なぜ私たちは「中抜き」され続けるのか。SESというビジネスの正体
序章で触れた「ピンハネされている感覚」。
これを単なる「会社の強欲さ」で片付けてしまうと、本質が見えなくなります。
なぜクライアントは、私たち個人ではなく「会社」にお金を払うのか。そして、なぜ会社は右から左へ人を流すだけで、これほどのマージンを取れるのか。
まずは敵(現状の構造)を知ることから始めましょう。
1. 私たちは「労働力」という名のサブスク商品
厳しい言い方になりますが、客先常駐(SESや派遣)というビジネスモデルにおいて、私たちエンジニアは「成果物を納品するプロフェッショナル」として契約されていません。
私たちは「時間単位で貸し出される労働リソース」として契約されています。
クライアントが支払っているのは「技術への対価」というよりは、「1ヶ月間、席に座って稼働してくれる権利(人月単価)」です。
会社側から見れば、私たちは「仕入れ商品」であり、クライアントへ提供する「サブスクリプションサービス」です。
商品が現場でどれだけ素晴らしいコードを書こうが、逆に最低限の仕事しかしなかろうが、契約時間が同じなら、会社の売上は変わりません。
管理者が「進捗どう?」としか聞かない理由はここにあります。
彼らにとって重要なのは、「商品が故障(欠勤・トラブル)せず、契約通りに稼働しているか」。
極論を言えば、それだけだからです。
2. 「中抜き」の正体は何か
では、クライアントから支払われる単価(例えば80万円)と、私の手取り(例えば30万円)の差額はどこへ消えているのか。
「中抜き」の内訳を冷静に見てみます。
一般的に、会社側が取るマージン(粗利)は単価の30%〜40%と言われています。
この中には以下の経費が含まれています。
- 社会保険料の会社負担分(これが意外と大きい)
- 販管費(オフィスの家賃、総務・経理の人件費、採用コスト)
- 営業コスト(次の案件を取ってくる人の給料)
- 待機リスクへの保険(案件がない期間の給料保証)
- 会社の純利益
こうしてリスト化すると、「会社もいろいろ負担しているんだな」と一瞬思います。
しかし、ここで「あなたたちの会社は個人事業主の集まりだね」という言葉が効いてきます。
本来、企業がマージンを取る正当な理由は「組織としての付加価値」がある場合だけです。
- ベテランが若手をフォローする体制がある
- 社内に技術ノウハウが蓄積されており、困った時に助け合える
- 組織的な研修でスキルアップさせてくれる
もし、あなたの会社がこれらを提供せず、「現場のことは現場でなんとかして」というスタンスなら?
上記のマージンの大半は、ただの「場所代(ショバ代)」ということになります。
私たちは、本来払う必要のない「高額な通行料」を払って、客先という現場に通っていることになります。
3. スキルが上がるほど「損」をする仕組み
このビジネスモデルの最大の欠陥は「個人の成長が、会社の利益に直結しにくい」点にあります。
あなたが現場で努力し、スキルアップして、クライアントからの信頼を勝ち取ったとします。
すると、クライアントは「単価を上げてもいいから、ぜひ延長してほしい」と言ってくれるかもしれません。
しかし、所属会社はどう動くでしょうか。
単価が上がった分を、そのまま給与に反映してくれる会社は稀です。
多くの会社は、給与テーブルや評価制度を盾に、昇給を数千円〜数万円程度に抑えようとします。
なぜなら、会社にとって一番利益率が良いのは、
「そこそこの給料で、文句を言わずに長く稼働してくれる社員」だからです。
突出して優秀になり、市場価値が上がってしまった社員は、会社にとって「扱いづらいコスト」になりかねません。「給料をもっと上げろ」と言い出すか、あるいは「独立する」と言い出して辞めてしまうからです。
4. 「管理者」があなたを知らない理由
「誰ですか、あなたは?」と感じる管理者との面談。
これも構造上、必然的に起こります。
多くのSES企業では、管理者(営業やリーダー)一人あたり、数十人のエンジニアを担当しています。
彼らは技術者ではないことが多く、現場の具体的な業務内容(Javaのバージョンがどうとか、AWSの構成がどうとか)を理解できません。
彼らのミッションは「エンジニアのケア」という名目の「離職防止」です。
「悩みはない?」と聞くのは、問題を解決したいからではなく、「辞めそうかどうかのフラグ」を確認したいからです。
だから、会話が噛み合わないのです。
あなたは「仕事の中身(技術・キャリア)」の話をしたい。
相手は「契約の継続(稼働・定着)」の話しかしていない。
見ているレイヤーが最初からズレているのです。
5. 「守られている」という幻想を捨てる
ここまで読んで、「でも、正社員なら雇用が守られているし…」と思うかもしれません。
確かに、明日から急に仕事がなくなっても、給料がゼロになることはありません。それが正社員の最大のメリットです。
しかし、その「安心感」のために、毎月20万も30万も払い続ける価値があるのでしょうか?
年間で考えれば、数百万円の差額になります。
もしその数百万円が自分の手元にあったら?
自分で貯金して「自前の失業保険」を作ったほうが、よほど合理的ではないでしょうか。
クライアントから「個人事業主の集まり」と見抜かれている時点で、会社という「看板」の効力は切れています。
私たちはもう、精神的にはとっくにフリーランスなのです。
あとは、この「構造」から抜け出すための、実務的な手続きが残っているだけです。
会社が求める「帰属意識」という名の茶番劇
なぜ、現場を見ていない会社に限って「帰属意識」を連呼するのか。
その背景には、経営側の切実な、しかし私たちには無関係な事情があります。
1. 「目標設定」がどうしても形骸化する理由
半期に一度、Excelや専用システムに入力させられる「目標設定シート」。
多くの客先常駐エンジニアにとって、これほど筆が止まる時間はありません。
なぜなら、「本来の業務(現場の仕事)」と「会社が評価したい軸」が完全にズレているからです。
現場でのあなたのミッションは明確です。「高品質なコードを書くこと」「システムを安定稼働させること」「クライアントの要望を叶えること」。
しかし、所属会社の評価シートには、こんな項目が並んでいないでしょうか。
- 自社イベントへの参加率
- 後輩社員の育成・メンター活動
- 社内ブログの執筆数
- 帰社日での発言頻度
現場でどれだけ難易度の高いバグを修正しても、所属会社の管理者にはその凄さが伝わりません。成果物を見せることができない(守秘義務)からです。
その結果、管理者は「目に見える数字」でしか評価できなくなります。それが「イベント参加」や「資格取得」といった、現場業務とは無関係の課外活動です。
私たちは評価されるために、現場の仕事で疲れた頭を振り絞り、「嘘ではないが、心からの本音でもない目標」を作文することになります。
この「作文」に費やす労力と時間は、あなたのエンジニアとしての成長に、1ミリでも寄与しているでしょうか。
2. 「帰属意識」とは、離職防止のためのコスト削減策
「もっと会社に興味を持って」「チームの一員としての自覚を」
そう諭されるたびに感じる違和感。その正体は、会社が求める帰属意識が「愛社精神」ではなく「解約防止(Churn Prevention)」だからです。
第1章で触れた通り、会社にとってエンジニアは「サブスク商品」です。
最も恐れるのは、商品が勝手に解約(退職)すること。
しかし、給与アップや待遇改善にはコストがかかります。
そこで持ち出されるのが「帰属意識」という概念です。
「仲間意識」や「情」で繋ぎ止めておけば、多少給料が安くても、現場が辛くても、辞めずにいてくれるかもしれない。経営側からすれば、コストをかけずに定着率を上げるための最も効率的な施策、それが「帰属意識の醸成」なのです。
飲み会、帰社日、社内報。
これらはすべて、あなたを「フリーランスとして独立させないための楔(くさび)」である可能性があります。
もし会社が本当にあなたを大切に思っているなら、精神的な繋がりを求める前に、まずはマージン率を下げて還元するか、現場の環境改善に動くはずです。
3. 「誰ですか?」と言いたくなる上司・同僚
「チームで働く」こと自体は素晴らしいことです。
しかし、SESにおける「チーム」は、歪な構造をしています。
現場には、毎日顔を合わせ、苦楽を共にする「他社のエンジニア」や「クライアントの担当者」がいます。実質的な仲間は彼らです。
一方で、所属会社には「名前しか知らない同僚」や「年に数回しか会わない上司」がいます。
会社は、この「会わない人たち」との結束を強要します。
「今度入った新人の〇〇さんだから、仲良くしてあげて」と紹介されても、現場も違えば技術スタックも違う。共通言語がない相手と、表面的な会話をして「仲が良いふり」をする。
これはコミュニケーションではありません。ただの「感情労働(Emotional Labor)」です。
本来、技術キャッチアップや休息に充てるべきリソースを、この不毛な感情労働に割くことは、プロフェッショナルとして正しい姿なのでしょうか。
4. クライアントが見ているのは「個」の実力のみ
ここで視点を「クライアント」に戻しましょう。
冒頭の実体験にあった通り、クライアントは冷徹に見ています。
「御社は個人事業主の集まりだね」
この言葉は、ある意味で「あなた個人の実力は認めているが、会社のバックアップ体制には期待していない」という評価の裏返しでもあります。
クライアントにとって、あなたが所属会社の飲み会に参加したかどうか、社内目標を達成したかどうかは、どうでもいいことです。
彼らが求めているのは、「今のプロジェクトに貢献してくれるか」の一点のみ。
所属会社内での評価を上げようと努力すればするほど、現場(クライアントワーク)への集中力が削がれ、結果として「市場価値」が上がらないというジレンマに陥ります。
「社内政治が上手いだけのエンジニア」になっても、会社の看板が外れた瞬間、その価値はゼロになります。
5. その「形式上の従順」が、あなたの市場価値を殺す
会社の方針に従い、形式上の目標を設定し、なんとなく帰属しているフリをする。
それは「波風を立てない」という意味では、処世術として正しいのかもしれません。
しかし、その「事なかれ主義」が、あなたの*「ビジネス戦闘力」を徐々に奪っていることに気づくべきです。
- 自分の単価交渉を他人に委ねる癖がつく
- 自分のキャリアパスを会社の都合に合わせてしまう
- 「市場からどう見られるか」より「上司からどう見られるか」を気にしてしまう
これらはすべて、フリーランス(自律したプロ)として生きるために必要なマインドセットとは真逆のものです。
「管理者にピンハネされている」と嘆く前に、まず自問しなければなりません。
「私は、ピンハネされる代わりに、面倒な交渉やキャリア設計を会社に丸投げして、思考停止していないだろうか?」
もし、その「思考停止の対価」としてマージンを払っているのなら、それは適正価格と言えてしまいます。
しかし、もしあなたが「自分で考え、自分で選びたい」と願うなら、この「守られた(搾取された)鳥籠」から出る準備を始める時です。
「フリーランス」は天国か、荒野か。自由の代償として背負う「ひとり総務」の地獄
ここまで、会社という組織の理不尽さと、そこから搾取される構造について語ってきました。「もう会社なんて辞めてやる」という怒りのボルテージは最高潮に達しているかもしれません。
しかし、ここで冷や水を浴びせるようですが、一旦その怒りを冷蔵庫にしまってください。
感情任せに退職届を叩きつける前に、あなたがこれから足を踏み入れようとしている「フリーランス」という世界の、血も涙もない現実を直視する必要があります。
「中抜きがなくなるから年収が上がる」
「嫌な人間関係から解放される」
「好きな案件を選べる」
ネット上に溢れるこれらの甘い言葉は、半分は真実ですが、残りの半分は「生存バイアスのかかった嘘」です。
ここでは、キラキラした成功体験記には決して書かれない、独立したその日から始まる「地味で、孤独で、面倒くさい泥沼」について、徹底的に深掘りします。
1. マージン40%が買っていた「見えない防具」の正体
今まであなたが「高すぎる」「搾取だ」と呪っていたマージン(会社の取り分)。
仮に単価80万円で、給与が30万円だとしたら、差額の50万円。
この50万円は、単に経営者の懐に入っていたわけではありません。その一部は、あなたを社会的なリスクから守るための「超高額な保険料」だったのです。
会社を辞めた瞬間、このプロテクターが外れます。その痛みを具体的に想像してください。
①「国民健康保険」と「住民税」の暴力的な請求額
会社員の給与明細で天引きされているときは、あまり意識しなかった社会保険料。
会社はこれを「折半(半分負担)」してくれていました。
フリーランスになった翌年、ポストに届く納付書を見て、多くの人が膝から崩れ落ちます。
「えっ、今月の手取りからこんなに払うの?」
前年の年収に基づいた住民税と、上限のない国民健康保険料。これらが容赦なくキャッシュフローを圧迫します。しかも、会社員時代のように「毎月分割」ではなく、年に4回などの区切りで数十万円単位の支払いがドンと来ます。
会社という「防波堤」がなくなった瞬間、税金という津波が直接あなたの家計を襲うのです。
②「有給休暇」という概念の消滅
会社員なら、風邪で3日休んでも給料は変わりません。
しかし、フリーランス(準委任契約含む)は「日給月給」あるいは「時間精算」が基本です。
3日寝込めば、シンプルに3日分の売上が消えます。
インフルエンザにかかっただけで、数万円〜十数万円の損失確定です。
「休んだら金にならない」というプレッシャーは、想像以上に精神を蝕みます。
高熱があっても解熱剤を飲んで現場に行く。あるいは、休むために徹夜で前倒し作業をする。
そんな生活が待っています。今まで「有給」として会社が負担していたリスクは、すべてあなたの「体調管理」という自己責任に転嫁されます。
2. 月末月初の憂鬱。「ひとり経理」は深夜に泣く
「技術だけに集中したい」
そう思って独立したはずなのに、皮肉なことに、会社員時代よりも「技術以外の雑務」に時間を奪われることになります。
あなたは今日から、「株式会社自分」の経理担当です。
①請求書作成とインボイス制度の罠
月末、現場の業務が終わった後、疲れた体で請求書を作成します。
「請求書なんてExcelで一行書くだけでしょ?」と思っていませんか?
今は「インボイス制度」があります。登録番号の記載、消費税の端数計算の処理、適格請求書の要件を満たしているかの確認。
ミスがあれば、クライアントの経理担当から冷ややかな指摘メールが届きます。「〇〇さん、ここの税区分、間違ってますよ。再発行お願いします」。
現場でコードを書いている真っ最中に、この修正作業を求められるストレス。
②入金確認という精神的苦痛
「請求書を送ったら終わり」ではありません。
翌月や翌々月の支払日、通帳を記帳しに行かなければなりません。
もし、入金されていなかったら?
「あの、入金が確認できないのですが…」と、クライアントに督促の連絡を入れるのもあなたです。
金の催促をするというのは、非常に精神力を削られる行為です。
会社員なら、経理部が裏でやってくれていた「泥臭い集金業務」を、あなた自身がやらねばならないのです。
③確定申告という名の「年一回のデスマーチ」
そして極めつけは2月〜3月の確定申告。
日々の領収書整理をサボっていれば、この時期は地獄を見ます。
「経費になるのか、ならないのか」「減価償却とは何か」「青色申告控除の要件は…」
税務の知識ゼロから勉強し、会計ソフトと格闘する数十時間。
その時間働いていれば稼げたはずの売上(機会損失)を考えると、実は税理士を雇った方が安い場合もありますが、駆け出しにその余裕はありません。
3. 「社会的信用」の暴落。あなたはただの「住所不定の無職」かもしれない
会社を辞めて初めて気づくのが、「会社の看板」の威力です。
名刺にある「株式会社〇〇」というロゴマークは、あなたが思っている以上に、社会的なパスポートとして機能していました。
①賃貸審査に通らない
「今のワンルームが手狭になったから引っ越そう」
そう思って不動産屋に行くと、フリーランスになった途端、顔色が曇ります。
「個人事業主ですか…しかも独立して1年目…うーん…」
年収が会社員時代より増えていても関係ありません。大家や保証会社が見ているのは「収入の額」ではなく「安定性(属性)」です。
「いつ収入がゼロになるか分からない人」には、部屋を貸してくれません。
②クレジットカードが作れない、ローンが組めない
住宅ローンなんて夢のまた夢。新規のクレジットカードすら審査落ちすることがあります。
今まで当たり前に享受していた「信用社会」から、突然締め出される疎外感。
「俺は技術力があるんだ!」と叫んだところで、銀行の審査スコアリングシステムには届きません。
4. エージェントという「新たな管理者」と「中抜き」の再来
「直請け(クライアントと直接契約)」ができれば最高ですが、営業力のないエンジニアの多くは、結局「フリーランスエージェント」に頼ることになります。
ここで残酷な事実に気づきます。
「あれ? エージェントのマージンも結構高くない?」
エージェントのマージン相場は10%〜25%。
確かにSES企業の30〜40%よりは低いですが、それでも数十万円が毎月引かれます。
しかも、エージェントの担当者は、かつての会社の管理者以上にドライです。
彼らにとってあなたは「在庫」の一つ。売れなければ、連絡すら来なくなります。
「会社の中抜きが嫌で辞めたのに、結局エージェントに中抜きされている」
「しかも、正社員のような雇用保証も福利厚生もない」
これでは「リスクだけ背負って、マージンが少し減っただけ」という、割に合わない取引をしたことになります。
5. 「スキルの食い潰し」問題。誰もあなたを育ててくれない
会社員時代、現場で新しい技術に触れたり、先輩から教えてもらったりする機会がありました。
しかし、フリーランスとして契約されるとき、クライアントが求めているのは「即戦力」です。
「Pythonができる人」として契約されたら、来る日も来る日もPythonを書くだけです。
「やったことないけど、Go言語に挑戦させてください」という要望は、フリーランスには通りにくい。なぜなら、クライアントは「教育コスト」を払いたくないから外部に委託しているのだから。
その結果、どうなるか。
「今持っている手持ちのスキル(過去の遺産)」を切り売りし続けることになります。
3年後、5年後。
技術トレンドが変わった時、あなたの手元には「古くなった技術」しか残っていないかもしれません。
新しい技術をキャッチアップするための勉強時間は、すべて自分のプライベートな時間を削り、費用も自腹で捻出しなければなりません。
会社が提供してくれていた「研修」や「未経験技術へのチャレンジ機会」がいかに恵まれていたか、失って初めて気づくのです。
6. 孤独の種類が変わる。「誰ですか?」から「誰もいない」へ
序章で「所属会社の人間関係が希薄で孤独だ」と書きました。
しかし、フリーランスの孤独は、その質が違います。
会社員の孤独は「群衆の中の孤独」でした。周りに人はいるが、分かり合えない孤独。
フリーランスの孤独は、「荒野の孤独」です。
トラブルが起きた時、誰も守ってくれません。
契約解除を言い渡された時、誰も慰めてくれません。
病気になった時、誰も代わりに出勤してくれません。
「すべての責任は自分にある」
この言葉は、調子が良いときは「自由」という翼になりますが、調子が悪いときは「鉛」のように重くのしかかり、精神を押し潰します。
結論:それでもあなたは、荒野を行くか?
ここまで、脅しに近いレベルでネガティブな側面を書き連ねました。
しかし、これらはすべて紛れもない事実であり、独立した先達たちが血を流しながら学んだ教訓です。
もし、これらを読んでもなお、
「それでも、自分でハンドルを握りたい」
「面倒な経理も、不安定な未来も、全部ひっくるめて自分の人生として引き受けたい」
そう思えるなら、あなたは本物の「独立向き(E型)」の素質があります。
逆に、「うわ、面倒くさそう…やっぱり給料が振り込まれる方が楽かも」と少しでも思ったなら、それは恥ずかしいことではありません。
あなたは「組織の仕組みを利用する賢さ」を持っているということです。
その場合は、フリーランスになるのではなく、「より条件の良い会社(中抜きが少なく、還元率が高い会社)」へ転職することが、最適解かもしれません。
重要なのは、「なんとなく」で地獄への片道切符を買わないことです。
次は、この荒野を生き抜く覚悟を決めたあなたのために、会社に在籍している今のうちにやっておくべき「鉄壁の準備リスト」を授けます。
会社の信用、会社の福利厚生、会社のプリンター。使えるものは骨の髄までしゃぶり尽くしてから、辞表を出しましょう
会社を「使い倒して」辞めるための、鉄壁の「裏」準備リスト
先ほど、フリーランスという荒野の厳しさを直視しました。
それでもあなたの心が「独立」を求めているのなら、今すぐやるべきことは退職届を書くことではありません。
「会社員」という最強のカード(属性)を、期限切れになる前に使い切ることです。
多くの人が、退職した後に「あれをやっておけばよかった」と後悔します。
しかし、辞めてからでは取り返しがつかないものが多すぎます。
ここでは、感情的なしがらみは一旦横に置き、会社というシステムを「自分の創業支援ツール」として利用し尽くすための、具体的なTo-Doリストを提示します。
1. 「社会的信用(与信)」を現金化しておく
フリーランスになった瞬間、あなたの社会的信用(お金を借りる能力)は一時的に「ゼロ」になります。年収が倍になろうと、銀行のスコアリングにおける評価は「安定性なし」と判定されるからです。
会社員である今、この「信用」を物理的な資産や契約に変えておく必要があります。
① クレジットカードの作成・枠の増額
「今はカード持ってるから大丈夫」と思っていても、事業用にもう一枚必要になる場面が必ず来ます(経費管理のため)。
フリーランス1年目は、楽天カードのような比較的審査が通りやすいカードでさえ、落ちることがあります。
- 事業用カード
プライベートと分けるための1枚を新規作成する。 - 限度額の増枠
サーバー代、PC購入、広告費など、事業経費は意外と枠を圧迫します。今のうちに上限額を上げておきましょう。
② 住宅ローンの仮審査・借り換え
もし近いうちに家を買う予定があるなら、退職前がラストチャンスです。
フリーランスが住宅ローンを組むには、通常「3期分の黒字決算書」が必要です。つまり、最短でも独立して3年後まで家は買えなくなります。
不動産投資用のローンなども同様です。会社員の「源泉徴収票」は、銀行にとって水戸黄門の印籠のような威力を持ちます。これを使わない手はありません。
③ 賃貸契約の更新・引っ越し
引っ越しを考えているなら、在職中に済ませてください。
入居審査において、フリーランスは「保証会社」の審査で落とされるケースが多発します。
また、現在の住居の更新時期が近いなら、更新を済ませてから辞めるのが賢明です。
2. 体のメンテナンスを「会社の金」で済ませる
体が資本のフリーランスにとって、健康リスクは経営リスクそのものです。
しかし、国民健康保険には、会社員のような手厚い「付加給付」や「人間ドック補助」はありません。
① プレミアムな健康診断・人間ドック
会社の福利厚生で、少しグレードの高い健康診断や人間ドックが受けられるなら、退職直前に必ず受けてください。
胃カメラ、CT、MRI。自費で受ければ数万円〜十数万円かかります。
どこか悪いところがあるなら、保険証が「組合健保(協会けんぽ)」のうちに治療を開始してください。会社員の保険は、傷病手当金などのセーフティネットも最強です。
② 歯科検診と治療の完遂
「歯医者に行く時間がなくて…」と言っている場合ではありません。
独立直後の繁忙期に歯が痛くなれば、仕事が止まります。
虫歯の治療、親知らずの抜歯、クリーニング。これらをすべて「有給消化中」か「在職中の夜間」に終わらせておくこと。
これは立派な「設備投資」です。
3. 「有給休暇」は遊ぶためではなく、創業準備のためにある
退職前の有給消化。これを「卒業旅行」や「のんびりする時間」に使ってはいけません。
この期間は「給料をもらいながら、フルタイムで自分の事業準備ができるボーナスタイム」です。
① 開業届と青色申告承認申請書の準備
役所へ行く時間は、会社員時代はなかなか取れませんでした。有給期間中に、管轄の税務署へ行き、開業届を出してしまいましょう。
特に「青色申告承認申請書」は提出期限(開業から2ヶ月以内など)があり、出し忘れると最大65万円の控除(実質的な節税)をドブに捨てることになります。
② 事業用銀行口座の開設
屋号(ビジネスネーム)付きの銀行口座を作りたい場合、フリーランスになってからだと審査が厳しく、開設を断られる銀行もあります。
個人の口座であっても、事業用に新しく一つ開設しておくべきです。
ネット銀行(楽天銀行、住信SBIなど)や、地元の信用金庫など、用途に合わせて準備します。
③ ポートフォリオと職務経歴書の棚卸し
現場の業務から離れられるこの期間に、過去の実績(守秘義務に触れない範囲で)を整理します。
- どんな技術を使ってきたか(バージョンまで詳細に)
- どんな課題を、どう解決したか
- マネジメント経験の有無 これらをまとめた「スキルシート」の品質が、独立後の単価を数万円単位で左右します。
4. 現場(クライアント)との「綺麗な」別れ方
「どうせ辞める会社だから」といって、適当な引き継ぎをして現場を去るのは最悪の手です。
IT業界は狭いです。どこで誰が繋がっているか分かりません。
「あいつは最後、投げやりだった」という噂は、意外なほど早く回ります。
① 「立つ鳥跡を濁さず」が最強の営業活動
皮肉なことに、所属会社への不満を押し殺して、最後までプロとして完璧な引き継ぎを行うことが、将来のあなたを助けます。
現場の担当者や他社のエンジニアと連絡先(SNSや個人のメール)を交換できる関係性を築いておきましょう。
直接の引き抜きは契約上NGでも、数年後に「そういえば、あの時しっかりやってくれた〇〇さん、今フリーなんだっけ?」と声がかかるケースは山ほどあります。
信頼という「種」を蒔いてから去るのです。
② エージェントへの登録は「在職中」に
退職してからエージェントに登録するのではなく、在職中に面談を済ませておきます。
「〇月から稼働可能です」という状態で案件を探り、「自分の市場価値(単価相場)」を把握してから辞めるのが鉄則です。
もし、エージェントから提示された単価が想定より低ければ、独立を延期するという判断もできます。これが「辞めてから」だと、生活のために安値で妥協せざるを得なくなります。
5. 「生活防衛資金」の確保
精神論ではなく、数字の話です。
フリーランスの売上は、入金サイト(支払いサイクル)の関係で、働き始めてから実際にお金が入るまで「翌々月(60日後)」になることがザラです。
つまり、退職してから最低2〜3ヶ月は、収入ゼロの状態が続きます。
- 最低ライン: 生活費の3ヶ月分
- 安心ライン: 生活費の6ヶ月分
- 理想: 生活費の1年分
この貯金がない状態で独立するのは、酸素ボンベなしで深海に潜るようなものです。
もし手元資金が足りないなら、恥じることはありません。「今はまだその時ではない」と判断し、今の会社で(あるいは別の会社に転職して)資金を貯める期間を設けてください。
「金がないから稼ぐために独立する」というのは、順序が逆です。
6. 最後に、自分の「適性」を再確認する
ここまで準備リストを見て、「うわ、面倒くさい」「自分にできるかな」と不安になった方もいるでしょう。
その直感は正しいです。
この「面倒くささ」こそが、経営のリアルだからです。
もしあなたが、これらの事務手続きやリスク管理に対して、
「面倒だけど、自分の城を作るためなら苦じゃない(E型・C型)」と思えるなら、Goサインです。
しかし、「やっぱりコードだけ書いていたい、保険とか税金とか考えたくない(純粋なR型)」と思うなら、フリーランスではなく「技術に集中させてくれる、バックオフィスが強い会社」を探すべきです。
退職届を出す前の最後のセーフティネットとして、自分の性格タイプを客観的に知っておくことは、決して無駄ではありません。
エージェントという「魔物」との付き合い方と、搾取されないための「値札」の付け方
ここまでの準備を終え、いよいよあなたは「フリーランス市場」という名のジャングルに足を踏み入れます。
そこで最初に待ち受けているのは、猛獣(理不尽なクライアント)ではありません。
笑顔で近づいてくる「フリーランスエージェント」という名の案内人です。
彼らは言います。
「あなたのキャリアを全力でサポートします」
「ご希望に沿った、やりがいのある案件をご紹介します」
この言葉を、文字通りに受け取ってはいけません。
彼らはボランティアでも、あなたの親友でもありません。
彼らの正体は「あなた(エンジニア)」という商品を右から左へ流し、その通過料(マージン)で利益を得る「仲介業者(ブローカー)」です。
この第5章では、エージェント業界の裏側、商流による中抜きの実態、そして消費税や精算幅といった「隠れコスト」の罠まで、徹底的に言語化します。
これを知らずに契約書に判を押すのは、目隠しをして地雷原を歩くのと同じです。
1. エージェントのビジネスモデルを「ハック」せよ
まず、彼らがどうやって儲けているか、その構造を骨の髄まで理解してください。
彼らのビジネスはシンプルです。
「クライアントからの発注額(A)」−「あなたへの支払額(B)」=「エージェントの粗利(C)」
彼らのミッションは、C(粗利)を最大化することです。
そのために彼らが取る戦略は2つしかありません。
- クライアントからできるだけ高く取る(Aを上げる)
- あなたをできるだけ安く買い叩く(Bを下げる)
「Aを上げる」のは大変です。クライアントとの交渉が必要だからです。
しかし、「Bを下げる」のは簡単です。あなたが相場を知らなければいいだけだからです。
営業マンの「甘い言葉」の翻訳機を持て
エージェントの担当営業からよく聞くセリフがあります。これを脳内で正しく翻訳してください。
- 「今回は実績作りということで、少し単価を調整(減額)できませんか?」
- 翻訳
「クライアントへの交渉は面倒だし、競合他社に負けたくないから、お前の身銭を切って安く受注させてくれ。俺の今月のノルマのために」 - 対策
「実績作り」という言葉に騙されてはいけません。一度下がった単価は、契約更新時に戻ることは99%ありません。「相場以下の案件なら受けません」と即答してください。
- 翻訳
- 「この案件は人気で、すぐに決まってしまうかもしれません」
- 翻訳
「お前が他のエージェントで決まる前に、ウチで囲い込みたい。考える時間を与えずに契約させたい」 - 対策
焦りは禁物です。「他社さんでも似た案件で面談が進んでいるので、比較して決めます」と伝え、競争させてください。
- 翻訳
- 「長期案件なので安定していますよ」
- 翻訳
「一度放り込めば、俺が何もしなくても毎月チャリンチャリンとマージンが入ってくる楽な案件だ」 - 対策
長期=飼い殺しのリスクもあります。スキルの塩漬けにならないか、現場の技術スタックを厳しくチェックする必要があります。
- 翻訳
2. 「商流」という名の階級社会。あなたは今、何階層目にいるか?
フリーランスの単価を決める決定的な要因は、あなたのスキルではありません。
「商流(商いの流れ)」の深さです。
IT業界には、建築業界と同じような「多重下請け構造」が存在します。
あなたがどれだけ優秀でも、商流が深ければ深いほど、手元に残るお金は減り、責任と無茶振りだけが増えていきます。
具体的な数字で見る「中抜き」の恐怖
クライアント(エンド企業)が、あるプロジェクトのエンジニア1人に対して「月額100万円」の予算を出したとします。
- エンド直(0次請け):
- あなたが直接クライアントと契約。
- あなたの手取り:100万円
- ※営業力やコネがないと難しい聖域。
- 元請け直下(1次請けのエージェント):
- エージェントがマージン15%(15万円)を抜く。
- あなたの手取り:85万円
- ※ここがフリーランスとして目指すべき「標準ライン」。
- 2次請け(エージェント間のパートナー契約):
- 1次請けが15万円抜く(残り85万円)。
- その仕事を請けた2次請け業者が、さらに10〜15万円抜く。
- あなたの手取り:70万円〜75万円
- ※ここまではよくある話。
- 3次請け・4次請け(商流不明の闇):
- 間の会社が何もせず「口座を貸すだけ」で数万円ずつ抜いていく。
- あなたの手取り:50万円〜60万円
- ※危険水域。ここまで来ると、SESの会社員時代と変わりません。リスクだけ負わされて、給料並みの単価で働かされる「名ばかり個人事業主」です。
「商流」を確認するためのキラーフレーズ
案件を紹介された時、必ずこう聞いてください。
「この案件の商流を教えてください。エンド企業様との間に、御社以外に何社入っていますか?」
まともなエージェントなら、「エンド直です」「間にSIerさんが1社入っています」と即答します。
もし、「えっと…確認します」「商流はちょっと複雑で…」と言葉を濁すようなら、その案件は地雷案件です。即刻リストから外してください。
3. 「月額80万」の数字マジック。消費税と精算幅の罠
求人票にある「月額80万円(税込)」という数字。
これを見て「年収960万円だ!」と皮算用するのは、素人のやることです。
ここには2つの大きな落とし穴があります。
① 「税込」と「税別」の巨大な壁
フリーランスにとって、消費税は「自分の金」ではありません。
2023年10月から始まった「インボイス制度」により、課税事業者(多くのフリーランスがならざるを得ない)は、受け取った消費税を国に納める義務があります。
- 「月額80万円(税込)」の場合
- 本体価格は約72.7万円。消費税は約7.3万円。
- この7.3万円は、後で税務署に払う金です。使ってはいけません。
- 実質の売上は72.7万円です。
- 「月額80万円(税別)」の場合
- 振り込まれるのは88万円。
- 8万円を納税しても、手元に80万円残ります。
交渉の際は、必ず「それは税別ですか? 税込ですか?」と確認してください。
この一言を忘れるだけで、年間で約90万円(月7〜8万×12)もの損をすることになります。
エージェントは、あえて「税込」で高く見せかけようとする場合があるので注意が必要です。
② 「精算幅(140h-180h)」という名の残業代カット装置
SESやフリーランス契約書には、必ず「精算幅(基準時間)」という項目があります。
よくあるのが「140時間〜180時間」という設定です。
これはどういう意味か。
- 140時間未満しか働かなかった場合:
- 給料が減額されます(控除)。
- 180時間を超えて働いた場合:
- 初めて残業代が出ます。
問題は、この「140h〜180hの間(40時間分)」です。
140時間(定時ギリギリ)で帰っても、180時間(毎日1〜2時間残業)働いても、支払われる金額は同じなのです。
つまり、この「中間の40時間」は、クライアントにとっての「残業代定額使い放題プラン(サブスク)」であり、あなたにとっては「タダ働きゾーン」です。
ブラックな現場では、この上限(179時間)ギリギリまで働かせようとします。
対策:
- 単価交渉だけでなく「超過単価(残業代の単価)」と「精算幅の下限・上限」もしっかり確認すること。
- 可能なら「140h-160h」など、上限を下げられないか交渉してみる(難しいですが、言うだけタダです)。
4. スキルシートは「仕様書」ではない。「売れる広告」に変えろ
エージェントとの面談や、クライアントへの書類選考で使う「スキルシート(職務経歴書)」。
多くのエンジニアが、これを「スペック表」だと思っています。
【経験言語】Java (5年), PHP (3年)
【担当工程】詳細設計〜テスト
【詳細】販売管理システムの改修を行いました。
これでは、ゴミ箱行きです。
なぜなら、クライアント(発注者)が知りたいのは「あなたが何を使えるか」ではなく「あなたが私のビジネスの課題をどう解決してくれるか」だけだからです。
高単価なエンジニアのスキルシートは「広告(LP)*の構成になっています。
「Before / After」で価値を証明する
単に「やりました」ではなく、「どんな課題(Before)」に対し、「どう行動し」「どんな結果(After)」が出たかを数値で書いてください。
- 【改善前】 * 月次バッチ処理に5時間かかっており、始業時間までに終わらないトラブルが多発していた。
- 【施策】 * SQLの実行計画を見直し、インデックスの再設計とN+1問題の解消を実施。
- また、AWS Lambdaを用いて処理の一部を並列化。
- 【改善後(成果)】 * 処理時間を5時間から40分に短縮(86%削減)。
- 業務開始遅延による機会損失をゼロにし、運用チームの早朝待機コストも削減した。
ここまで書いて初めて、クライアントは「この人の単価80万は安いかもしれない(コスト削減効果の方が大きいから)」と感じます。
「Javaが書けます」はコモディティですが、「ビジネスを改善できます」はプレミアムな価値です。
5. 面談(商談)での「逆質問」こそが最強の武器
書類が通れば、クライアントとの面談です。
ここで「面接」を受ける気分で行くと、足元を見られます。
「使えそうな作業員が来たな」と思われたら負けです。
対等な「ビジネスパートナー」として認めさせるための唯一の方法。
それが「鋭い逆質問」です。
面談の最後、「何か質問はありますか?」と聞かれた時が勝負です。
ここで「残業は多いですか?」なんて聞いてはいけません(それはエージェント経由で聞くことです)。
相手を唸らせるキラー質問集
- 「今回のプロジェクトが発足した、ビジネス上の最大の背景(課題)は何ですか?」
- (意図: 私はコードを書くだけでなく、ビジネスの成功に興味がありますよ、というアピール)
- 「現在、プロジェクト進行における最大のボトルネックや懸念点はどこだと認識されていますか?」
- (意図: 私が入ることで、そのボトルネックを解消できるかもしれませんよ、という提案の布石)
- 「もし参画させていただけた場合、最初の1ヶ月で最も期待される成果(ゴール)は何ですか?」
- (意図: 私は初月から成果を出す気がありますよ、という即戦力アピールと、期待値のすり合わせ)
これらの質問を投げかけることで、面談官(PMや現場リーダー)は、あなたを「指示待ち人間」ではなく「頼れる相談相手」として見るようになります。
その信頼感こそが、高単価契約と、ホワイトな労働環境(裁量権のあるポジション)を引き寄せる鍵です。
6. まとめ:エージェントは「道具」として使い倒せ
エージェントを悪く書きましたが、営業力のないエンジニアにとって、彼らが有用な「営業代行ツール」であることは事実です。
重要なのは、「主従関係」を間違えないことです。
彼らが主(あるじ)で、あなたが従(商品)になってはいけません。
あなたが主(経営者)であり、彼らはあなたのビジネスを拡大するための従(外注先)なのです。
- 商流を確認する。
- 単価の税込・税別を確認する。
- 精算幅の罠を知る。
- スキルシートで「価値」を売る。
- 面談で「対等」な立場を作る。
これらを徹底すれば、エージェントはあなたの「搾取者」から、頼もしい「ビジネスパートナー」に変わります。
これで武器は揃いました。
次は、自分の値段を自分で決める番です。
ひとりで全部やらなくていい。「うしろぽっけ」に面倒なことは突っ込んで、あなたは前だけ見ていてください
ここまで長い文章にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
正直、3万文字近くあるので、読み疲れたんじゃないでしょうか?
ここまで読んでくれたということは、あなたは「なんとなく会社が嫌」というレベルを超えて、「本気で働き方を変えたい」と思っているのだと思います。
最後に、これからフリーランスや独立を目指すあなたに、私たちが一番伝えたかったこと。そして、このサイト「うしろぽっけ」が何のためにあるのかをお話しして、締めくくりたいと思います。
1. 「自立」って、全部一人でやることじゃないですよ
フリーランスになると、「これからは全部一人でやらなきゃ」と気負ってしまう人が多いです。
でも、それはちょっと違います。
会社員の頃を思い出してみてください。
経費精算システムが使いにくかったり、行きたくもない飲み会があったり。会社が決めたルールやツールに、半強制的に「依存」させられていましたよね。
フリーランスの「自立」というのは、何でもかんでも一人で抱え込むことじゃありません。
「誰に頼るか」「どのツールを使うか」を、自分で選べるようになることです。
- 税金のことは、使いやすい会計ソフトに頼る。
- 営業のことは、相性のいいエージェントに頼る。
- そして、ちょっとした事務作業やキャリアの悩みは、便利なWebツールに頼る。
「全部オレがやる!」じゃなくて、「苦手なことはこれに任せよう」と自分で決められる。
それが、本当の意味での「自由」であり、フリーランスの特権です。
2. 地味な「バックオフィス」が、あなたを守ってくれます
記事の中で、何度も「事務作業は面倒くさい」と書きました。
実際、本当に面倒くさいです。私も苦手です。
でも、この地味な作業(バックオフィス業務)が、いざという時にあなたを守る「盾」になります。
- ちゃんとした契約書を結んでいれば、理不尽なトラブルを防げます。
- 毎月の数字を把握していれば、「来月はヤバいから早めに動こう」と対策が打てます。
- 自分の適性を知っていれば、合わない案件に手を出して消耗することもありません。
「コードだけ書いていたい」という気持ちは、痛いほど分かります。
でも、長くフリーランスを続けている人は、みんなこの「守り」の部分を大事にしています。
ここさえしっかりしていれば、安心して仕事に集中できるからです。
3. あなたの「うしろのポケット」みたいになりたい
私がこのサイトを「うしろぽっけ(Ushiro Pocke)」と名付けたのは、そんな想いからです。
ズボンの後ろポケットって、財布とかスマホとか、出かける時に必要なものを、無意識にポンと入れますよね。
普段は存在を忘れているけど、一番近くにあって、大事なものを入れておく場所。
会社を辞めると、「あなた誰?」と言いたくなるような管理者はいなくなりますが、同時に、面倒なことをやってくれていた総務や経理の人もいなくなります。
そんな時、
「この契約書、大丈夫かな?」
「請求書ってどう書くんだっけ?」
「ちょっと自分のキャリアを見直したいな」
そんなふうに思った時、気軽にアクセスして使える場所でありたい。
あなたの仕事の邪魔はしないけど、困った時にはすぐ手が届く。
そんなちょうどよい距離感の相棒になりたいと思っています。
4. 最後に、ちょっとだけ自分を確認してみませんか?
さて、長くなりましたが、これで最後です。
これから退職届を書こうか迷っているあなた。
あるいは、もう少し準備してからにしようと思ったあなた。
どちらにせよ、動き出す前に「今の自分の状態」を客観的に見ておくのは悪くない選択です。
第3章でもお話ししましたが、人には「向き不向き」があります。
「ひとりでバリバリ稼ぐのが好きなタイプ」もいれば、「組織の中で調整役をするのが得意なタイプ」もいます。
これは優劣じゃなくて、ただの「性質」です。
勢いで辞めてしまう前に、
「自分はどっちのタイプなんだろう?」
というのを、一度冷静にデータで見てみませんか?
登録とかは要りません。1分くらいで終わります。
ゲーム感覚で大丈夫なので、ちょっと試してみてください。
その結果が、あなたの背中を押すきっかけになるかもしれませんし、「今はやめておこう」という冷静なブレーキになるかもしれません。
どっちの結果が出ても、それはあなたにとってプラスの情報になるはずです。
勢いで辞める前に、
「自分のタイプ」を[spbr]見てみませんか?
「組織が嫌い」なだけなのか、それとも本当に「独立」に向いているのか。
RIASEC(職業選択理論)に基づいた12の質問で、あなたの「仕事の強み」や「向いている働き方」を診断します。
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
もしこの記事が、モヤモヤしていたあなたの気持ちを少しでも軽くできたなら嬉しいです。
診断結果が出たら、ぜひSNSなどで教えてくださいね。
「あ、意外と自分は職人タイプだったんだ」とか「やっぱり独立向きだった!」とか、新しい発見があると思います。
それでは、また。
あなたの新しい一歩を、影ながら応援しています。