「ラグ構成で…」と言われて、掃除用具などしか浮かばなかったあなたへ
社内のDX会議や、IT部門との打ち合わせで、こんな会話を耳にしたことはありませんか?
「今回のチャットボットはRAG(ラグ)構成でいきましょう」
「将来的にはAIエージェントに自律的に動いてもらって…」
正直、心の中で「ラグ? 足元のカーペットの話?」「エージェント? スパイ映画?」とツッコミを入れたくなりますよね。私も最初はそうでした。エンジニアの人たちは涼しい顔で話していますが、私たち事務職にとっては、まるで異国の言葉です。
でも、安心してください。この難しそうな言葉、実は「テスト勉強」と「お使い」に例えると、拍子抜けするほど簡単な話なんです。
今回は、今さら聞けない「RAG」と、最近よく聞く「AIエージェント(Copilot Agent)」について、世界一わかりやすく解説します。これさえ読めば、次の会議で「なるほど、資料参照型ですね」と涼しい顔で頷けるようになりますよ。
STEP 1:普通のAIは「数年前に猛勉強したガリ勉くん」(LLMの正体)
まず、基本となる「普通のChatGPT(専門用語ではLLMと言います)」の頭の中を想像してみてください。
彼は、インターネット上のありとあらゆる教科書を丸暗記した「超・ガリ勉くん」です。
だから、「日本の首都は?」「丁寧な謝罪メールの書き方は?」といった「世の中の一般常識」を聞かれると、スラスラ答えられます。
しかし、彼には弱点があります。それは「テスト中に教科書を開いてはいけない(持ち込み禁止)」というルールで戦っていることです。
あくまで「過去に暗記した知識」だけで答えようとするので、こんな意地悪な質問には答えられません。
- 「今日のランチのメニューは?」 →(昔のデータしかないので知らない)
- 「うちの会社の交通費の精算ルールは?」 →(世の中の一般論は知っているけど、御社のことは知らない)
でも、彼はプライドが高いので、「知りません」とは言いません。「交通費は通常、実費で支払われますが…」と、もっともらしい嘘(知ったかぶり)をつくことがあります。これが、いわゆる「ハルシネーション(幻覚)」です。
STEP 2:RAG(ラグ)は「カンニングペーパー持ち込みOKの要領いいくん」
ここで登場するのが、エンジニアたちが騒いでいる「RAG(ラグ)」という技術です。
これは一言で言うと、AIに「あんちょこ(カンニングペーパー)」を渡してあげることです。
今まで「記憶」だけで戦っていたガリ勉くんに、
「わからないことがあったら、この『社内マニュアル.pdf』を見て答えていいよ」
と、教科書の持ち込みを許可してあげる。これがRAGの正体です。
RAGを装備したAIに「交通費のルールは?」と聞くと、彼はこう動きます。
- まず、渡された「社内マニュアル」をパラパラと検索する。(Retrieval:検索)
- 「あ、ここに『月額3万円まで』って書いてあるぞ」と見つける。
- その情報を使って、「3万円までですよ」と回答を作る。(Generation:生成)
つまり、「検索(Retrieval)して、回答を生成(Generation)する」から、略してRAG。
難しそうに聞こえますが、要するに「記憶力テスト」から「オープンブックテスト(教科書持ち込み可)」にルールが変わっただけなんです。
エンジニアさんが「RAG構築のためにデータを整備してください」と言うのは、「AIに読ませるためのカンニングペーパーが汚いと読めないから、綺麗に整理してね」と言っているのと同じなんですね。
STEP 3:さらに進化!「AIエージェント」は、口だけじゃなく「手足」が生えた
さて、RAGのおかげで、AIは「社内のこと」も答えられるようになりました。でも、彼はまだ「椅子に座って答えるだけの人」です。
「交通費の申請方法」は教えてくれますが、申請そのものはやってくれません。
そこで最近登場したのが、「AIエージェント」です。
Microsoftの「Copilot Studio」などで作れる「エージェント機能」もこれにあたります。
これまでのAIが「物知りなアドバイザー」だとしたら、AIエージェントは「手足が生えた使いっ走り」です。
- これまでのAI(RAG含む)
私:「会議室の予約方法を教えて」
AI:「予約システムにログインして、空き状況を確認し…(方法を教えてくれる)」 - AIエージェント
私:「来週の火曜、A会議室とっておいて」
AI:「わかりました。予約システムにアクセスして、ポチっておきましたよ。(勝手に行動して完了させる)」
これが「エージェント(代理人)」と呼ばれる理由です。
AIがただのチャット画面を飛び出して、裏側で勝手にメールを送ったり、予定表を書き換えたり、Excelに入力したりしてくれる。
「Copilotのエージェント機能」というのは、まさに「WordやExcel、Outlookといった道具を、人間に代わって勝手に操作してくれるロボット」のことなんです。
事務職の私たちがやるべきことは「AIの教育係」になること
「RAG」だの「エージェント」だの、技術が進歩するのはいいことですが、私たち事務職の仕事はどうなるのでしょうか?
実はこれらの技術が輝くためには、私たちの「泥臭い事務スキル」が不可欠なんです。
RAGのために:データを綺麗にする
AIに渡す「カンニングペーパー(マニュアルや規定)」が、古い情報のままだったり、ファイル名が「最新_最終_ver2.pdf」みたいにぐちゃぐちゃだったらどうでしょう? AIは混乱して、間違った答えを出します。
「AIが読みやすいように、情報を整理整頓する」。これは、几帳面な事務職にしかできない「データの掃除屋さん」としての重要な仕事です。
エージェントのために:行動ルールを決める
手足が生えたAIエージェントは、放っておくと暴走するかもしれません。勝手に全社員にメールを送ったりしたら大惨事です。
「この業務はAIに任せていいけど、ここからは人間がやる」「予算が〇〇円以上の時は、必ず人間に確認する」。
そんな「業務のガードレール」を設計できるのは、現場の業務フローを熟知しているあなただけです。
難しい言葉は「ざっくり翻訳」で乗り切ろう
今回の話をまとめると、こうなります。
- 普通のAI(LLM)
→ 昔覚えた知識だけで答える「暗記型ガリ勉くん」 - RAG(ラグ)
→ マニュアルを見ながら答えてくれる「カンニングOKな要領いいくん」 - AIエージェント
→ 代わりにメール送ったり予約してくれる「手足の生えた使いっ走りくん」
どうでしょう? こうやって並べると、エンジニアたちが話している「謎の呪文」も、なんだか可愛らしく見えてきませんか?
会議で「今回はRAGを使います」と言われたら、「あ、カンニングペーパーを用意しなきゃいけないのね」と思えばいいですし、「エージェントを導入します」と言われたら、「お、新しいパシリ…いえ、アシスタントが来るのね」と思えばいいんです。
仕組みなんて知らなくて大丈夫。
大切なのは、彼ら(AI)が「何が得意で、何ができないか」を把握して、うまく仕事を振る「先輩社員」としての振る舞いです。
他にも「謎のカタカナ」に困っていませんか?
「RAG」や「エージェント」以外にも、現場には「API」「トークン」「プロンプトエンジニアリング」など、頭が痛くなる言葉が溢れています。
でも、その一つ一つを真面目に勉強する必要はありません。
うしろぽっけの「用語集」では、こうした難しい言葉を、今回のように「ざっくりした例え話」だけで解説しています。
エンジニアに見られたら怒られるかもしれませんが(笑)、現場で働く私たちが分かればそれでOK。
「会議中にこっそり見れるあんちょこ」として、ぜひブックマークしておいてください。