「関数が使える」というスキルの賞味期限
かつて、表計算ソフトの関数を使いこなすことは、事務職における「職人芸」でした。特にVLOOKUPやXLOOKUPは、バラバラのデータを一つに統合するための最強の武器であり、それを使いこなせる人材は、どこの現場でも重宝されたものです。
しかし、生成AIが当たり前のインフラとなった今、このスキルの立ち位置は劇的に変わりつつあります。
今や、AIに「この表とこの表を、商品IDをキーにして結合して」と一言伝えるだけで、背後で複雑な処理が完結する時代です。人間が画面を凝視しながら、参照範囲がズレていないか、絶対参照の「$」を付け忘れていないかと神経を尖らせる必要は、本来もうありません。
履歴書から「VLOOKUPが使えます」という言葉が消えていくのは、人々がその技術を忘れるからではありません。「人間がデータの継ぎ接ぎ(つぎはぎ)を担当する」という業務そのものが、技術によって過去のものになりつつあるからです。
AIは「関数」を組むのではなく「構造」を理解する
これまでの自動化と、今のAIがもたらす変化の決定的な違い。それは、AIが「関数の書き方」を教えてくれることではなく、「データがどうあるべきか」という構造そのものを理解し始めていることにあります。
例えば、これまでは:
- AシステムからCSVを出す。
- BシステムからExcelを出す。
- 人間が目視で「キー」となる項目を探す。
- VLOOKUP関数を組んで結合する。
という4つのステップが必要でした。
しかしこれからは、AIやAPI(システム同士を繋ぐ窓口)が、最初から「このデータとこのデータは同じものだ」と認識して繋いでくれます。
つまり、人間が「接着剤(関数)」になる必要がなくなるのです。
この変化は、一見すると「仕事が奪われる」ように見えるかもしれません。しかし、現場を10年見てきた私からすれば、これは「ようやく人間が、人間らしい判断に時間を使えるようになる福音」だと言い切りたい。
なぜ、それでも現場の「転記作業」は無くならないのか
ここで一つ、冷めたコーヒーを飲みながら考えてみてほしい現実があります。
「AIで何でもできる時代」と言われながら、なぜあなたのデスクからは、未だに「データのコピペ」や「CSVの加工」という泥臭い作業が消えないのでしょうか。
その理由は、どれだけAIや大規模なシステムが進化しても「現場独自の、ちょっとしたイレギュラー」に対応しきれていないからです。
- 特定の取引先だけ、データのフォーマットが微妙に違う。
- システムに入れる前に、人間が一度内容をチェックして「名寄せ」をしなければならない。
- 大手ベンダーのシステム同士が、実は上手く連携できていない。
この、システムとシステムの間にぽっかりと空いた「隙間」。
ここを埋めるために、私たちは今もなお、VLOOKUPという名の「人力の橋」を架け続けています。AIという魔法の杖があっても、その杖を振る場所が「泥臭い現場の隙間」である限り、本当の意味での効率化は訪れません。
履歴書の余白に、何を書くべきか
「VLOOKUPが使えます」という言葉が履歴書から消えた後、そこにはどんな言葉が並ぶべきでしょうか。
これからの時代に求められるのは、関数を組む技術ではありません。
「この無駄な作業を、どうすればテクノロジーで消し去れるか」という、業務をデザインする視点です。
100のデータを10分で繋ぎ合わせる人よりも、「その100のデータを最初から繋がった状態にする仕組み」を考え、実装できる人。そんな「道具を使いこなし、仕組みを作る側」に回ることが、これからのバックオフィスの生存戦略になります。
大掛かりなシステムではなく、システムの「外側」を埋める選択肢
VLOOKUPやXLOOKUPが必要になるのは、システムが対応しきれない「データの飛び地」があるからです。
多くの企業は、この隙間を埋めるためにさらに巨大なシステムの導入を検討します。しかし、数千万円をかけてシステムを刷新しても、現場の「ちょっとした加工」や「独自の集計ルール」までは吸収しきれません。結局、新しいシステムの横で、また新しいVLOOKUPが組まれるだけ……そんな光景を、私は何度も見てきました。
今、私たちが選ぶべきは「システムを丸ごと入れ替えること」ではありません。
今ある道具の「外側」に、AIやプログラムを介在させた「小さな橋」を架けることです。
Excel VBA、Google Apps Script(GAS)、あるいはPythonを用いたAPI連携。
これらは、大規模な開発に比べれば「小さな道具(マイクロツール)」に過ぎません。しかし、この小さな道具こそが、履歴書からVLOOKUPという項目を消し去り、現場を「転記の苦行」から解放する鍵になります。
「関数を組める人」から「フローを組める組織」へ
「うしろぽっけ」が提案するのは、特定の関数の知識に依存する組織からの脱却です。
例えば、これまで人間がVLOOKUPで1時間かけていた名寄せ作業を、ボタン一つでAIが判別し、自動でシステムに流し込む。そんな「専用の道具」を、あなたの会社の業務に合わせてピンポイントで設計します。
ここで大切なのは、AIという高度な技術を、誰もが意識せずに使える「普通の道具」として実装することです。
難しいプロンプトを打ち込む必要も、複雑な設定を覚える必要もありません。いつものExcelやブラウザの裏側で、勝手にAIが働き、データが整っていく。その「手触りの良さ」こそが、業務をデザインするということです。
「VLOOKUPが使えます」というスキルが不要になる日は、決して「事務の仕事がなくなる日」ではありません。
「データの下準備」という、本来やらなくていい苦労から解放され、そのデータをどう経営や現場の判断に活かすかという、より付加価値の高い仕事へシフトできる日なのです。
あなたの「ささくれ」を明日の「武器」に変えるために
私たちが目指しているのは、単なる自動化ツールの提供ではありません。
現場の人間が抱える、言葉にならない「めんどくさい」「ここが痛い」という感覚を、確実な技術で解決することです。
もし、あなたの組織に「関数のスペシャリスト」がいて、その人がいなければ業務が回らない状態にあるとしたら。それは、組織の血管が詰まりかけているサインかもしれません。
立派なDXのビジョンを掲げる前に、まずは指先の「ささくれ」を取り除く。
その小さな一歩が、結果としてAI時代の荒波を乗りこなす、強靭なバックオフィスを作る最短ルートになります。
コーヒーをもう一杯淹れたくなるような、少し踏み込んだ未来の話をしましょう。
「手を動かす人」から「景色を見る人」へ。事務職の再定義
VLOOKUPや転記作業から解放されたとき、具体的にあなたの日常はどう変わるのでしょうか。
これまでのバックオフィスは、いわば「パズルのピースを揃える作業」に追われていました。バラバラの箱(システム)からピースを取り出し、形を整え、決められた枠にはめ込む。その作業だけで1日が終わってしまうことも珍しくありませんでした。
しかし、そのピースの整理を「小さな道具(AIや自動化ツール)」が肩代わりするようになると、あなたの仕事は「完成したパズルを見て、次の戦略を練ること」に変わります。
- データの不備を直す時間ではなく、「なぜ不備が起きるのか」という根本原因を潰す時間。
- 数字を集計する時間ではなく、「この数字が何を警告しているのか」を経営層に伝える時間。
これは、スキルの喪失ではなく「視点の高度化」です。
履歴書からVLOOKUPという言葉が消えるのは、それがあまりにも「当たり前の前提」となり、人間はもっと上のレイアウトで思考すべきだという、社会的な合意形成の現れなのです。
「AIは怖い」という感情の正体
「自分の仕事がなくなるのではないか」という不安。それは、非常に人間らしく、至極真っ当な感覚です。
しかし、現場を見てきた私からお伝えできるのは、「AIはあなたの仕事を奪うのではなく、あなたを『つまらない作業』から救い出しにきている」ということです。
人間は、単調な転記や、数万行のデータ照合をミスなくこなすようには設計されていません。それは本来、機械が得意とすべき領域です。そこに人間が無理やり適応しようとするから、肩が凝り、目が疲れ、心が「ささくれ」ていくのです。
「うしろぽっけ」が提供したいのは、最先端のAIを振りかざすことではありません。
あなたが本来持っている「考える力」や「気遣い」を、最大限に発揮できるような「静かな環境」を、技術を使って作り出すことです。
道具は「優しさ」で選ぶ時代へ
これからのビジネスツールに求められるのは、機能の多さではありません。
「どれだけ使う人のストレスを減らせるか」という優しさです。
どんなに高機能でも、使い方が難しくてマニュアルを読み込まなければならないツールは、新たな「ささくれ」を生むだけです。
「うしろぽっけ」が、ぷっくりとした丸みのあるデザイン(UI/UX)にこだわるのは、それが使う人への最低限の礼儀だと考えているからです。
技術は、もっと人に寄り添えるはず。
VLOOKUPという「技術の壁」を乗り越えた先にある、もっと自由で、もっと心地よいバックオフィスの姿。それを皆さんと一緒に形にしていければ、これほど嬉しいことはありません。
記事の締めくくり(CTA)
もし今、あなたの手元に「これはAIでなんとかならないのか」と思う業務があるなら。
あるいは、部下がVLOOKUPの山と戦っている姿を見て、何とかしてあげたいと感じているなら。
その直感こそが、組織を次のステージへ進める原動力です。
まずは、あなたの組織にどれだけの「伸びしろ(ささくれ)」があるのか、1分だけ時間をとって確認してみてください。