​「また余計なことを…」社長の号令で現場が凍りついた日。システム導入がデジタル廃墟になる本当の理由と私たちが犯した失敗

​「来月から、日報はすべてこの新しいクラウドツールに入力してください。これまでのExcelは廃止です。これで全社の動きがリアルタイムに見えるようになります」

​数年前、あるプロジェクトのキックオフ会議で、その言葉が放たれた瞬間のことを今でも鮮明に覚えています。

会議室の空気が、シンと静まり返りました。

経営層は「これで会社が進化する」と目を輝かせていましたが、対面に座る現場のベテラン社員たちは、無表情で手元の資料を見つめているだけ。あるいは、小さく溜め息をついて、隣の同僚と目配せをする。

​その時の私は、まだその沈黙の意味を本当には理解していませんでした。

「まあ、最初は面倒くさがるかもしれないけど、便利なんだからすぐ慣れるだろう」

「マニュアルも作ったし、説明会もやったし、準備は完璧だ」

​そう思っていました。浅はかでした。

結果から言えば、そのプロジェクトは大失敗に終わりました。

​今回は、教科書的な「導入成功の秘訣」ではありません。私自身が過去に体験した「理論上は完璧だったはずの施策が、なぜ現場で総スカンを食らったのか」という失敗談と、そこから学んだ「本当に必要な泥臭い解決策」について、恥を忍んで書きたいと思います。

目次

​誰もログインしない「最新のツール」

​その時に導入したのは、いわゆるSFA(営業支援システム)でした。

目的は明確でした。個々の営業マンが属人的に持っている顧客情報を共有し、会社の資産にする。経営層からすれば、これほど正しく、必要な投資はありません。

​しかし、導入から1ヶ月後、管理画面を開いた私は青ざめました。

データが、スカスカだったのです。

​ログイン履歴を見ると、多くの社員が最初の1週間で止まっている。入力されている情報も「訪問しました」「検討中です」といった、何の意味もない定型文ばかり。

現場のリーダーに話を聞きに行くと、彼は申し訳無さそうに、でも少し苛立った様子でこう言いました。

​「いや、言いたいことはわかるんだけどさ。俺たち、日中はお客さんのところ回って、帰ってきたら見積書作って、明日の提案の準備してるんだよ。その上、よくわからない画面を開いて、ポチポチ入力しろって? そんな暇があったら一件でも電話かけるよ」

​さらに最悪なことが起きていました。

現場では、廃止したはずの「自分たちだけのExcel管理表」が復活していたのです。

「システムは使いにくいから、とりあえずいつものExcelでまとめておいて、月末にまとめてシステムにコピペすればいいや」

​こうして、「現場のExcel」と「経営層のシステム」という二重管理が発生しました。業務効率化どころか、現場の工数は倍になり、システムに入っているのは鮮度の落ちた死んだデータだけ。

高いライセンス料を払って導入した最新ツールは、誰にも顧みられない「デジタルの廃墟」と化したのです。

​なぜ「ショート」したのか? 経営と現場の正義の衝突

​この失敗の原因は、ツールの機能不足でも、現場のITリテラシーの低さでもありませんでした。

最大の原因は、経営の「ロジック(論理)」と現場の「エモーション(感情)」のショートです。

​あの時の私は、そして多くの経営層は、こう考えがちです。

  • ​全体最適のためには、多少の手間は仕方ない。
  • ​慣れれば絶対に便利になる。
  • ​給料をもらっているんだから、指示には従うべきだ。

​これは「経営の正義」としては100点です。

しかし、現場には現場の「正義」があります。

  • 「リズム」を乱されたくない: 現場には、長年培ってきた「この手順でやればミスなく早く終わる」という心地よいリズムがあります。新しいツールの導入は、そのリズムを強制的に断ち切る異物でしかありません。
  • 「やらされ仕事」への反発: 「上の人が勝手に決めた」「俺たちの苦労も知らないで」という感情は、想像以上に強力なブレーキになります。人は、理屈で納得しても、感情で納得しなければ動きません。
  • 恐怖心: 「このツールを入れることで、自分の仕事が監視されるのではないか」「自分の価値が下がるのではないか」という無意識の恐怖も、変化を拒む大きな要因です。

​私は、「便利な道具さえ渡せば喜んで使うはずだ」と傲慢にも思い込んでいました。

現場が抱える「忙しさ」という物理的な痛みや、「変えたくない」という心理的な痛みに、寄り添うことをサボっていたのです。

​必要なのは「説明」ではなく「翻訳」と「整地」

​では、どうすればよかったのでしょうか?

過去の自分にアドバイスをするなら、私はこう言います。

「マニュアルを配って終わりにするな。現場の隣に座って、一緒に泥をかぶれ」と。

​トップダウンの指示と現場の実情、この間にある深い溝を埋めるには、以下の3つの泥臭いプロセスが絶対に不可欠でした。

​1. 経営の言葉を「現場のメリット」に翻訳する

​「全社のデータを統合するために」と言われても、現場はピンときません。「それは社長が嬉しいことですよね?」で終わりです。

そうではなく、

「このツールを使うと、今まで1時間かかっていた来月の売上予測レポートが、ボタン一発で出るようになります。空いた1時間で、早く帰りましょう

というように、現場個人の具体的なメリット(特に「楽になる」こと)に翻訳して伝える必要がありました。

​2. 「面倒くさい」を物理的に引き取る(整地作業)

​新しいことを始める時、一番エネルギーを使うのは「初動」です。

アカウント設定、プロフィールの入力、顧客データの移行…。これらを「各自やっておいて」と丸投げした時点で、プロジェクトは失敗します。

「面倒な初期設定とデータ移行は、全部こちらでやっておきました。皆さんは明日から、このボタンを押すだけでいい状態になっています」

そこまでお膳立て(整地)をして初めて、現場は重い腰を上げてくれます。

​3. エラーが出た瞬間に駆けつける「伴走」

​導入直後は必ずトラブルが起きます。「ログインできない」「変なエラーが出た」。

この時、「マニュアルの3ページを見てください」と突き放すと、現場の心は完全に折れます。

「あ、すみません! 私が見ますね。…なるほど、ここはこうすれば大丈夫です」

そうやって、エラーが出た瞬間に横から助け舟を出す。その安心感があって初めて、現場は新しいツールを受け入れてくれます。

​社内に「その役」ができる人はいますか?

​ここまで読んで、「それが大事なのはわかるけど、誰がやるんだ?」と思われたかもしれません。

経営者自らが現場の隣に座り続けるわけにはいきません。かといって、総務や経理の担当者も自分の業務で手一杯です。

しかも、社内の人間関係があるからこそ、「あの人が言うなら…」となりにくい場合もあれば、「あいつは管理側の人間だ」と壁を作られることもあります。

だからこそ、私たち「うしろぽっけ」のような存在が役に立ちます。

​私たちは、コンサルタントのように上から指示を出す存在ではありません。

経営層が見ている「理想の未来」と、現場が抱えている「現実の泥臭さ」。その両方を理解し、ショートしないように配線を繋ぎ直す「実務の翻訳者」です。

  • ​経営層の「やりたい」を実現するために、現場に何をどう頼めば角が立たないか、指示の出し方を設計します。
  • ​「システム会社のマニュアルは難しくて読めない」という現場のために、イラストたっぷりの「これだけ見ればOKシート」を作成します。
  • ​新しいフローが定着するまで、現場からの「これどうやるの?」という質問を、担当者に代わって私たちが引き受けます。

​私たちが目指すのは、デザインはかわいくポップですが、やることは徹底的に実務的で、泥臭いサポートです。

「うしろぽっけさんが間に入ってくれたおかげで、なんかスムーズに進んだね」

そう言われる黒子(くろこ)のような存在でありたいと思っています。

​まずは、詰まっている箇所の「愚痴」から

​もし今、御社で

「トップダウンで決めたことが、現場で止まっている」

「良かれと思って導入したツールが、お荷物になっている」

「経営と現場の間に、冷たい空気が流れている」

そんな状況があるなら、一度私たちにお話を聞かせてください。

​いきなり「改革しましょう!」なんて言いません。

まずは、「どこでボタンの掛け違いが起きたのか」「現場は何に一番ストレスを感じているのか」。

そんな、社内の人には言いにくい愚痴や悩みを吐き出すところから始めましょう。

​絡まった糸を、無理に引っ張らず、一本一本丁寧にほどいていく。

そんなお手伝いができる日を待っています。

社内の調整でお疲れではありませんか?
まずは「今、困っていること」を
そのまま教えてください。

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