振り込まれていなければなりません。
天変地異が起きようが、自分がインフルエンザになろうが、これだけは死守しなければなりません。
向いている人は、この「絶対的な締切(デッドライン)」に対して、プロアスリートのような集中力を発揮します。
- 勤怠締め日(Start)
「おい、営業部の〇〇さんの打刻漏れがあるぞ!すぐに電話だ!」と全社を追いかけ回す。 - 計算期間(Zone)
残業代の割増率(1.25倍か1.35倍か)、深夜手当、通勤費の課税・非課税、社会保険料の変更月……複雑なパズルをゾーンに入ったように処理する。 - 振込データ送信(Goal)
「銀行への送信完了。……今月も平和を守った」
この凄まじいプレッシャーに胃が痛くなるのではなく、「今月も完璧にやり遂げた」という達成感に変えられる人。
0.1秒の遅れも、1円のズレも許さない「正確さこそが正義」という美学を持つ人は、労務の天職です。
特徴3:【生活の守護者】「扶養」「保険」の手続きに愛を込められる
労務の手続き(社会保険・雇用保険の得喪)は、単なる事務作業に見えますが、実は「社員の人生の節目」そのものです。
- 入社時:
「ようこそ! 早く病院に行けるように、保険証は最短で手配するからね!」 - 結婚・出産時:
「おめでとう! 産休手当と育休手当の手続き、任せてね。旦那さんの扶養に入るタイミングはどうする?」 - 退職時:
「お疲れ様。次の仕事が決まるまでの失業保険(離職票)、君が損しないようにちゃんと書いておくね」
向いている人は、無機質な書類の向こう側に「社員とその家族の顔」が見えています。
「この書類が1日遅れたら、奥さんが病院で一時的に10割負担になっちゃう」
「離職票の区分を間違えたら、この人の来月の生活費が振り込まれないかもしれない」
ただの紙切れではありません。社員の生活を守るための「命綱」を扱っているという「重い責任感」と、見えないところで社員を支える「隠れた優しさ」を持てる人が、真の労務担当です。
特徴4:【行政との交渉人】労基署や年金事務所に物怖じしない
労務担当は、社外の「怖い人たち(行政機関)」とも渡り合わなければなりません。
時には、労働基準監督署(労基署)の臨検(調査)が入ったり、年金事務所から社会保険の加入漏れについて問い合わせが来たりします。
ここでビビって「どうしよう…先生(社労士)助けて…」となるだけでは務まりません。
向いているのは、「あ、調査ですか。どうぞどうぞ、書類は完璧ですから」と、堂々と対応できる人です。
役所の担当者に対して、へりくだるだけでなく、
「その解釈はおかしくないですか? 厚生労働省の通達の〇〇にはこう書いてありますよ」
「当社の勤務実態はこうなっているので、法的には問題ありません」
と、知識を武器に対等に議論できる【交渉力と】【胆力】
会社を理不尽な指導から守る「防波堤(ゲートキーパー)」としての強さが求められます。
特徴5:【年末調整の指揮官】全社員を動かす「巻き込み力」
労務担当者にとって、年に一度の最大かつ最悪のイベント。それが「年末調整」です。
全社員から申告書を集め、家族構成の変化や保険料の支払いをチェックし、税金を確定させる地獄の業務です。
「用紙なくしました」「書き方わかりません」「証明書忘れました」「期限守れません」……。
社員たちの自由すぎる振る舞いに、血管が切れそうになります。
しかし、向いている人は、これを単なる事務ではなく「大規模プロジェクトマネジメント」として捉えます。
- 戦略
「今年は紙を廃止して、スマホで完結できるクラウドツールを導入しよう」 - 戦術
「書き方のマニュアル動画を作って、問い合わせを3割減らそう」 - 実行
「期限を守らない常習犯リストを作成し、上司経由で圧力をかけて回収しよう」
愚痴を言う前に「どうすれば社員がミスなく動けるか」を考え、仕組み(システム)を変えていく。
カオスな状況をコントロールし、数百人・数千人を指揮してゴールへ導く「リーダーシップ」が、実は労務には必要なのです。
AI時代、労務は「事務屋」から「リスクマネージャー」へ
「給与計算や保険手続きはAIで自動化されるから、労務はいらなくなる」
そんなニュースを見かけますが、現場を知らない人の戯言です。
確かに、計算処理や電子申請の作業自体はAIやSaaSがやるようになるでしょう。
しかし、今回紹介した「法改正を自社に合わせて解釈する」「役所とギリギリの交渉をする」「社員の生活背景を考慮してケアする」という仕事は、AIにはできません。
AIは、「このケースは法律的にはグレーだけど、社員の心情と過去の経緯を考えると、今回はこう対応すべきだ」という「高度な倫理的判断」ができません。
これからの労務は、面倒な手作業から解放され、
「ハラスメントの未然防止」
「メンタルヘルス管理(ストレスチェック後のケア)」
「多様な働き方(リモートワーク・副業)の規定整備」
といった、組織のリスクを管理し、働きやすい環境を設計する「リスクマネージャー」や「ウェルビーイング(幸福)の責任者」へと進化していきます。
まとめ:あなたは会社の「土台(ファウンデーション)」だ
もしあなたが、
「華やかな採用担当と違って、地味で細かい仕事だ」
「誰も感謝してくれない」
と引け目を感じているなら、それは大きな間違いです。
採用が「建物を大きくする(増築)」仕事なら、労務は「建物の基礎(土台)を固める」仕事です。
土台(労務管理)が腐っていたら、どんなに優秀な人材を採用しても、建物は倒壊します(ブラック企業化して離職します)。
あなたが法律を守り、給料を払い、社員の生活の安全を支えているから、会社は社会的な存在として立っていられるのです。
その圧倒的な「基盤を守る誇り」を持って、今日も六法全書を開いてください。
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