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【開発秘話】​人は「給料」ではなく「空気」で去っていく。見えない負荷を可視化する『職場環境&退職リスク診断』

目次

15種類の見えない負荷を可視化する『職場環境&退職リスク診断』を作った理由

朝、駅のホームに立つと、足が鉛のように重くなる。
オフィスのドアを開ける瞬間、胃のあたりがキュッと縮こまる。
チャットツールの通知音が鳴るたびに、心臓が早鐘を打つ。

私たちは、人生の起きている時間の大半を「職場」という箱の中で過ごします。
その箱の中の空気が澱んでいたら、どうなるでしょうか。
ゆっくりと、しかし確実に、私たちの心と体は「消耗」していきます。

今回、うしろぽっけでは『職場環境&退職リスク診断』というツールをリリースしました。

これは単なる「お遊び診断」ではありません。
現代のオフィスに蔓延する、目に見えない「ストレス要因」を可視化し、あなたが限界を迎える前に、現状を客観視するための装置です。

なぜこのツールを作ったのか。
そして、私たちが直視しなければならない「人が辞める本当の理由」とは何なのか。
少し長くなりますが、開発の裏側にある思想と、現場のリアルについてお話しします。


1. 「辞めたい」の正体は、ひとつじゃない

「どうして退職するんですか?」

退職届を出した部下にそう尋ねると、多くの場合はこう返ってきます。
「一身上の都合です」
「キャリアアップのためです」

これらは、大人のマナーとしての「建前」です。
本当の理由は、もっと複雑で、言語化しにくいものです。

私がこれまでのキャリアで見てきた「人が離れていく現場」には、共通点がありました。
それは、「たった一つの大きな出来事で辞めることは稀だ」ということです。

むしろ、日々の小さな「違和感」の積み重ねこそが、人の心を折ります。

  • 挨拶をしたのに無視された、あの一瞬の冷たい空気。
  • 「これくらい常識だろ」と言われて、仕事を丸投げされた時の無力感。
  • 隣の席から漂ってくる、強すぎる柔軟剤の匂いによる頭痛。
  • 飲み会で「彼氏はいないの?」と聞かれた時の、生理的な嫌悪感。

一つひとつは「些細なこと」かもしれません。「気にしすぎだ」で片付けられるかもしれません。
しかし、それが毎日、毎週、何年も積み重なったらどうなるか。
ある日突然、プツンと糸が切れてしまうのです。

この「複合的なダメージ」を可視化しない限り、私たちは自分の身を守れないのではないか。
そう考えたのが、このツール開発の原点です。


2. 現代を蝕む「15種類のストレス要因」

かつて、ハラスメントといえば「怒鳴る(パワハラ)」か「体を触る(セクハラ)」くらいしか認識されていませんでした。
しかし、現代の職場はもっと複雑です。テクノロジーの進化や価値観の多様化に伴い、ハラスメントの種類も変化しています。

今回の診断ツールでは、現代の職場に潜むリスクを15種類に分類しました。
なぜこれらを選んだのか。それぞれのリアルな事例と共に解説します。

① パワハラ・モラハラ(王道の圧力)

これは説明不要でしょう。しかし、最近は「大声で怒鳴る」タイプよりも、「静かな圧力」の方が厄介です。
必要な情報をわざと共有しない。メールのCCから外す。ため息をつく。
証拠に残りにくい陰湿な態度は、受け手に「私が悪いのかもしれない」と思わせる効果があります。これが最も心を削ります。

② テクハラ(IT格差の利用)

バックオフィス業務で特に多いのがこれです。
「これ、チャチャッとやっといてよ」と、Excelのマクロ修正やPCのセットアップを丸投げする社員。
できないと「使えないな」と舌打ちする。
逆に、ITリテラシーの低い相手に対し、わざと専門用語を捲し立てて優位に立とうとするエンジニア。
技術(テクノロジー)は本来人を助けるものですが、職場では「マウントを取る道具」として使われてしまうことがあります。

③ リモハラ(過剰な監視)

テレワークの普及と共に生まれた新しいストレスです。
「サボってないか確認する」という名目で、Webカメラを常時接続させる。
「部屋の様子見せてよ」とプライベート空間に踏み込もうとする。
自宅という「安らげる場所」さえも監視下に置かれるストレスは、精神的な疲労を加速させます。

④ エンハラ(価値観の押し付け)

「エンジョイ・ハラスメント」。
「仕事は楽しむものだ」「定時で帰るなんてやる気あるの?」「みんなでBBQしようぜ!」
一見ポジティブに見えますが、これは「価値観の強要」です。
仕事に対するスタンスは人それぞれです。生活の糧として割り切って働きたい人に対し、「熱量」を強要するのは、精神的な負担に他なりません。
急成長中の企業などでよく見られる、非常に根深い問題です。

③ スメハラ(感覚への介入)

「匂い」の問題は、指摘しにくいがゆえに深刻です。
体臭だけでなく、最近は「柔軟剤」や「香水」の影響が増えています。
本人は「いい匂い」だと思っていても、隣の席の人にとっては「頭痛の種(化学物質過敏症のトリガー)」になることがあります。
逃げ場のないオフィスで、呼吸するたびに不快感を感じる状況は、業務効率を著しく低下させます。

⑥ ソジハラ・ジェンダーハラ(アイデンティティの否定)

「男のくせに育休?」「まだ結婚しないの?」「あの人、あっち系?」
性的指向や性自認(SOGI)、性別役割分担意識(ジェンダー)に関する無神経な言動。
これは、その人の「存在そのもの」を否定しかねない行為です。
古い価値観のままの管理職が悪気なく発言し、若手が静かに去っていく原因の筆頭となっています。

⑦ カスハラ(外部からの理不尽)

お客様は神様ではありません。
土下座の強要、人格否定、SNSでの晒し行為。
これらは「クレーム」の域を超えた、明確な「迷惑行為」です。
にもかかわらず、「お客様だから我慢しろ」と従業員を守らない会社組織。
外部からの圧力と、守ってくれない内部への失望。この板挟みで、現場は疲弊していきます。

(※ツールでは、これらに加えマタハラ、ケアハラ、エイジハラ、アルハラ、ジタハラを含めた全15種類を網羅しています)


3. あなたは「原因」になっていないか?

さて、ここまでは「受ける側」の視点で書いてきました。
しかし、この開発秘話で本当に伝えたいのは、もう一つの側面です。

このツールを使っているあなた自身が、誰かにとっての「ストレス源」になっている可能性です。

ハラスメントの難しいところは、行う側の多くが「善意」「指導」、あるいは「親愛の情」に基づいて行動している点です。

  • 「あいつのためを思って、厳しく叱った」(パワハラ)
  • 「職場の空気を和ませようと思って、容姿を褒めた」(セクハラ)
  • 「チームの団結力を高めようと思って、飲み会に誘った」(アルハラ・エンハラ)
  • 「早く成長してほしくて、あえて高いハードルの仕事を振った」(パワハラ・モラハラ)

自分の胸に手を当ててみてください。
あなたは、部下や同僚の「沈黙」を、「同意」だと勘違いしていませんか?
相手が愛想笑いをしている裏で、必死に「NO」のサインを出していることに気づいていますか?

「昔はこれくらい普通だった」
その言葉が出そうになったら、一度立ち止まる必要があります。
時代は変わりました。アップデートできないコミュニケーションは、組織の成長を阻害する要因になります。

今回の診断ツールには、あえて「被害者」だけでなく、「自分がやってしまっていないか?」という視点で問う項目を混ぜ込んでいます。
結果画面で「高濃度」と判定されたら、それはあなたが負担を受けている可能性と同時に、その空気が充満する環境に慣れすぎて、感覚が麻痺している可能性を示唆しています。

厳しい環境に長くいると、それが当たり前になってしまう。
ハラスメントの連鎖は、そうやって起きます。自分がされた嫌なことを、無意識に後輩にしてしまう。
この負の連鎖を断ち切るためにも、「客観的な数値」で自分を見る必要があるのです。


4. 「退職リスク」を数値化する意味

このツールには、ハラスメントの成分分析に加え、「退職危険度(辞めちゃうぞメーター)」という機能を搭載しました。

「なんとなく辛い」
「まだ頑張れる気がする」

日本人は真面目です。限界が来るまで、歯を食いしばってしまいます。
そして、体調を崩して初めて「無理をしていた」と気づくのです。
これを防ぐには、「感情」を「数値」に置き換えるしかありません。

「あなたの退職リスクは90%です。今すぐ環境を見直してください」
そう画面に表示されたら、少しは「休むこと」への罪悪感が薄れるのではないでしょうか。
「ツールが警告しているから」と、休息や相談のきっかけに使えるのではないでしょうか。

私たちは、あなたが会社を辞めることを推奨しているわけではありません。
ただ、「会社よりも、あなたの心身の健康の方が替えが効かない」という当たり前の事実を、手遅れになる前に思い出してほしいだけです。


5. バックオフィスの孤独と「うしろぽっけ」

当サイト「うしろぽっけ」は、総務、経理、情シスといったバックオフィス業務、そして現場で戦うすべての人を支援するために立ち上げました。

バックオフィスの人間は、孤独になりがちです。
営業のように数字で評価されるわけでもなく、開発のようにモノを作れるわけでもない。
「やって当たり前」の減点方式の中で、他人の感情のケアをし、理不尽な調整業務に追われる。
そんな中で、職場の人間関係のトラブルまで抱え込んだら、ひとたまりもありません。

だからこそ、この場所(サイト)を、駆け込み寺のような場所にしたいと考えました。
辛い時、ふと立ち寄って、診断ボタンを押す。
「ああ、やっぱり今の環境は少しおかしいんだ」と確認して、客観性を取り戻す。

そんな、あなたのポケットに入っている「お守り」のような存在になれればと思っています。


6. 最後に:この結果を持って、どうするか

診断ツールを試して、もし「危険」という結果が出たら。
どうすればいいのでしょうか。

  1. 記録をとる
    「ハラスメントだ」と訴えても、証拠がなければ「指導の一環」とみなされることがあります。
    いつ、どこで、誰に、何を言われたか。メモや日記に残してください。それがあなたを守るお守りになります。
  2. 距離をとる(物理的・精神的)
    可能なら部署異動を願い出る。リモートワークを増やす。
    それが無理なら、「仕事だけの関係だ」と割り切ることで、心にバリアを張ってください。
  3. 外の世界を知る
    「ここしか居場所がない」というのは思い込みです。
    転職サイトを眺めるだけでもいい。「他にも選択肢はある」と知るだけで、心に余裕が生まれます。
  4. 自分を責めない
    最も大切なことです。
    厳しい環境にいると、「自分が悪いからだ」「もっと強くならなきゃ」と自分を責めてしまいがちです。
    違います。悪いのは環境とのミスマッチです。
    あなたは、あなたのままで、ただ輝ける場所を探せばいいだけです。

職場は、人生の一部でしかありません。
その一部のために、あなたの全てをすり減らさないでください。

このツールが、あなたが「自分自身」を大切にするための、最初の一歩になることを願っています。

あなたの職場の「ストレス値」はどれくらい?
今すぐチェックして、現状を客観視しよう。

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執筆:うしろぽっけ
(バックオフィス・PMO歴10年。数々の現場で、働く人々の葛藤を見てきた経験から)

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