「計算係」? いいえ、あなたは会社の「要塞を守る番人」です。
「私、文系だから経理は無理です」
「数学の成績が悪かったので、お金を扱う仕事はちょっと……」
転職相談やキャリア面談で、非常によく聞く言葉です。
もし、あなたもそう思って経理・財務の道を避けているなら、実にもったいない。大きな誤解をしています。
断言しますが、経理の実務に、微分積分や因数分解といった高度な数学は一切不要です。
使うのは、足し算、引き算、掛け算、割り算の「四則演算」だけ。小学校の算数ができれば、スキルとしては十分です。
では、経理・財務担当者に本当に必要な能力とは何か?
それは、日々バラバラに発生する無数のお金の動きを、あるべき場所に収め、ピタリと整合させる「パズルを解く快感」を知っているかどうか。
そして、数字という「羅針盤」を通して会社の現在地を正確に把握し、「社長、このままだと3ヶ月後に燃料(現金)が尽きますよ」と警告を出せる「航海士」としての眼力です。
今回は、電卓を叩く速さよりもずっと大切な、経理・財務に向いている人の「リアルな適性」を5つ紹介します。
費用計上、消込(けしこみ)、資金繰りといった具体的な業務の裏にある「心の動き」まで深掘りしました。
もしこれらに当てはまるなら、あなたはAI全盛の時代において、経営者が最も手放したくない「最強の参謀」になれる素質があります。
特徴1:【シンメトリー愛好家】「貸借一致」した瞬間に、最高の快感を覚える
経理の世界には、絶対的なルールがあります。「複式簿記」です。
左側(借方)と右側(貸方)の数字は、最終的に物理法則のように必ず一致しなければなりません。
100億円の巨大プロジェクトだろうが、自販機の120円のコーヒーだろうが、最後の1円までピタリとバランスする。
向いている人は、この「左右が揃う(バランスがとれる)」という現象に、ある種の「構造的な美しさ」と「達成感」を覚える人です。
逆に言えば、「1円でも合わないと、気持ち悪くて夜も眠れない」という感覚を持っている人です。
「たかが1円のズレでしょ? 残業代の方が高いんだから、雑損で処理して帰ろうよ」
なんて言う人は、絶対に経理にはなれません。
そのたった1円のズレの裏に、システムの重大なエラーや、不正の予兆、あるいは消費税計算のロジックミスが隠れているかもしれない。
この「数字の整合性に対する潔癖さ(美学)」こそが、会社の社会的信用である「財務諸表」の正しさを守る、最強の防壁なのです。
特徴2:【名探偵】「謎の入金(消込)」から、真実を推理する
経理の現場で最も泥臭く、かつ高度な推理力が試されるのが「入金消込(にゅうきんけしこみ)」という業務です。
通帳を見ると、カタカナで「スズキ」という個人名で15,000円が振り込まれている。
「スズキ? どの鈴木さん? 請求額とも合わないぞ?」
ここでAIは「該当なし(エラー)」を出して止まります。
しかし、向いている人はここから虫眼鏡を持った「名探偵」になります。
- 捜査開始
「過去の取引履歴を検索……あ、3年前に一度だけ『鈴木商事』という会社と取引があった」 - プロファイリング
「今回の請求額は15,770円。ここから振込手数料770円を引くと……15,000円! 金額が一致!」 - 解決
「犯人は鈴木商事だ! 社長の名前で振り込んできたんだな」
このように、バラバラの証拠(数字、日付、名義)を繋ぎ合わせて「このお金の正体はこれだ!」と特定できた時、心の中で「真実はいつもひとつ!」とガッツポーズできる人。
この「文脈(コンテキスト)を読み解く推理力」は、人間にしかできない高度な知的生産活動です。
特徴3:【冷徹な裁判官】「費用計上」の妥当性を、感情抜きでジャッジする
営業部から「これ、接待交際費で落としてください」と領収書が回ってきます。
しかし、日付は日曜日、場所はテーマパーク、人数は4人(どう見ても家族旅行)。
営業担当は「いや、あそこで大事な商談をしたんだよ!頼むよ!」と食い下がります。
ここで「〇〇さんにはいつもお世話になってるし…」と情に流される人は、経理失格です。
向いているのは、
「税法上、これは業務との関連性が証明できないため、費用計上(経費処理)できません。却下します」
と、事実に基づいて冷徹に突き返せる人です。
これは意地悪ではありません。
ここでなあなあにして不適切な会計処理を通せば、数年後の税務調査で会社が追徴課税を受けたり、社会的信用を失ったりします。
一時的に現場から嫌われたとしても、会社という組織を守るために「ダメなものはダメ」と判決を下す「裁判官」としての正義感と胆力が必要です。
特徴4:【予言者】「資金繰り」を見て、未来の嵐を予知する
ここは少し「財務(ファイナンス)」の領域に入ります。
経理が「過去」を正確に記録する仕事だとしたら、財務は「未来」を予知する仕事です。
「今、銀行口座に1億円あるから大丈夫だ」と社長が笑っていても、向いている人は一人だけ青ざめています。
「社長、来月末に法人税の支払いと、大型設備の支払いが重なります。さらに、売掛金の入金サイト(回収までの期間)を考慮すると、再来月の15日に手元のキャッシュ(現金)がショートします」
帳簿上の利益(黒字)と、手元にある使えるお金(キャッシュフロー)は別物です。
世の中には、利益が出ているのに現金がなくて倒産する「黒字倒産」という悲劇があります。
数字の羅列から、3ヶ月後の会社の未来映像をありありと思い描き、「今すぐ銀行から借り入れましょう」と提案できる先読み力。
それはもはや、経営者にとって代えがたい「予言者」であり、嵐を回避する「航海士」の能力です。
特徴5:【タイムキーパー】「月次決算」というリズムを愛せる
総務の仕事が「突発的なトラブル対応(リアクション)」だとしたら、経理の仕事は「正確なサイクルの繰り返し(ルーチン)」です。
- 月初
請求書の発行、回収確認でバタバタする - 月中
仕訳入力、預金管理で淡々と進める - 月末
支払い業務、給与計算、そして月次決算の締めで追い込む
この「決まった時期に、決まった業務が波のように押し寄せる」というリズム。
これを「飽きる」「変化がない」と感じる人は向きません。
逆に、「季節の移ろいのように心地よい」と感じる人は天職です。
向いている人は、このサイクルを崩さずに回すことにプロアスリートのようなこだわりを持ちます。
「先月は月次確定まで5営業日かかったけど、今月はフローを見直して3営業日で締まった!(新記録だ)」
というように、ルーチンワークの中で「スピードと精度のタイムアタック」を一人で楽しめる人は、この仕事の達人になれます。
AI時代、経理は「入力係」から「CFO(最高財務責任者)」候補へ
「経理はAIに代替される職業ランキング」で、いつも上位に入ります。
確かに、「領収書を見て勘定科目を入力する」だけの仕事は消滅するでしょう。
しかし、今回紹介した5つの特徴をもう一度見てください。
「原因不明のズレを推理する」「経費の妥当性を判断し、人を説得する」「未来の資金不足を警告し、銀行と交渉する」。
これらは全て、計算能力ではなく「判断能力」と「コミュニケーション能力」です。AIは「計算」はできますが、「責任ある判断」と「交渉」はできません。
面倒な入力作業からAIによって解放されたあなたは、より深い分析(管理会計)や、経営戦略への提言を行う「攻めの経理」へと進化できます。
それは、ゆくゆくはCFO(最高財務責任者)として経営の中枢を担うキャリアへと繋がっています。
あなたは会社の「エンジン」と「羅針盤」を握っている
もしあなたが、
「地味な仕事で、誰にも感謝されない」
「営業みたいに売上を作っていない」
と感じて引け目を感じているなら、思い出してください。
会社において「お金」は「燃料」であり、帳簿は「羅針盤(地図)」です。
燃料を1滴も漏らさずに管理し(資金繰り)、羅針盤を正しく読み解いて(決算書)、船(会社)が進むべき道を指し示す。
あなたは、会社の「心臓部(エンジン)」を守っているのです。
ここが止まったら、どんなに手足(営業)が強くても会社は沈みます。
その重責を担い、数字という「嘘をつかない共通言語」で会社を支えるあなたの仕事は、何よりも尊く、かっこいいものです。
あなたの「隠れた才能」と「お疲れ度」、こっそり測ってみませんか?
「記事を読んで『これ私のことかも?』と思ったけど、実際どうなんだろう?」
「1円のズレを探しすぎて、最近ちょっと目が回っているかも……」
そんなふうに思った方のために、うしろぽっけでは2つの無料診断を用意しました。
どちらも登録不要、休憩時間の1分でできるので、仕事の息抜きにポチポチっと遊んでみてください。
① 12問でわかる「バックオフィス適職診断」
一口に事務職と言っても、「人のサポートが得意なタイプ」もいれば、今回の記事のように「数字の整合性に快感を覚えるタイプ」もいます。
心理学(RIASEC理論)に基づいて、あなたの性格が一番輝くポジションを分析します。
② 笑うのに疲れたら。「職場ピエロ度診断」
経理は、社員に対して「お金のルール」を厳しく指摘しなければならない立場。
「本当は嫌われたくないのに…」と、心のバランスを崩していませんか?
そんなあなたの「心の摩耗度」を可視化してみませんか?