1. なぜ「課題」を探そうとすると見つからないのか
「今の現場の課題を挙げなさい」
会議の席や評価面談でこう言われて、言葉に詰まってしまったことはありませんか?
とりあえず「コミュニケーションが不足していると思います」とか「マニュアルの整備が遅れています」なんて、どこかで聞いたような「課題っぽい言葉」を並べてその場を凌ぐ。でも、心の中では「そんなの課題じゃなくて、ただの現状だよなあ」なんて思っていたりして。
なぜ、課題を探そうとすればするほど、何も見つからなくなるのか。
理由はすごくシンプルです。
「どこに行きたいか(ゴール)」が決まっていないのに、「何が邪魔か(課題)」なんてわかるはずがないからです。
課題とは「目的地へ行くのを邪魔するもの」の別名
想像してみてほしいんです。
地図も持たず、目的地も決めずに、ただ道端に立っている自分を。
そこで誰かに「今、あなたの歩みを邪魔している障害物(課題)は何ですか?」と聞かれたら、どう答えますか?
きっと、何も答えられないはずです。だって、どこにも行こうとしていないのだから、道端に転がっている石ころも、目の前にある壁も、あなたにとっては単なる「そこにある景色」であって、「障害物」ではないからです。
でも、もしあなたが「あそこにある山の頂上まで、今日中に行きたい」と決めて歩き出したとしたらどうでしょう。
途端に、目の前の急な坂道は「体力を奪う課題」になり、道を塞ぐ倒木は「乗り越えなければならない課題」に変わります。
仕事もこれと全く同じです。
「課題」というのは、無理やりひねり出すものではありません。「あそこに行きたい!」「こうありたい!」という強いゴール(目的地)に向かって一歩踏み出した時に、初めてガツンとぶつかる「邪魔な壁」のことなんです。
「現状」を課題と呼び変えるだけの罠
多くの職場では、ゴールがないまま「課題」だけを探させようとします。
そうなると、私たちは仕方なく「今、なんとなく気に入らないこと」や「足りないもの」を課題と呼び変えるしかなくなります。
- 「残業が多いのが課題です」
- 「ツールが使いにくいのが課題です」
- 「情報共有ができていないのが課題です」
これらは、実は課題ではありません。ただの「現状」です。
「残業をゼロにして、全員が夕方5時に笑って帰れる職場にする」というゴールがあるからこそ、残業が「課題」になる。
「誰がどこにいても、迷わず最新のデータにアクセスできる」というゴールがあるからこそ、共有不足が「課題」になる。
もし、あなたが今「課題が見つからない」と焦っているのなら、それはあなたの感性が鈍いからでも、仕事にやる気がないからでもありません。単に、「自分たちが本当に向かいたい場所(全体像)」がまだ描けていないだけ。
課題を探すのを、一度やめてみませんか。
まずは、自分がこの仕事を通じて「どんな景色を見たいのか」を考える。そこからしか、本物の課題は見えてこないのだと私は思っています。
2. マニュアルは「点」、シナリオは「線」。全体像を描くことの本当の意味
多くの職場には、立派なマニュアルがあり、便利なテンプレートが揃っています。
「これを見れば、誰でも同じように仕事ができる」
一見すると素晴らしいことのように思えますが、実はここに、課題が見つからなくなる最大の落とし穴が隠れています。
マニュアルやテンプレートは、いわば「失敗しないための最低限のルール」であり、仕事の「点」でしかありません。一方で、仕事の本来の姿は、目的というゴールへ向かって進んでいく「線」、つまり「シナリオ」であるはずなんです。
テンプレートを埋めても「物語」は進まない
たとえば、お問い合わせ対応を例に考えてみましょう。
マニュアルには「3営業日以内に返信すること」「敬語を正しく使うこと」と書かれている。テンプレートには丁寧な謝罪文が用意されている。
これを忠実にこなせば、作業としては100点です。でも、これだけでは「課題」は見つかりません。せいぜい「今日は件数が多くて入力をこなすのが大変だ」という、作業効率の悩みが出てくる程度です。
でも、ここに「ユーザーが心の底から納得し、最後に『相談してよかった』とホッとしてもらう」というゴールを置いて、自分なりにそこへ辿り着くまでのシナリオを描くと、景色は一変します。
- 「まず、相手の焦りを秒速で取り除いて、次に一番知りたかった答えを即座に提示する」
- 「最後に、次への不安を残さないような温かい一言を添える」
こういう「自分がどう動いて、相手をどう動かしたいか」というシナリオを描いた瞬間に、今のマニュアルやテンプレートが「邪魔なもの」に見えてくることがあるんです。
「このテンプレートの表現、丁寧だけど冷たくて、相手の不安を煽っていないか?」
「今のシステムだと、過去の経緯を調べるのに時間がかかりすぎて、秒速の返信ができないぞ」
この「描いたシナリオ通りにいかないもどかしさ」。これこそが、私たちが解決すべき本当の「課題」の正体です。
全体像がないままの改善は「迷子」の元
「マニュアルを新しくしましょう」「新しいテンプレートを配ります」
そんな声が現場から上がることもありますが、土台となる「どういうシナリオでゴールに向かうのか」という全体像が抜けていれば、それはただ「点」を増やしているだけに過ぎません。
事務やバックオフィスの仕事は、どうしても「作業をこなすこと」が目的になりがちです。でも、本当に大切にしたいのは、その作業の先にある「まともな状態」ですよね。
「今の作業をどうこなすか」ではなく、「ゴールに向けて、どういう物語(シナリオ)を転がしていきたいか」。
テンプレートという「型」に自分の思考をはめ込むのを、一度やめてみてください。
「本来、自分はどういうシナリオでこの仕事を完結させたいのか」
その全体像が見えたとき、目の前の景色は「ただの作業」から、「攻略すべき課題が溢れる、手応えのある現場」に変わっていくはずです。
3. 課題解決は、かっこいいことじゃない。ただの「石拾い」
「課題を解決する」なんて言うと、なんだかすごいアイデアを出して、組織を一気に変えるような、ドラマチックでかっこいい姿を想像するかもしれません。
でも、現場で本当に価値がある解決というのは、もっとずっと地味で、静かなものです。私はそれを、「石拾い」のようなものだと思っています。
理想のシナリオを邪魔する「小さな石」をどける
あなたが「ユーザーを最高に満足させる」というゴールを決め、そのためのシナリオを描いたとします。でも、いざ歩き出そうとすると、足元には小さな石ころがゴロゴロ転がっていることに気づくはずです。
- 入力するたびにエラーが出る、使いにくいExcelシート。
- 誰が持っているかわからない、承認印を待つ時間。
- テンプレートのどこを直せばいいのか、いちいち調べないとわからないマニュアル。
これら一つひとつは、決して「大きな事件」ではありません。でも、この小さな石ころたちが積み重なることで、あなたが描いた「理想のシナリオ」は少しずつ削られ、気づけばまた「ただの作業」に引き戻されてしまいます。
課題を解決するというのは、この足元の石を、一つひとつ丁寧に拾い上げて、道からどけていく作業に他なりません。
「DX」や「イノベーション」という言葉に踊らされない
最近は「DX」とか「業務革新」といったキラキラした言葉が溢れています。もちろん、新しいシステムを入れることが正解の時もあります。でも、足元に石が転がったまま高価な靴を履き替えても、結局は歩きにくいままです。
本当に現場を「まとも」にするのは、魔法のような新兵器ではありません。
「この入力フォーム、もっと直感的に選べるようにしよう」
「この承認フロー、このステップは飛ばしても安全だよね」
そうやって、現場で働く人たちが日々感じている「もどかしさ」を、一つひとつ潰していくこと。誰にも気づかれないかもしれないし、ニュースになるような話でもないけれど、その「石拾い」の積み重ねこそが、現場に「納得感」という血を通わせる唯一の方法なんです。
誰かのために石を拾う、その手応え
石を拾うのは、自分自身のためでもありますが、それは同時に「次にここを歩く誰か」のためでもあります。
あなたが石を一つどけたことで、後輩の作業が5分短縮される。隣の席の同僚が、ため息をつかずに済む。そういう小さな変化の積み重ねが、組織全体の「しんどさ」を減らしていきます。
課題解決は、かっこいいヒーローの仕事ではありません。
自分が描いたシナリオを、そして一緒に働く仲間の時間を守るための、泥臭くて、でも最高にクリエイティブな「石拾い」なんです。
もし、目の前の石が大きすぎて一人では動かせないときは、一緒に踏ん張る仲間がいればいい。うしろぽっけは、そんなあなたの「石拾い」を隣で手伝う、そんな存在でありたいと思っています。
まとめ:まずは、小さくて「わがまま」なゴールから描き始めよう
「課題を見つけて、解決しなきゃ」
そうやって自分を追い込むのは、今日で終わりにしませんか。
課題が見つからないのは、あなたがサボっているからでも、能力が低いからでもありません。ただ、マニュアルやテンプレートという「他人が決めた点」の中で、一生懸命に正解を探して迷子になっていただけなんです。
本当の仕事は、もっと自由で、もっとあなた自身の「こうしたい」という意思から始まっていいはずです。
完璧なシナリオじゃなくていい
いきなり「会社を大きく変える壮大なシナリオ」なんて描かなくて大丈夫です。
まずは、今日これから向き合う「たった一つのお問い合わせ」や「一通のメール」から始めてみてください。
- 「この返信を読んだ相手が、思わず口角を上げて安心してくれる」
- 「この資料を見た上司が、一言も質問せずに納得してくれる」
そんな、小さくて、少しだけ自分勝手な「わがまま」をゴールに据えてみる。そして、そこに至るまでの自分なりの「理想のシナリオ」を、頭の中で描いてみてください。
そのシナリオを邪魔するものが、もし見つかったら。
それが、世界であなただけが見つけた、最高に価値のある「本物の課題」です。
答えはマニュアルの外にある
マニュアルはあなたを守ってくれますが、あなたをどこかへ連れて行ってはくれません。
あなたを目的地まで運んでくれるのは、あなた自身が描いた「線(シナリオ)」だけです。
「ただの作業」を「納得できる仕事」に変える鍵は、いつだってあなたの想像力の中にあります。
もし、シナリオを描く途中で筆が止まってしまったり、目の前の石が重すぎて動かせなかったりしたときは、いつでも声をかけてください。
あなたの「こうありたい」という想いを、一緒に形にして、邪魔な石を一つずつ拾い上げていく。そんなふうに、あなたの後ろポケットに寄り添う存在でありたいと思っています。
人生の半分を、ただ「こなす」ためだけに使わない。
納得できるシナリオを、今日ここから、一緒に描き始めてみませんか。
あなたの現場に
「納得できる物語」を。
マニュアルをなぞるだけの毎日は
もう終わりにしませんか?
「本当はどうありたいか」というゴールを決め、そこに至るまでのシナリオを描く。
それだけで、現場の景色は驚くほど「手応えのあるもの」に変わります。
一緒に「課題」へと変えていきましょう。
ちょっと一緒に考えてみる