朝7時30分。スマホのアラームを止める。
窓の外は雨。
この瞬間、私の脳内では高度な政治的駆け引きが始まります。
「今日は雨か…。電車、遅れそうだな」
「特に来客の予定はない。社内ミーティングが2本だけ」
「よし、チャットを送ろう。『本日は悪天候のため、業務効率を考慮しリモートワークとさせていただきます』」
送信ボタンを押す時の、あの「申し訳なさ)は何なんでしょうか。
サボるわけじゃない。むしろ家の方が集中できる。モニターも2枚あるし、静かだし、通勤の往復2時間があれば残務も片付く。合理的判断のはずです。
それなのに、「楽をしている」と思われるのではないかという恐怖。
そして、上司から返ってくる「了解(スタンプのみ)」という反応の裏にある、「まあ、いいんだけどね…」という無言の圧力。
今回は、日本の多くの企業で起きている「出社回帰 vs リモート死守」の冷戦について。
そして、正論で「出社しろ」と言われた瞬間に、社員の心がどうやって死んでいくかという、経営層にはあまり聞かせたくない生々しい話をします。
会社は間違っていない。「契約」という正論の壁
まず、残酷な現実を直視しましょう。
私たち従業員の雇用契約書には、恐らくこう書いてあります。
「就業場所:本社、および会社が指定する場所」
どこを探しても「フルリモートワークを権利として認める」なんて一文はありません。
つまり、法的に見れば、会社側には「明日から毎日出社しなさい」と命令する権利が100%あります。
「コロナ禍は緊急避難措置でした。もう終わったので戻ってください」と言われたら、私たちに反論の余地はないのです。
経営層にも言い分はあります。
「高い家賃を払ってオフィスを借りている」
「顔を合わせないと生まれないアイデアがある(セレンディピティ)」
「新人の顔色がチャットじゃわからない」
これらは全部、嘘偽りない真実ですし、経営判断として間違ってはいません。
しかし。
「契約だから」「ルールだから」という正論を振りかざした瞬間、失うものがあります。
それが、目に見えない資産である「エンゲージメント(やる気・帰属意識)」です。
ある雨の日の出社で感じた「強烈な虚無感」
私が以前働いていた現場での話です。
トップダウンで「原則出社」のお達しが出ました。
「週3回は顔を合わせよう。それがチームワークだ」と。
私は従いました。契約ですから。
雨の中、満員電車に揺られ、濡れた靴下でオフィスに入り、「おはようございます」と挨拶をして席に着きました。
そこで何が起きたか。
フロアにいる全員が、ノイズキャンセリングイヤホンをして、PC画面に向かって黙々と作業をしているのです。
隣の席の同僚と話すのも、Slack(チャット)です。
午後からの会議は、出社していない取引先や、別拠点のメンバーと繋ぐため、結局「自分の席でZoom」でした。
私は思いました。
「…これ、ここにいる意味ある?」
この移動時間は何だったのか。
この不快な湿気は何なのか。
結局、画面の中の人と喋っているじゃないか。
その瞬間、私の中で何かがプツンと切れました。
「わかりました。出社しますよ。言われた通り、ここに座っていますよ。でも、それ以上のことはしませんからね」
これが、いわゆる「静かなる退職(Quiet Quitting)」の始まりでした。
体はオフィスにあるけれど、心は完全にシャッターを下ろしている。
「言われたことだけやります。余計な提案もしません。だって、私の合理的な提案(リモートの方が効率が良い)は無視されたんですから」
経営層が「顔を合わせれば熱量が生まれる」と信じているその場所で、実際には「やらされ仕事の冷たい空気」が充満している。このギャップこそが、現代のオフィスの悲劇です。
「管理したい」上司と、「信頼されたい」部下
なぜ、こんなにもすれ違うのでしょうか。
結局のところ、問題の根っこにあるのは「信頼」の欠如です。
「出社させたい」という心理の裏側には、少なからず「目の届かないところでサボるんじゃないか」という疑念があります。
一方、部下は「成果を出しているんだから、働き方くらい自分で選ばせてくれ」と思っています。
「プロとして信頼されていない」と感じることほど、モチベーションを下げるものはありません。
もちろん、フルリモートだとサボる社員がいるのも事実です。
コミュニケーションが希薄になり、メンタル不調に気づけないリスクもあります。
だからこそ、「完全出社」か「完全リモート」かの二元論ではなく、「選べる」ことが重要なのです。
「今日は集中したいから家で」
「明日はブレストしたいから会社で」
「来週は郵便物の整理があるから出社で」
この「自己決定権」があるだけで、エンゲージメントは劇的に変わります。
「会社に行かされている」のではなく、「仕事のために会社に行くことを選んだ」と思えるからです。
それでも出社しなければならない「物理的な鎖」
精神論だけでは解決しません。
私たちが「出社したくない」と思う時、そこには必ず「出社しないとできない、しょうもない業務」が存在しています。
- 紙の請求書
「PDFで送って」と言えずに、紙で届く封筒を開けるためだけに出社する。 - ハンコのリレー
電子契約を導入しているのに、社内稟議だけはなぜかハンコが必要。 - 代表電話
「お世話になっております」と言うためだけに、誰かが当番で残る。 - 謎の共有ファイル
会社のサーバーにしか入っていないデータがあり、VPNも繋がりにくい。
これらの「物理的な鎖」が、私たちをオフィスに縛り付けます。
そして、「こんな作業のために出社しているのか」という虚しさを増幅させます。
「うしろぽっけ」が、鎖を断ち切ります
会社の方針として「出社推奨」を変えるのは難しいかもしれません。
社長に「時代遅れです」と噛み付くのもリスクが高いでしょう。
でも、「出社しないとできない作業」を減らすことなら、業務改善として提案できるはずです。
私たち「うしろぽっけ」は、リモートとオフィスの間にある「物理的な鎖」を断ち切るお手伝いをします。
- 郵便物は私たちが受け取ります
クラウド上で中身を確認できるようにします。 - 電話番も引き受けます
必要な要件だけをチャットで通知します。 - 「あれどこ?」をなくします
どこにいても必要な資料に5秒でアクセスできるフォルダ構成を作ります。
「出社しろ」と言われても、「はい、今日はチームで議論したいので行きます!」と前向きに言える環境を作る。
それは、「行かなきゃいけない理由(雑務)」を消すことから始まります。
「言えない不満」を溜め込む前に
「契約だから出社しろ」という正論は、正しいけれど、人を傷つけます。
そして傷ついた人は、何も言わずに去っていきます。
もし今、あなたが
「会社には行っているけど、心は死んでいる」
「リモートならもっと成果が出せるのに、言い出せない」
そんなモヤモヤを抱えているなら。
あるいは、経営者・管理者として
「出社させたいけど、社員の空気が悪い気がする」
と悩んでいるなら。
一度、私たちにお話を聞かせてください。
感情論ではなく、「仕組み」で解決できることがきっとあります。
「会社に行きたくない」は
甘えではありません。
古い仕組みへの「NO」のサインです。
そのモヤモヤ吐き出してみませんか?
こっそり相談する