「AIにコードを書かせたら、面倒な集計作業が5分で終わった!」 そんな景気のいい話がネットには溢れています。でも、実際にそのコードを会社のパソコンで実行しようとした瞬間、嫌な汗が背中を流れたことはありませんか?
「もし、共有フォルダのデータを全部消してしまったら?」 「もし、顧客情報がどこか知らないサーバーに送信されていたら?」
その直感は、バックオフィス担当者として極めて正しい危機管理能力です。AIは「動くコード」は作ってくれますが、あなたの会社のセキュリティ規定までは読んでくれません。
この記事では、AIが生成したコードを実行する前に、私たちが絶対に通過しなければならない「11の検問」を、現場のリアルな失敗談とともに徹底解説します。
1. プロンプトに「会社の生データ」を投げるという自爆行為
ChatGPTなどの生成AIを業務利用する際、最も恐ろしいのは「うっかり情報漏洩」です。
多くの人が「AIとのチャットは非公開だから大丈夫」と誤解していますが、無料版や設定を誤ったビジネス版のAIは、入力されたデータを「学習」に再利用します。つまり、あなたが便利だと思って貼り付けた「A社との取引条件」や「社員の個人名」が、巡り巡って他社のAI回答の中に引用されるリスクがあるのです。これは、駅前の掲示板に会社の機密資料を貼り出すのと何ら変わりません。
現場の体験談
かつて、ある担当者が「エラーが出るので直して」と、コードの中に実在する顧客のメールアドレスを残したままAIに相談しました。後日、そのアドレスがAIの学習データに取り込まれ、全く関係のない第三者が「テスト用のメールアドレスを教えて」とAIに聞いた際、その顧客のアドレスが回答されてしまった……という笑えない話が実際に議論されています。
対策
AIにコードを作らせる際は、固有名詞を「顧客A」「商品X」に置き換える「匿名化」を徹底してください。生データを入れるのは、コードが完成した後に「自分の手元」で行うのが、プロの仕事です。
2. 「管理者権限」という名の聖域を侵してはいけない
バックオフィスの自動化を進めようとして、最初にぶつかる壁が「Pythonなどの開発環境がインストールできない」という問題です。
会社のPCに管理者権限がないのは、情シスがあなたの邪魔をしたいからではありません。「誰が何を入れたか把握できない端末」がネットワーク内に一台でもあると、そこがサイバー攻撃の突破口(脆弱性)になるからです。情シスが最も恐れているのは、あなたの作業効率ではなく、全社的なシステムダウンです。
現場の体験談
「インストール不要のポータブル版ならバレないだろう」と勝手に使い始め、それが原因で社内ネットワークに異常な通信が発生。結果として情シスから呼び出しを受け、部署全体のPC利用ルールが厳格化される……。一人の「独走」が、チーム全員の足を引っ張る結果になります。
対策
もし管理者権限なしで開発を進めたいなら、無理にPythonを入れるのではなく、Excel VBAやGoogle Apps Script (GAS)、あるいはブラウザの標準機能で動くJavaScriptに「Pivot(方向転換)」してください。これらは会社が公認している「既にある環境」であり、情シスとの摩擦を最小限に抑えられます。
3. クラウド実行は「許可なきデータ持ち出し」と同じ
最近ではChatGPT自身がコードを実行してくれる機能(Advanced Data Analysisなど)や、Google Colabなどのブラウザ実行環境が非常に便利です。しかし、ここに業務ファイルをアップロードする行為は、会社から見れば「シャドーIT(管理外のIT利用)」そのものです。
「社内の重要データを、どこの馬の骨ともしれない海外のサーバーにアップロードした」と報告された経営層や情シスが、青ざめないはずがありません。
対策:
会社が公式に認めていないクラウド環境に、本物の業務ファイルを1ファイルたりとも上げてはいけません。テストは必ず「中身のないダミーデータ」で行い、本番の実行はローカル(自分のPC内)で行う環境を整えましょう。
4. コード内の「パスワード直書き」はデジタル上の付箋
AIが生成するコードには、時々「ここにパスワードを入れてください」というコメントと共に、直接パスワードを書き込むような記述(ハードコーディング)が含まれます。これは、モニターの縁にパスワードを書いた付箋を貼るのと同じくらい、あるいはそれ以上に危険な行為です。
コードを同僚に共有したり、画面を共有しながらデバッグしたりした瞬間に、あなたの権限は他人の手に渡ります。
対策:
パスワードやAPIキーは、コードの中に直接書かず、プログラムを実行した時に「入力画面」が出るようにAIに修正させてください。また、環境変数などの高度な管理方法をAIに尋ねるのも、一歩進んだ自衛策です。
5. 通信処理は「見えないスパイ」を招き入れる窓口
コードの冒頭に import requests や urllib といった記述があれば、そのプログラムはインターネットの向こう側と通信しようとしています。良心的なツールを装って、バックグラウンドでこっそりあなたのPC内のファイルを外部に送信する「悪意あるコード」が紛れ込んでいないと、誰が断言できるでしょうか。
現場の体験談
AIに「便利なライブラリを教えて」と聞き、言われるがままにインストールしたら、実はそれが本物と名前が酷似した偽パッケージ(タイポスクワッティング攻撃)だった……。AIは時として、ハッカーが仕掛けた罠を「正解」として提案してしまうことがあります。
対策
外部通信が必要ない集計作業などであれば、AIに「オフライン(自分のPC内)だけで完結するコードにして」とはっきり指示しましょう。
6. 「削除・上書き」のEnterキーは世界一重い
「読み込み(Read)」のコードなら、最悪エラーで止まるだけですが、「削除(Delete)」や「上書き(Write)」が含まれるコードは劇薬です。AIがループ処理の条件を一行間違えていただけで、一瞬にして数年分のアセットが消え去り、ゴミ箱にすら残らない……という事故は、プロのエンジニアでも経験する恐怖です。
対策
いきなり本番のフォルダで実行してはいけません。まずはデスクトップにテスト用のフォルダを作り、中身が消えてもいい「コピーしたデータ」で10回は成功することを確認してください。
7. 最強のセキュリティ対策は「右クリック」にある
どんなに診断ツールをクリアしても、バグ(不具合)の可能性をゼロにはできません。そんなとき、あなたを地獄から救い出してくれるのは、高度なセキュリティソフトではなく、「実行直前のバックアップ」というアナログな習慣です。
現場の泥臭い体験談
「さっきまで動いていたのに、ちょっとコードを書き直したら動かなくなった上に、元のデータも壊れた……」 この絶望感から救ってくれるのは、5秒前に取った「コピー ~ コピー」という名前のフォルダだけです。
対策
実行ボタンを押す前に、対象のフォルダを右クリックして「コピー」、そして「貼り付け」。この30秒を惜しむ人は、いつか必ず取り返しのつかない後悔をします。
8. AI依存という「思考停止」のリスク
最後の検問は、技術ではなく「あなたの心」です。 内容が全く理解できないコードで業務を自動化してしまうと、AIの仕様が変わったり、PCの環境が少し変わったりしてツールが止まった瞬間、あなたの業務も完全にストップします。これを「属人化ならぬAI依存」と呼びます。
対策
AIに「このコードの各行が何をしているか、初心者にわかるようにコメントを入れて」と頼みましょう。コードを100%理解する必要はありませんが、「どこでファイルを読み込み、どこで計算しているか」という大まかな地図を持つだけで、トラブル時の対応力は劇的に変わります。
経営者・情シス担当者の方へ:なぜ「禁止」では解決しないのか
この記事を読んでいる管理職やシステム部門の方にお伝えしたいのは、現場に「AI利用禁止」を命じるだけでは、リスクは消えないということです。むしろ、現場の人間は「便利だから」という誘惑に負け、会社に内緒でAIを使い始めます。これが、最も制御不能で危険な「見えないシャドーIT」です。
必要なのは禁止ではなく、この「安全ナビ」のような「安全な使い方の教育」と、現場からの「これを使いたい」という声を吸い上げる「対話の窓口」です。現場が正しくリスクを恐れ、報告・連絡・相談ができる文化こそが、最強のITガバナンスを構築します。
まとめ:地に足のついた「自動化」で、明日をちょっと楽に。
AIは、私たちから仕事を奪うものではありません。私たちが本来向き合うべき「人間にしかできない、血の通った仕事」に集中するための、心強い「うしろぽっけ」です。
泥臭いチェックを厭わず、リスクを正面から受け止め、一歩ずつ着実に。 この「11の検問」をクリアしたあなたは、もうただのAIユーザーではありません。「AIを安全に乗りこなして、会社に価値を還元するプロフェッショナル」です。
「うちの会社で使っても大丈夫?」
その不安、一緒に整理しませんか。
あなたの現場に「ちょうどいい」を。
あなたのお困りごとに、
本気で向き合います。
独自カスタム
不満を解消する
ピンポイント修正
実務伴走
隣で一緒に働く
事務サポート
仕組み改善
現場に馴染む
フローの再構築
「うしろぽっけ」に
今の悩みをそのままぶつけてください。