「ネットが遅い!」と怒られる仕事? いいえ、あなたは会社の「空気を供給するインフラ」です。
「情シス(情報システム部門)」や「社内SE」の仕事に対して、世間はどんなイメージを持っているでしょうか。
「パソコンの設定をしてくれる人」「プリンターの紙詰まりを直す便利屋さん」。
ひどい場合には、「何も利益を生み出していないコスト部門(金食い虫)」なんて心ない言葉を投げかけられることもあります。
しかし、もし今日、情シスが仕事を放棄して帰宅したら、明日会社はどうなるでしょうか?
メールは届かず、チャットは止まり、販売管理システムは動かず、顧客データは消失し、Wi-Fiは繋がらず……会社は即座に「呼吸困難」に陥り、活動を停止します。
情シスの仕事の本質は、パソコン屋さんではありません。
オフィスにおける「空気(デジタル環境)」を作ることです。
吸えて当たり前。でも、汚れたり止まったりしたら全員が死ぬ。
普段は誰にも感謝されず、トラブルが起きた時だけ「おい、息ができないぞ!」と怒られる。
そんな過酷で、孤独で、しかし組織の生命維持装置(ライフライン)のスイッチを握る絶対的なポジション。
今回は、この孤独な英雄である情シス・社内SEに向いている人の「リアルな適性」を5つ紹介します。
プログラミングができるか? 資格があるか? そんな表面的な話ではありません。
もっと泥臭い「現場を守り抜くマインド」の話です。
特徴1:【超・翻訳家】「パソコンが壊れた!」というパニックを、論理に変換できる
情シス、特にヘルプデスク業務における最大の敵は、社員からの「抽象的な悲鳴」です。
ITリテラシーが高くない社員から、日々こんなSOSが届きます。
「インターネットが壊れた!」
「画面がなんか変!」
「何もしてないのに動かなくなった!(※ログを見れば絶対に何かしています)」
ここで「具体的にどういう状況ですか? エラーコードは?」と正論で詰め寄る人は、情シスには向きません。相手を余計にパニックにさせるだけです。
向いている人は、このパニック状態の言葉を、瞬時に技術用語に脳内変換できる「高度な翻訳スキル」を持っています。
- 社員
「メールが送れないの!壊れた!」 - あなたの脳内翻訳
(「壊れた」という表現は曖昧だ。ネット自体は繋がっているか? SMTPサーバーのエラーか? それとも添付ファイルの容量オーバーか?) - あなたの対応
「落ち着いてくださいね。まず、Yahoo!などの他のページは見れますか? ……見れるんですね。では、画面に英語のメッセージが出ていませんか? 『Size』という単語はありませんか?」
相手の「感情(焦り)」を受け流し、裏にある「事実(現象)」だけを抽出する。
この「問診力」こそが、トラブルシューティングのスピードを決めます。あなたはエンジニアである前に、「デジタルの問診医」なのです。
特徴2:【聖人君子】「再起動しましたか?」を、笑顔で1万回言える
情シスの仕事は「同じ質問の千本ノック」です。
昨日Aさんに教えた「パスワードの変更方法」を、今日はBさんに聞かれ、明日は部長に聞かれます。
「印刷できません(コンセントが抜けている)」「画面が真っ暗です(モニターの電源が切れている)」。
ここで「ググれよ!」「マニュアル読めよ!」と心の中で毒づいても、顔に出してはいけません。
向いているのは、まるで幼稚園の先生や聖人のように、
「なるほど、困りましたね。では、まずは魔法の操作『再起動』をしてみましょうか(ニッコリ)」
と、1万回目でも初めてのように優しく言える「忍耐力」を持った人です。
ITリテラシーは人それぞれです。
「彼らにとってPCは、ただの文房具なんだ」と割り切り、「困っている人を助ける」こと自体に喜びを見出せるホスピタリティが必要です。
あなたのその笑顔が、デジタルの冷たさから社員を救っています。
特徴3:【悲観主義者】「絶対に壊れる」と信じて、命綱(バックアップ)を用意する
開発エンジニア(Web系など)が「どうやって新しい機能を動かすか(攻め)」を考える人種なら、情シスは「どうやって事故を防ぐか(守り)」を考える人種です。
向いている人は、基本的に「システムは絶対にいつか壊れる」「人間は絶対にミスをする」という前提で生きています。
楽天家(オプティミスト)は情シスに向きません。
「まあ、大丈夫だろう」と思った瞬間に、サーバーは落ちるからです。
- 「このサーバー、もし雷で停電したらどうなる? UPS(無停電電源装置)のバッテリーは生きてるか?」
- 「もし営業担当が、ランサムウェア入りのメールを開いちゃったら? ネットワークを遮断する手順は?」
最悪のシナリオを常に妄想し、誰にも言わずにバックアップを取り、予備機をキッティングし、セキュリティソフトを入れる。
「心配性」であることは、情シスにおいて最大の才能です。あなたのその「ネガティブな妄想」が、いざという時に会社の存続を救うのです。
特徴4:【マクガイバー】予算ゼロ・人手ゼロでも「なんとかする」
社内SEの現実は、テック企業のオフィスのようにキラキラしていません。
多くの中小企業では、「ひとり情シス」か、兼務です。
経営陣からは「DXで業務効率化しろ」と言われますが、「予算? ないよ。iPhone支給? 高いからダメ」と梯子を外されます。
ここで「じゃあ無理です」と腐る人は向きません。
向いている人は「あるものでなんとかする(ブリコラージュ)」ことに燃える人です。
- 「有料の資産管理ツールは買えないから、GAS(Google Apps Script)を組んで台帳を自動化しよう」
- 「倉庫に眠っている古いPCを集めて、メモリを増設してシンクライアント化しよう」
制限だらけの環境の中で、知識と工夫を駆使してゴールにたどり着く。
その「DIY精神」と「サバイバル能力」がある人は、どんな環境でも重宝されます。あなたは「社内のマクガイバー(冒険野郎)」なのです。
特徴5:【孤独な灯台守】「何も起きないこと」に美学を持てる
営業は売上が上がれば表彰されます。開発はアプリができれば褒められます。
しかし、情シスが褒められることはありません。
システムが安定稼働している時、社員にとってそれは「当たり前」だからです。
逆に、システムが止まると「何やってんだ!」「仕事にならない!」と全社員から責められます。
「平常運転=100点満点」。
「トラブル=減点法」。
この理不尽な評価軸の中で、腐らずにいられるか。
向いているのは、嵐の中で孤独に光り続ける灯台のように、
「今日も何も起きなかった。誰も私の仕事に気づいていない。……よし、いい仕事をした」
と、自分で自分を承認できる「自己完結型のプロ意識」を持った人です。
誰にも気づかれないけれど、ファイアウォールのログを見て「お、今日も攻撃を防いでるな」と一人でニヤリとする。
そんな【影の主役(ダークナイト)】としての美学を持てる人は、最高にかっこいいです。
AI時代、情シスは「便利屋」から「デジタル参謀」へ
「AIがコードを書く時代、エンジニアは不要になる」と言われます。
しかし、情シスの仕事はなくなりません。
なぜなら「物理的なトラブル」と「人間の感情」はなくならないからです。
AIは、コーヒーをこぼしたキーボードを物理的に交換できません。
AIは、「パスワードがわからない!」と怒鳴り込んでくる部長をなだめることはできません。
AIは、「どの業務を自動化すべきか」という社内政治を調整し、ベンダーと価格交渉することはできません。
これからの情シスは、単なるヘルプデスクから脱却します。
世の中に溢れるAIツールを選定し、導入し、社員に教育し、リスクを管理する。
「AIという最強の武器を、社員(兵士)たちに配り、使いこなさせる武器商人(軍師)」。
それが、これからのあなたの役割です。
まとめ:あなたは会社の「中枢神経」だ
もしあなたが、
「自分は裏方で、目立たない存在だ」
「毎日雑用ばかりでキャリアが見えない」
と自信をなくしているなら、それは間違いです。
あなたは裏方ではありません。企業の中枢神経です。
あなたがネットワークを繋ぎ、PCを管理し、セキュリティを守っているから、脳(経営層)の指令が飛び、手足(社員)が動くのです。
あなたが機能を停止したら、会社は即座に植物状態になります。
その圧倒的な重要性を自覚してください。
そして、今日も「ネットが繋がらない!」というSOSに、ヒーローのように駆けつけてください。
あなたの「隠れた才能」と「お疲れ度」、こっそり測ってみませんか?
「記事を読んで『これ私のことかも?』と思ったけど、実際どうなんだろう?」
「毎日トラブル対応ばかりで、正直もう限界かも……」
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一口に事務職と言っても、「定型業務が得意なタイプ」もいれば、今回の記事のように「トラブル解決に燃えるタイプ」もいます。
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② 笑うのに疲れたら。「職場ピエロ度診断」
情シスは、本当は専門家なのに、社員からは「何でも屋さん」扱いされがち。
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