海外では裁判沙汰も。「燃え尽き」の裏で急増する日本のバックオフィスを静かに蝕む「ボアアウト(退屈地獄)」の正体

​「あーあ、暇ですなぁ」

そう口に出せたら、どんなに楽でしょうか。

​日本のビジネス現場において、「忙しい」はステータスです。「寝てない自慢」はあっても、「仕事がない自慢」をする人はいません。

なぜなら、日本社会において「暇であること」は、能力がないことの証明であり、給料泥棒であり、恥ずかしいことだと刷り込まれているからです。

​しかし、フランスをはじめとする欧州では、今この「暇」が深刻なハラスメント問題として扱われ、裁判にまで発展していることをご存知でしょうか。

​その名は「ボアアウト(Bore-out)」

忙しすぎて燃え尽きる「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の逆。仕事がなさすぎて、単調すぎて、自分の能力を発揮できずに精神が砂のように崩れていく症状です。

​今回は、海外では「経営者の怠慢」として訴えられることもあるこの現象が、なぜ日本のバックオフィス現場で大量発生しているのか。

そして、「正社員で雇ってあげることが優しさ」という日本の常識が、実は社員に対する残酷なミスマッチになっているという、不都合な真実について、私自身の苦い経験を交えてお話しします。

目次

​午前11時、私の仕事はすべて終わってしまった

​これは、私が過去に経験した実話です。

当時、私はある中堅企業の管理部門に転職しました。「安定した環境で、腰を据えて働きたい」と思ったからです。

私は真面目な性格なので、入社初月からフルスロットルで業務を覚えました。前任者が3日かけていた請求書処理を、Excelのマクロを組んで3時間に短縮しました。フォルダを整理し、無駄な会議を減らしました。

​そして入社3ヶ月目のある月曜日。事件は起きました。

週末明けのメール返信、今週のスケジュール確認、経費精算の一次チェック。

猛スピードでタスクを片付け、ふと時計を見た時です。

まだ、午前11時でした。

​「あれ? 時計壊れてる?」

二度見しましたが、時間は進んでいません。

上司に「何か手伝うことはありますか?」と聞きました。上司は申し訳なさそうに言いました。

「いや、今のところ大丈夫。あ、これ(誰が見るかもわからない業界新聞の切り抜き)でも読んでおいて」

​さあ、ここからが本当の「苦行」の始まりです。

定時は18時。あと7時間あります。休憩を1時間挟んでも、6時間。

仕事はもう、一粒も残っていません。でも、帰ることは許されません。

​「Excel演技派俳優」になるしかなかった午後

​ここからの時間は、永遠のように感じられました。

スマホを堂々といじるわけにもいきません。居眠りなんてもってのほかです。

私は、生き延びるために「忙しいフリをする演技」を極め始めました。

  1. 意味のないスクロール
    Excelの画面を開き、マウスのホイールをゆっくり下に回し、また上に戻す。これを数分おきに繰り返します。「データをチェックしている」という体(てい)です。
  2. キーボードの打鍵音(ASMR)
    何も入力することはないのに、Enterキーを「ッターン!」と強めに叩きます。周囲に「私は働いていますよ」という音の信号を送るためです。実際には、空白のセルを削除しただけです。
  3. トイレという聖域
    1時間に1回、トイレに立ちます。個室に入り、深呼吸をして、スマホでニュースを見ます。でも5分以上いるとサボっていると思われるので、席に戻ります。

​この「エア作業」は、通常の業務の何倍も疲れます。

なぜなら、常に「誰かに見られているかもしれない」という緊張感があるからです。背後を誰かが通るたびに、反射的に「Alt + Tab」キーを押して画面を切り替える。何も悪いことはしていないのに、まるで犯罪者のような気分になります。

​周りの営業マンは「忙しい、忙しい!」と電話をし、走り回っています。

「お疲れ様です!」と声をかけられるたびに、心がキュッと縮こまります。

「私はここにいる意味があるのか?」

「このまま歳をとって、何のスキルも身につかないまま、私の市場価値はゼロになるんじゃないか?」

​この問いが脳内を支配し、やがて強烈な自己否定と無気力に襲われました。

夜は眠れなくなり、朝起きると吐き気がする。

過労ではありません。「無為(何もしないこと)」への強制参加が、私のメンタルを完全に破壊(ボアアウト)したのです。

​なぜ日本で「社内ニート」が量産されるのか?

​なぜ、やる気のある人間がこんな目に遭うのでしょうか。

原因は、本人の能力不足ではありません。むしろ逆です。能力があるからこそ、仕事が早く終わってしまうのです。

​本当の原因は、日本特有の「フルタイム正社員信仰」という構造的な欠陥にあります。

​日本の経営者は、会社が少し軌道に乗ると、すぐに「総務の女の子」を正社員で雇おうとします。

「家族的な経営」「安定雇用を提供するのが社長の務め」。その考え自体は素晴らしいものです。否定はしません。

​しかし、冷静に業務量を計算してみてください。

スタートアップや従業員50人以下の中小企業のバックオフィス業務は、実は「週40時間(1日8時間×5日)も仕事がない」ことがほとんどです。

今の便利なSaaS(クラウドツール)やAIを使えば、経理・労務・総務のルーチンワークなんて、週に10〜15時間もあれば終わってしまいます。

​ここに悲劇のミスマッチが生まれます。

「週10時間しか仕事がない場所に、週40時間の枠で人を閉じ込める」

​結果、社員はどうするか。

残りの30時間を埋めるために、わざとゆっくり仕事をしたり、無意味な「謎ルール」や「過剰な承認フロー」を作ったりします。

いわゆる「仕事を創る(メイクワーク)」です。

​「そのハンコ、本当に必要ですか?」

「その日報、誰が読んでるんですか?」

「なぜPDFを印刷して、またスキャンしているんですか?」

​社内に蔓延するその非効率な作業は、実は社員がボアアウトしないために、無意識に作り出した「時間潰しのためのクッション」なのかもしれません。

経営者が「効率化しろ」と叫べば叫ぶほど、現場は「効率化したら自分の仕事がなくなる(暇になる)」と恐れ、抵抗します。これがDXが進まない真の理由です。

​アメリカで主流になりつつある「フラクショナル」という解

​合理的なアメリカのビジネス界では、この問題に対する解が既に出ています。

それが「フラクショナル(Fractional)ハイヤリング」です。

​Fractionalとは「断片」「一部」という意味です。

考え方は非常にシンプルです。

「週10時間分しか仕事がないなら、週10時間分のプロを雇えばいい」

​優秀なCFO(最高財務責任者)やCHRO(最高人事責任者)クラスの人材が、1つの会社にフルタイムで縛られるのではなく、「月曜はA社、火曜はB社」というように、複数の会社の「カケラ(Fraction)」として働きます。

​これなら、企業側はフルタイムの高い人件費(社会保険料含む)を払わずに済みます。

働く側も「暇な時間」がなくなり、常に複数の会社の刺激的な課題に向き合えます。

「暇疲れ」でメンタルを病むこともありません。

双方にとってWin-Winで、精神衛生上も極めて健全なモデルです。

​日本でも、「副業解禁」や「フリーランス活用」という言葉で少しずつ広まっていますが、まだまだ「正社員で囲い込むのが正義」という空気は消えません。

しかし、少子高齢化で労働人口が減る中、一人の人間を「暇な時間」も含めて抱え込む余裕は、日本企業にはもうないはずです。

​「雇わない」ことこそが、最大の敬意かもしれない

​優秀なバックオフィス担当者を、オフィスの椅子に縛り付け、「飼い殺し」にして、才能を腐らせてしまうこと。

これこそが、現代における最大の経営リスクです。

​もし経営者の方がこの記事を読んでいて、

「せっかく雇った事務員さんが、最近元気がない」

「すぐに辞めてしまう」

と感じているなら、それは職場がブラック(過重労働)だからではなく、ホワイトすぎて(暇すぎて)退屈地獄になっている可能性があります。

​そして、今まさに「Excel演技」をしている担当者の方。

あなたは悪くありません。

悪いのは、あなたをその時間に閉じ込めている「箱(契約形態)」のサイズが合っていないだけです。

​「うしろぽっけ」は、御社の「最高のカケラ」になります

​だからこそ、提案させてください。

無理にフルタイムの人を雇って、不幸な「ボアアウト」を生み出すのはやめましょう。

​その代わりに、私たち「うしろぽっけ」を使ってください。

​私たちは、御社が必要な「忙しい瞬間(月末の請求処理、入退社の手続き、繁忙期の整理)」だけ、全力で働きます。

仕事がない時は、費用も発生しませんし、誰も暇なフリをして苦しむ必要もありません。

「必要な時に、必要な分だけ、プロの仕事を提供する」

​これは、単なる「外注」や「コスト削減」ではありません。

働く人の人生の時間(Time)と、企業の資源(Resource)を、互いに尊重し合うための、最も進んだ「契約のカタチ」です。

​「正社員を雇うのが怖い」のではなく、「正社員を不幸にするのが怖い」経営者様。

そして、「毎日仕事をしているフリをするのに疲れた」現場の担当者様。

​まずは、今の業務量が本当に「週40時間分」あるのか。

私たちと一緒に、棚卸し(計算)してみませんか?

人を雇う前に
一度立ち止まってください。
その業務、「ひとり分」ありますか?
まずは業務量の「診断」から。

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