​「消せないExcelの1行」と「言えない退職の予兆」に、私たちはどう向き合えばいいんだろう。

​経営をしていると、どうしても「売上」とか「新規事業」とか、前を向いた派手な数字に目が向きがちですよね。もちろん、それはすごく大事なことです。

​でも、ふと足元を見たときに、なんだか得体の知れない「もやもや」を感じること、ありませんか?

​「うちのバックオフィス、うまく回ってるはずなんだけど、なんだかみんな忙しそうだな」

「あの管理表、前任者から引き継いでるみたいだけど、中身はどうなってるんだろう」

​そんな、言葉にするほどでもないけれど、放っておくといつか足を取られそうな「小さな綻び」。今日は、その正体について、少しお話しさせてください。

目次

​1. 誰も触れない「あの1行」の正体

​あなたの会社のパソコンの中に、こんなExcelシートはありませんか?

「※13行目は絶対に削除しないでください」

「※数式が複雑なので、担当者以外は触らないこと」

​そんな注釈が、付箋のように貼られた管理表。

​現場の担当者に「これ、なんで消しちゃいけないの?」と聞いても、「いや、前任者からそう言われてて……消すと全部の計算が狂っちゃうらしいんです」なんて答えが返ってくる。

​これ、実は笑い事じゃないんですよね。

​魔法が解けるのが怖いだけ

​その「消せない1行」は、いわば組織の「地層」みたいなものです。

数年前、まだ会社が小さかった頃に誰かが徹夜で組んだ数式。あるいは、制度が変わったときに無理やり継ぎ足した条件分岐。

​それを一つひとつ紐解いて直す余裕がないから、みんなでその1行を「神様」みたいに崇めて、触れないようにそっと運用している。

​でも、経営者として想像してみてほしいんです。

もし明日、その1行の「秘密」を知っている唯一の担当者が、急に会社に来なくなったら?

その瞬間、御社の給与計算も、在庫管理も、請求業務も、一気に「正解がわからないパズル」に変わってしまいます。

​「属人化」なんて難しい言葉を使わなくてもいい。

要は、「誰にも中身がわからない爆弾」を、みんなでリレーしながら回している状態なんです。これって、経営のリスクとして、けっこう怖くないですか?

​2. ツールを入れる前に、隣で一緒に「紐解く」こと

​こういう話をすると、「じゃあ最新のシステムを入れよう!」という話になりがちです。でも、ちょっと待ってください。

​ぐちゃぐちゃになったExcelの内容を理解しないまま、新しいシステムに流し込んでも、結局は「新しいシステムの中にある、誰も触れないブラックボックス」が出来上がるだけなんです。

​大事なのは、派手なIT投資の前に、まずはその「13行目」に何が書かれているのかを、一緒に読み解くこと。

「あ、これ、5年前のキャンペーンの名残ですね。もう今の業務には関係ないですよ」

そんなふうに、一つずつ絡まった糸を解いていく作業。

​それは、すごく地味で、時間もかかる仕事です。

でも、その「地味な整理」をしない限り、バックオフィスの担当者は、ずっと「壊れる恐怖」と戦いながら、深夜までキーボードを叩き続けることになります。

​3. 「最近、あの人ちょっと雰囲気変わった?」の、その後

​Excelの話と同じくらい、いえ、それ以上に深刻なのが「人の予兆」です。

​経営者や責任者の方から、「優秀なやつだったのに、急に辞めると言われて困ってる」という相談をよく受けます。でも、現場をずっと見守っている側からすると、それは決して「急」ではないんです。

​予兆は、音もなく忍び寄る

​例えば、Slackの返信が、以前より少しだけ短くなった。

例えば、会議での発言が「建設的な批判」から「無難な同意」に変わった。

​これ、気のせいじゃないんですよね。

人は「この場所で頑張ろう」と思っているうちは、ぶつかってでも良くしようとします。でも、「あ、もういいや」と心が離れた瞬間、驚くほど「聞き分けの良い、扱いやすい社員」になるんです。

​責任者の方が「最近、あいつ丸くなったな。大人になったな」と安心しているその時、実はその社員は、水面下で履歴書を書き直しているかもしれません。

​「言えない予兆」の重さ

​人事担当者は、その空気に気づいています。

でも、それをあなたに報告するのは、すごく勇気がいることなんです。

​「確証があるわけじゃないし……」

「今、社長に言っても、また飲み会に誘って引き止めるだけだろうしな……」

​そんなふうに、人事担当者の心の中に「言えない予兆」が溜まっていく。

これもまた、組織の「沈黙の負債」です。

4. 「善意」が積み重なって、身動きが取れなくなる皮肉

​不思議だと思いませんか? 誰も「会社をめちゃくちゃにしてやろう」なんて思っていないはずです。むしろ、みんなが「なんとか業務を回そう」と必死に頑張った結果として、あの謎のExcelや、誰にも言えない悩み相談の時間が生まれています。

​バックオフィスの担当者は、優しい人が多いんです。

「この入社手続き、本当はもっと早く書類を出してほしいけど、現場の営業さんも忙しいだろうしな……。よし、私が残業して、足りない情報を自分で調べて埋めておこう」

​この「ちょっとした優しさ」が、実はブラックボックス化の入り口です。

​「名もなき仕事」が、組織の時間を奪う

​経営者のあなたから見れば、手続きが滞りなく終わっているように見えます。でも、その裏側には、本来なら必要のない「名もなき仕事」が山積みになっています。

  • ​判読不能な手書きの書類を、目をこすりながら解読する時間。
  • ​誰に聞けばいいかわからない「社内の暗黙のルール」を、周りに気を使いながら探る時間。
  • ​誰も見ていない報告書を、前例があるからという理由だけで作り続ける時間。

​これらはすべて、「仕組み」が機能していないことを、担当者の「根性」でカバーしている状態です。でも、人間の根性には限界があります。限界が来たときに、プツンと糸が切れて、冒頭にお話しした「退職の予兆」へと繋がっていくわけです。

​5. 決済権者が直視すべき本当の「損失額」

​ここで、少しだけシビアなお金の話をさせてください。

優秀な社員が一人辞めたときの損失を、単なる「求人広告費」だと思っていませんか? もしそうなら、それは大きな見落としです。

​離職が引き起こす「目に見えないコスト」

  1. ノウハウの消滅
    あの「消せないExcelの1行」の意味を知っていた人がいなくなることで、業務を復旧させるための時間が膨大に膨れ上がります。
  2. 残された人のモチベーション低下
    「あの人、あんなに頑張ってたのに結局辞めちゃったんだな」という空気は、ウイルスのように組織全体に広がります。これが「離職の連鎖」の引き金になります。
  3. あなたの「経営に集中する時間」の喪失
    これが一番大きいです。現場が混乱すれば、経営者であるあなたが現場の火消しに走らなければなりません。本来なら「未来の戦略」を考えるべきあなたの時給が、火消しに費やされる。これほど高いコストはありません。

​「事務員を一人雇う余裕なんてない」と仰る経営者の方もいますが、実は「中途半端に綻びを放置すること」が、一番高いコストを払い続けていることになっているんです。

​6. 「ぽっけ」を整理するということ

​さて、じゃあどうすればいいのか。

私たちは、大それたシステム開発や、厳しい組織改革を提案するつもりはありません。

​私たちが大切にしたいのは、「ぽっけ」の中身を、一度テーブルに全部出してみるような作業です。

​詰め込みすぎた「ぽっけ」を軽くする

​散歩に出かけるとき、ポケットに小銭や鍵、ハンカチをパンパンに詰め込んでいたら、歩きにくいですよね。今の御社のバックオフィスも、そんな状態かもしれません。

  • ​「これ、本当に今も必要ですか?」
  • ​「この作業、こうすればもっと楽に、誰でもできるようになりませんか?」
  • ​「あなたが一人で抱えているその『予兆』、私たちに少し分けてくれませんか?」

​そうやって、隣に座って一つひとつ整理していく。

劇的な変化ではないけれど、気づけば「あれ、最近ちょっと体が軽いな」「本来やりたかった仕事に、手が回るようになってきたな」と感じられる。

​そんな「呼吸がしやすくなるバックオフィス」を作ることが、私たちの仕事です。

​ 最後に:誰かが隣にいるという安心感

​バックオフィスの仕事は、孤独です。

「できて当たり前」と思われ、ミスをすれば責められる。誰にも相談できず、画面の中の複雑な数式とだけ向き合う毎日。

​経営者であるあなたも、同じくらい孤独かもしれません。

社員には言えない悩みを抱え、組織の綻びに気づきながらも、どこから手を付ければいいかわからない。

​そんなとき「とりあえず、この人に話してみよう」と思える相手が、組織のすぐ隣にいる。それだけで、組織の空気は劇的に変わります。

​完璧な会社なんてありません。

でも、今日より少しだけマシな明日を作ることはできます。

謎のExcelを一緒に読み解き、静かに進行する離職の予兆を、希望に変えていく。

​その一歩を、うしろぽっけと一緒に踏み出してみませんか。

その「もやもや」
一緒に整理しませんか?

「何から手をつければいいか分からない」
「わざわざ外注するほどでもないけれどずっと気になっている」。
そんなバックオフィスの小さなお困りごとを隣で一緒に片付けるのが「うしろぽっけ」の仕事です。

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