優秀な新人(AI)に、ぐちゃぐちゃのメモを渡していませんか?
「話題のAIを導入したけれど、期待したほど賢くない」
「社内マニュアルを学習させたはずなのに、トンチンカンな回答しか返ってこない」
そんなため息交じりの声が、多くのオフィスから聞こえてきます。
経営者やシステム担当は「AIの性能がまだ低いからだ」と言いますが、実は原因はそこではありません。今のAIは、司法試験に合格するほど優秀です。
では、なぜあなたの会社のAIは、実力を発揮できないのでしょうか?
その答えは、とても人間臭いところにあります。
「AIに読ませているデータ(教科書)が、少しだけ散らかっているから」です。
想像してみてください。いくら優秀な新人さんが入ってきても、引き継ぎ資料が「いつのか分からないメモ」や「走り書き」の山だったら、仕事になりませんよね。
IT業界には**「Garbage In, Garbage Out(質の悪いデータを入れれば、質の悪い答えが出る)」という言葉がありますが、これは少し冷たい言い方です。
もっと優しく言えば、「美味しい料理を作るには、新鮮な食材の下ごしらえが必要」ということ。
本記事では、AI導入以前の大切なステップである「データの整頓」と、事務職だからこそできる「AIのための環境づくり」について、じっくりと紐解いていきます。
ファイル名の「最新_最終_v2」は、AIにとっての迷宮
私が以前お邪魔したある企業で、チャットボット(質問に答えてくれるAI)の精度が上がらないという相談を受けました。
「ちゃんとマニュアルのフォルダをAIに読み込ませているんです」と担当者様は仰います。
そこで、その「マニュアルフォルダ」の中身をこっそり見せていただきました。すると、そこには私たち事務職がついついやってしまいがちな、「あるある」な光景が広がっていました。
- ファイル名の迷宮
「業務マニュアル.pdf」「業務マニュアル_新.pdf」「業務マニュアル_最新.pdf」「【確定】業務マニュアル_田中修正版.pdf」…… 人間なら、なんとなく日付更新日を見て「たぶんこれが最新だろう」と察することができます。しかし、AIにはその「察し」が通用しません。全てのファイルを平等に読み込み、古い情報と新しい情報を混ぜ合わせて回答してしまいます。 - Excelの「お絵描き」
見栄えを良くするために結合されたセル、余白のための空白行、色だけで表現されたステータス(「赤色は未対応」など)。 私たち人間には見やすい表ですが、AIにとっては「意味不明な空間」です。セルが結合されていると、AIはどの数字がどの項目に紐づいているのか理解できず、混乱してしまいます。 - 情報の「地層」
5年前の「旅費規定」と、今年の「旅費規定」が同じ階層に保存されている状態。まるで地層のように古い情報が積み重なっています。 AIは歴史を知りませんから、5年前のルールを自信満々に「今のルールです」と答えてしまいます。
AIが賢くないのではありません。AIが勉強するための「教科書」のページが、バラバラに乱丁していただけなのです。
これを見て、私は確信しました。AI時代に必要なのは、高度なプログラミング技術よりも、まずは「フォルダの中身を整理整頓する」という、私たち事務職が一番得意なスキルなのだと。
AIは「綺麗な部屋」にしか住み着かない。今日からできる3つの「お掃除」
では、どうすればAIは賢くなるのでしょうか。
難しい設定を変える必要はありません。日々の業務の中で、少しだけ「AIへの思いやり」を持つだけでいいのです。
1. ファイル名という「名札」を整える
AIが迷わないように、ファイル名には必ず「いつ」「何の」「どんな状態か」を明記するルールを作りましょう。
悪い例:「議事録.docx」
良い例:「20260125_定例会議議事録_決定事項あり.docx」
これだけで、AIは「これは2026年の情報だな」と理解し、古い情報と区別できるようになります。ファイル名は、AIへの最初の手紙です。
2. Excelを「方眼紙」から「データベース」に戻す
Excelで資料を作るとき、印刷した時の見た目を気にしてセルを結合したくなりますよね。
でも、AIに読ませる資料なら、グッと我慢して「1行1データ」のシンプルな形にしてください。
「A列には日付、B列には品名」と整然と並んだデータは、AIにとって最高のご馳走です。これだけで、分析の精度は劇的に向上します。
3. 「アーカイブ(倉庫)」を作る勇気
「いつか使うかも」と思って残している古いファイル。それがAIを惑わせるノイズ(雑音)になります。
削除するのが怖い場合は、「old」や「archive」という名前のフォルダを作り、古いファイルをそこに隔離してください。そしてAIには「このフォルダは読まなくていいよ」と伝えます。
情報を捨てるのではなく、「現役」と「引退」を分ける。これだけで、AIの頭の中は驚くほどクリアになります。
「散らかった部屋」にルンバを放っても、生活は便利にならない(現状の課題分析)
世の中の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の多くが失敗する原因は、順序の間違いにあります。
汚れて散らかった部屋に、最新の「ルンバ」を買ってきても、床に物が散乱していたらルンバは動けませんよね。むしろコードに絡まって止まってしまいます。
まずは床の物を片付け、ルンバが通れる道を作る。これと同じことが、AI導入にも言えます。
多くの企業は、この「片付け(データ整備)」という地味な工程を飛ばして、いきなり魔法のようなAIツールを導入しようとします。
その結果、何が起きるか。
- ハルシネーション(もっともらしい嘘)の量産
古いデータと新しいデータが混ざり合い、AIが嘘をつき始めます。悪気はないのです、教科書が間違っているから。 - 業務効率の悪化
「AIが信用できないから、結局原本を探して人間が確認する」という二度手間が発生し、むしろアナログ時代より時間がかかるようになります。 - 「やっぱりAIは使えない」という失望
本当は使えるのに、環境のせいで評価を下げてしまう。これは会社にとっても、AIにとっても不幸なことです。
原因はツールではありません。「受け入れ態勢」が整っていないことにあります。そして、その態勢を整えられるのは、現場のデータを知り尽くしているあなたしかいないのです。
「データのお世話係」こそが、AI社会で最も愛される仕事になる
「フォルダの整理なんて、誰でもできる雑用だ」と思っていませんか?
とんでもない。これからの時代、このスキルは「データ・アーキテクト(情報の建築家)」や「AIトレーナー」と呼ばれる、極めて市場価値の高い専門スキルになります。
プログラミングができなくても構いません。
「このフォルダ構成だと、新人が迷うな(=AIも迷うな)」
「このファイル名はルール違反だから直しておこう」
そうやって、情報の交通整理ができる人。その「几帳面さ」と「配慮」が、AIの脳みそを育て、会社の資産を守ります。
「うしろぽっけ」では、いきなりAIを導入するのではなく、まずは「デジタルの大掃除」から始めることを推奨しています。
地味に見えるかもしれませんが、急がば回れ。綺麗なデータ環境さえあれば、後からどんなAIを入れても、驚くほどの成果を出してくれます。
まとめ:AIへの愛は、「整理整頓」で伝えよう
「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れればゴミが出る)」という言葉があります。
これをポジティブに言い換えれば「Good Data In, Good Data Out(良いデータを入れれば、良い答えが返ってくる)」ということです。
あなたの会社のAIを賢く育てられるのは、遠くの天才エンジニアではありません。
日々の業務で発生するデータを、愛を持って整理し、慈しんでいる事務職のあなたです。
さあ、AIという新しい仲間を招待する前に、まずは共有フォルダの窓を開けて、空気の入れ替えをしませんか?
整った部屋に招かれたAIは、きっとあなたの頼れるパートナーとして、恩返しをしてくれるはずです。
共有フォルダの「大掃除」どこから手を付ければいい?
「AIのために整理したいけど、ファイルが多すぎて途方に暮れている…」
「ルールを決めたいけど、何が正解かわからない」
そんな「デジタルの片付け」で困っていませんか?
うしろぽっけは、AI開発だけでなく、その前段階である「業務データの整理整頓・ルール作り」からお手伝いします。
「何からアーカイブすればいいかわからない」という状態でも大丈夫です。
AIがバリバリ働ける「綺麗な環境づくり」を、私たちと一緒に始めましょう。