​お酒を飲まない「ソバーキュリアス」な社員とどう向き合う?総務が提案する、夜の交流に頼らない新しい組織の繋ぎ方

目次

​1. オフィスの交流から「当たり前」が消えていく

​かつて、職場のコミュニケーションを円滑にするための共通言語は、仕事終わりの一杯でした。しかし、2026年現在のオフィスでは、その光景に静かな、けれど確実な変化が起きています。

​今、注目されているのは「ソバーキュリアス(Sober Curious)」という選択です。これは、体質的に飲めないのではなく、自分の時間や健康を大切にするために「あえて飲まない」というライフスタイル。この価値観が広がる中で、これまでお酒という「場の勢い」に頼ってきた社内交流は、今、新しい形を模索しています。

​総務や人事にとって、これは単に「飲み会を減らす」という話ではありません。お酒がある・なしに関わらず、社員同士がフラットに、かつ心地よく繋がれる場所をどう作るか。

​これまでの慣習を一度フラットに見つめ直し、今の時代に合った「ちょうどいい距離感」をデザインする。そんな、地に足の着いたバックオフィスの取り組みを考えてみます。

​2. 「夜の席」で見落としていた、小さなささくれ

​なぜ、これまでの交流スタイルが見直されているのでしょうか。そこには、組織が長年「良かれと思って」続けてきた習慣の中に潜んでいた、小さな「ささくれ(ストレス)」がありました。

  • 時間の使い方への意識の変化
    定時後の時間を、育児や自己研鑽、あるいは単なる休息にあてたいと願う社員が増えています。夜の拘束は、そうした個人の時間を大切にしたい層にとって、目に見えない負担となっていました。
  • 情報の伝わり方の偏り
    「その場にいた人だけが知っている話」が増えるほど、参加できなかった社員との間に小さな溝が生まれます。こうした「情報の不均衡」をどう解消するかが、現代の総務に求められる視点です。
  • コミュニケーションの持続性
    その場の盛り上がりも大切ですが、翌朝の業務に繋がる「質の高い対話」がどれだけ行われているか。勢いに頼らない交流は、結果としてより深い相互理解を生む可能性を秘めています。

3. 【実践】お酒の勢いに頼らずに「心の距離」を整える3つのアプローチ

​お酒という「場の緊張を無理やり解く装置」を使わない場合、重要になるのは「会話のきっかけ(フック)」をいかに自然に用意するかです。シラフでも気まずくならず、かつ業務の邪魔にならない、現代のオフィスに馴染む交流の形を考えます。

​① 「時間軸」を変える:15時のサードプレイス

​夜の時間を拘束するのではなく、業務時間内の「15分〜30分」を戦略的に活用します。

  • 内容
    週に一度、あるいは月に一度、リフレッシュスペースに「少し質の高い飲み物(季節の日本茶や地元のコーヒーなど)」と、片手でつまめる程度の小さなお菓子を用意します。
  • 狙い
    「飲み会」という大げさな括りにせず、あくまで「休憩のついで」という気軽さを演出します。
  • 効果
    ソバーキュリアスな層はもちろん、時短勤務や育児中の社員も気兼ねなく参加できます。お酒の席のような「深い本音」を目指すのではなく、日常の「ちょっとした困りごと」を共有できる、風通しの良い余白を作ることが目的です。

​② 「共通の関心事」を可視化する:偏愛(へんあい)プロフィールボード

​何を話せばいいかわからない、という沈黙を「仕組み」で解決します。

  • 内容
    マグネット式のボードや、社内SNSの片隅に、仕事とは全く関係ない「自分の好きなもの」をカード形式で掲示します。 (例:文房具へのこだわり、週末の低山登山、愛猫のベストショットなど)
  • 狙い
    お酒の力を借りて相手のプライベートに踏み込むのではなく、相手が「見せても良い」と思っている一面を、あらかじめ共有しておく手法です。
  • 効果
    「あ、あのボードで見ましたけど、山登りされるんですね」といった、会話の「ささくれ」がないスムーズな導入が可能になります。相手の専門外の顔を知ることで、心理的安全性が自然と高まります。

​③ 「共同作業」をデザインする:オフィスの小さな手入れ

​「話すこと」を目的化せず、「一緒に何かをすること」で会話を誘発します。

  • 内容
    オフィスの観葉植物の植え替え、共用スペースのちょっとした整理整頓、あるいは防災備蓄品の入れ替え作業など、短時間で終わる「軽い共同作業」をイベント化します。
  • 狙い
    面と向かって話すのが苦手な人でも、同じ方向を向いて手を動かしている最中なら、意外とポツポツと言葉が出てくるものです。
  • 効果
    「作業」という大義名分があるため、無理に盛り上げる必要がありません。その作業を通じて生まれる「助かりました」「次はこうしましょうか」というやり取りが、信頼関係の種になります。

​4. 【まとめ】お酒がなくても、私たちは「同じ景色」を見られるか

​昭和から平成にかけて、お酒は組織の「潤滑油」として大きな役割を果たしてきました。しかし、2026年現在のバックオフィスに求められているのは、特定のツールに頼り切るのではなく、「誰もが自分の体温で参加できる場所」を整えることです。

​変化は「否定」ではなく「選択肢の拡大」

​ソバーキュリアスという価値観を受け入れることは、これまでの飲み会文化を否定することではありません。大切なのは、お酒を飲む人も、飲まない人も、そして「今日は飲まない」と決めた人も、等しくその場の輪に加われる「選択肢の豊かさ」を組織が持つことです。

​お酒という勢いを使わずに交流を深めるのは、正直に言えば、最初は少し手間に感じるかもしれません。沈黙を埋めるための工夫を凝らし、相手の話にじっくりと耳を傾ける。そんな「丁寧なコミュニケーション」への立ち返りが、今、求められています。

​バックオフィスが守る組織の「地盤」

​総務や人事が整えるべきは、派手なイベントの成功だけではありません。

  • ​誰かが疎外感を感じていないか。
  • ​交流の場が、誰かの生活を圧迫していないか。
  • ​翌朝、心地よく仕事に取り組める繋がりになっているか。

​そんな、表からは見えにくいけれど確実に組織を支える「地盤」を整えること。指先に触れる小さなささくれを取り除くように、一つひとつの交流の形を丁寧に見直していく先に、新しい時代の「結束力」が生まれるはずです。

​道具や習慣は変わっても、バックオフィスならではの「支え方」の本質は変わりません。お酒を介さない交流の先にある、素顔のままの健やかな組織。そんな景色を、今日から少しずつデザインしてみませんか。

他にも、バックオフィスの日常をちょっと楽にする
「うしろぽっけ」流の視点を届けています。

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