「体がもう一つあればいいのに」
電話を取りながらチャットを返し、山積みの書類を横目に時計を見る。繁忙期のオフィスで、誰もが一度は願うことではないでしょうか。
でも現実には、自分は一人しかいません。
人を雇う予算もなければ、そもそも誰かに仕事を教えるための「引き継ぎマニュアル」を作る時間さえ取れないのが、現場のリアルな悩みだと思います。
そこで今回提案したいのが、月額約3,000円(20ドル)で雇える「文句を言わない新人」こと、ChatGPTのカスタム機能「GPTs(ジーピーティーズ)」です。
「AIなんて難しそう」と身構える必要はありません。
これは魔法の杖ではなく、単純に「あなたの業務メモを読み込ませて、あなたの代わりに考えさせる」ための実務ツールです。プログラミングの知識は一切不要。必要なのは、普段あなたがデスクで書き留めている「メモ書き」だけです。
私自身、エンジニアではありませんが、この「もう1人の自分」をデジタル上に作ることで、単純作業から解放され、精神的な余裕を少しだけ取り戻すことができました。
今のあなたの仕事をそのまま「分身」に任せるための、最も現実的で具体的な手順をお伝えします。
そもそも「GPTs」とは? 普通のChatGPTと何が違うの?
「ChatGPTならもう使っているよ」という方も多いかもしれません。
しかし、普段使っている無料版のChatGPTと、今回作成する「GPTs(自分専用AI)」には、決定的な違いがあります。
それは、「あなたの会社の事情(ローカルルール)」を知っているかどうかです。
普通のChatGPTは「超優秀な派遣スタッフ」
通常のChatGPTは、インターネット上のあらゆる知識を持っています。しかし、あなたの会社のことは何も知りません。
例えば「休暇申請の返信メールを書いて」と頼んでも、一般的なビジネスメールは返してくれますが、「うちは申請書を3日前に出すルールなんだけど…」といった内部事情までは考慮してくれません。
毎回、「私はこういう会社の総務で、就業規則はこうなっていて…」と説明するのは、非常に手間がかかります。
GPTsは「マニュアル完備の専属アシスタント」
一方でGPTsは、事前に「記憶」を持たせることができます。
「就業規則」や「過去のメール履歴」「自分がよく使う言い回し」などをあらかじめ読み込ませておくことで、何も言わなくても「いつものあの感じですね」と動いてくれるようになります。
- 指示出し不要
「これ返信して」だけで通じる。 - ブレない
毎回同じクオリティ、同じトーンで出力される。
この「文脈を理解している」という点こそが、単なる便利ツールではなく「もう1人の自分(分身)」と呼べる理由です。
準備するもの(これだけでOK)
この「分身」を作るために必要なものは、実はたったの2つだけです。特別なソフトも、ハイスペックなパソコンも必要ありません。
1. ChatGPT Plusアカウント(月額 約3,000円)
ここだけはコストがかかります。GPTsの作成と利用には、有料プラン(ChatGPT Plus)への加入が必須です。
月額20ドル(約3,000円前後)は、個人の出費としては安くありません。
しかし、「文句も言わず24時間働いてくれる優秀なアシスタント」を月3,000円で雇うと考えれば、これほどコストパフォーマンスの良い投資はないと私は割り切っています。まずは1ヶ月だけ試して、役に立たなければ解約するのも一つの手です。
2. 覚えさせたい「業務メモ」
これがAIの脳みそになります。
「立派なマニュアルなんてない」と諦める必要はありません。むしろ、AIに読ませるデータは形式ばった書類よりも、現場のリアルなメモの方が役に立ちます。
- メモ帳(.txt)
「電話が来たらまず聞くことリスト」などの箇条書き。 - 過去のメール
自分が送信したメールの中で「これはうまく書けた」と思うものをコピペしたもの。 - PDF/Word
もしあれば、社内規定や就業規則などのファイル。
これらをパソコンのフォルダにまとめておくだけで、準備は完了です。
うしろのポケットに無造作に突っ込んであった「走り書きのメモ」こそが、最強の教材になります。
【実践】3ステップで終わるGPTsの作り方
ここからは実際の作成手順です。
画面はすべて英語ですが、押す場所は決まっているので安心してください。まるで「スマホの連絡先登録」をするような感覚で設定できます。
手順1:作成画面を開く
ChatGPTの画面左上にあるメニューから「Explore GPTs(GPTを探す)」をクリックし、さらに右上の「Create(作成)」ボタンを押します。
すると画面が左右に分割されます。
- 左側
設定を作る場所(Create / Configure) - 右側
プレビュー画面(設定したAIをテストする場所)
この「左側」を使って作業を進めます。
手順2:マニュアルを渡す(ここが最重要!)
左上のタブを「Create」から「Configure(設定)」に切り替えてください。ここがAIの「脳みそ」を作る場所です。
下の方にスクロールすると、「Knowledge(知識)」という項目があり、「Upload files」というボタンがあります。
ここをクリックして、準備しておいた「業務メモ(テキストやPDF)」を選択し、アップロードします。
これだけで、AIはこのファイルを「自分の記憶」として認識します。
手順3:AIにキャラ設定をする
同じく「Configure」画面の上部に、「Instructions(指示書)」という大きな入力欄があります。
ここに、このAIの「性格」と「役割」を入力します。日本語で大丈夫です。
【入力例】
あなたは、勤続10年のベテラン総務担当者です。
アップロードされた「Knowledge(社内規定)」に基づいて、社員からの問い合わせに答えてください。
- トーン: 丁寧かつ、簡潔に。
- ルール: 規定に載っていないことは「判断できません」と答えてください。勝手に創作しないでください。
入力が終わったら、右上の「Save(保存)」ボタン(またはUpdate)を押し、「Only me(自分のみ)」を選んで保存します。
これで、あなただけの「分身」の完成です。
実際に使ってみた(Before / After)
作ったばかりの「総務AI」に、実際に仕事を投げてみました。
Before(これまでの私)
社員から「慶弔休暇って何日もらえるんでしたっけ?」とチャットが来る。
↓
- ファイルサーバーの奥底にある「就業規則.pdf」を開く。
- 「慶弔」で検索をかける。
- 該当ページを目視で確認する。
- 「親等によりますが、1〜3日です。詳しくは添付の…」と手打ちで返信する。
所要時間:約5分(+集中力が切れるストレス)
After(GPTs導入後)
GPTsのチャット欄に、社員からの質問をコピペして投げるだけ。
「慶弔休暇について聞かれた。返信書いて」
↓
AIの回答:
「お疲れ様です。就業規則 第X条に基づき、以下の通り回答案を作成しました。
お問い合わせありがとうございます。
慶弔休暇の日数は、対象となる方との続柄により異なります。
- 配偶者・子・父母:○日
- 祖父母・兄弟姉妹:○日
申請の際は、勤怠システムより『休暇届(慶弔)』を選択してください。
よろしくお願いいたします。」
所要時間:10秒(コピーして貼るだけ)
まとめ:楽をするためではなく、「あなたにしかできない仕事」をするために
「AIに仕事を任せるなんて、手抜きじゃないか?」
そんなふうに、真面目な人ほど罪悪感を感じてしまうかもしれません。
でも、私はこう思います。
定型文の作成や、マニュアルの確認といった「誰がやっても正解が同じ作業」で、あなたの貴重な脳のメモリを使い切ってしまうことの方が、プロとしてはもったいないことではないでしょうか。
「冷たい作業(事務処理)」は、もう1人の自分(AI)に任せる。
そして空いた時間と心の余裕で、目の前の相手に「温かい言葉」をかける。
これこそが、私たちバックオフィス担当者が本来やりたかった仕事のはずです。
いきなり課金するのが不安な方は、まずは無料版のChatGPTで「壁打ち」をするだけでも十分効果があります。
そしてもし「おっ、こいつ意外と使えるな」と思ったら、ぜひ月額3,000円の投資をして、あなただけの専属アシスタントを育ててみてください。
今日のその小さな設定(種まき)が、半年後のあなたを確実に救ってくれるはずです。
「記事を読んでみたけど、
やっぱり設定は難しそう…」
「そもそも、私のどの業務を
AIに任せればいい?」
そんな時は、無理にひとりで
頑張ろうとせず
うしろぽっけに声をかけてください。
あなたの仕事の愚痴を聞きながら、
一緒に「もう1人の自分」を作る
お手伝いをします。
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