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​私用スマホで業務連絡は「普通」?顧客情報が見放題な現場のリスクと、0円でできる対策【テンプレート付】

​「従業員の個人のLINEで、顧客とやり取りをしている」

「退職者のスマホに、お客様の名簿やチャット履歴が残ったままかもしれない」

​零細企業の現場では、これは決して珍しいことではありません。むしろ「普通」の光景です。

​「セキュリティ対策ソフトを入れる予算なんてない」

「いちいち会社用携帯を支給していたら、赤字になってしまう」

「うちは家族みたいなものだし、悪いことをする人間なんていない」

​その気持ち、痛いほどよくわかります。

これまで、数多くのバックオフィス業務やプロジェクト管理(PMO)の現場に立ち会ってきましたが、従業員数名のオフィスにおいて、大手企業のような「がんじがらめ」のセキュリティルールが機能している例を見たことがありません。むしろ、ガチガチに固めることで業務効率が落ち、結果として「抜け道」を使われてしまうのがオチです。

​しかし、現場を知る人間として、これだけは正直にお伝えしなければなりません。

今の状態は、「いつ爆発してもおかしくない爆弾」を、従業員のポケットに入れて歩かせているのと同じです。

​とはいえ、今すぐ高額なMDM(モバイル端末管理ツール)を導入したり、弁護士を入れて誓約書を作り直したりするのは現実的ではありません。

​この記事では、元PMOとしての経験をもとに、「お金をかけずに」「明日からできる」、零細企業のための泥臭いけれど確実なセキュリティ対策(生存戦略)について、徹底的に深掘りします。

​キラキラしたDXの話はしません。あなたの会社と従業員を守るための、リアルな「守り」の話です。

目次

​なぜ、私たちの現場はセキュリティが「ガバガバ」なのか

​まず、自分たちを責めるのをやめましょう。セキュリティが緩くなってしまうのには、正当な理由があります。それは「怠慢」ではなく、「効率」と「コスト」を追求した結果だからです。

​「早い・安い・便利」の誘惑

​従業員の私用スマホを業務に使うこと(BYOD:Bring Your Own Device)のメリットは圧倒的です。

  1. コストゼロ
    端末代も通信費もかかりません(一部手当を出すケースもありますが、法人契約よりは遥かに安い)。
  2. 教育コストゼロ
    従業員は自分の使い慣れた機種(iPhoneやAndroid)を使うため、「使い方がわからない」という問い合わせが発生しません。
  3. レスポンス速度
    プライベートの通知と同じ並びで業務連絡が来るため、即レスが期待できます。

​零細企業にとって、この「機動力」は生命線です。大企業が稟議書を回している間に、LINE一つで商談をまとめる。そのスピード感こそが武器でした。

​しかし、その「便利さ」の裏側には、致命的な落とし穴が口を開けています。その穴は、普段は日常の風景に溶け込んでいて見えません。何かが起きた瞬間に、初めてその深さに気づくのです。

​実録!PMOが見た「本当にあった怖い話」事例集

​「情報漏洩」というと、どこかの国のハッカーがサーバーを攻撃して……といったニュースを想像するかもしれません。しかし、零細企業で起きる事故は、もっと地味で、もっと人間臭く、そして「誰にでも起こりうること」ばかりです。

​私が実際に現場で見聞きした、あるいは相談を受けた「ヒヤリハット(では済まなかった)」事例をご紹介します。これを読んでいるあなたの会社でも、同じことが起きていないか確認してみてください。

​ケース1:その「スクショ」、どこに行きますか?

​ある営業担当のAさんは、顧客からの無理なクレーム対応に疲弊していました。

「またこんなこと言ってきたよ……」

Aさんは、その顧客とのLINEのやり取りをスクリーンショット(スクショ)で撮影しました。

​悪意があったわけではありません。ただ、同僚や友人に「聞いてよ、この理不尽な客」と愚痴りたかっただけなのです。

  • リスクの発生点
    そのスクショ画像には、顧客の実名、アイコン(顔写真)、具体的なトラブル内容が鮮明に写っています。Aさんはそれを、友人グループのLINEに投稿しました。 「うわー、ひどい客だねw」 その場はそれで終わりました。しかし、その友人の一人が、悪気なくその画像をSNSにアップしたら? あるいは、Aさんが電車の中でその画像を開いているのを、誰かに見られたら? ​「画像データ」はテキストよりも拡散力が強く、一度流出すると回収は不可能です。従業員のストレス発散の裏側で、顧客のプライバシーが「画像」として独り歩きするリスク。これはシステムでは防げません。

​ケース2:クラウドの「親切」がアダになる

​現場仕事の多いB社では、施工現場の状況や、ホワイトボードに書いた会議の議事録を、個人のスマホで撮影して記録するのが習慣でした。

​ある日、B社の社長が従業員のスマホの画面をふと見た時のことです。

写真アプリ(GoogleフォトやiPhoneの写真アプリ)のサムネイル一覧が目に入りました。

  • [子供の運動会の写真]
  • [顧客の契約書の写真]
  • [昨日の夕飯の写真]
  • [新商品の設計図の写真]

​これらが、まったく同じ「カメラロール」の中に、時系列順に仲良く並んでいたのです。

  • リスクの発生点
    多くのスマホは、初期設定で写真をクラウド(Googleフォト、iCloud、Amazon Photosなど)に自動バックアップする設定になっています。 つまり、従業員が意識していなくても、会社の機密情報が、従業員の個人のクラウドストレージにコピーされ続けているということです。 もし従業員のGoogleアカウントが乗っ取られたら? もし従業員が、家族とiPadを共有していて、リビングで子供が写真を見ていたら? 「パパ、この書類なあに?」と、取引先の機密書類が家族会議のネタになる──笑い話ではありません。

​ケース3:カフェの「フリーWi-Fi」は透明な会議室

​「ちょっと外出先でメールチェックしますね」

優秀な事務員のCさんは、移動の合間にカフェに入り、PCを開きました。テザリングは通信量を食うので、カフェが提供している無料のフリーWi-Fiに接続します。

​Cさんは、顧客管理システムにログインし、請求書の発行業務を行いました。

  • リスクの発生点
    暗号化されていない、あるいはパスワードが公開されているフリーWi-Fiは、同じWi-Fiに繋いでいる人間から通信内容を「覗き見」されるリスクがあります(中間者攻撃など)。 しかし、それ以上に怖いのは「背後」です。 おしゃれなカフェの狭い座席。Cさんの背後を通る人、あるいは隣の席に座っている人から、PCの画面は丸見えです。 画面には「株式会社〇〇様 請求額 1,500,000円」の文字。 そのカフェに、取引先の競合他社がいない保証はどこにもありません。カフェで仕事をするということは「ガラス張りの部屋で、マイクを使って会議をしている」のと同じくらいの警戒心が必要です。

​ケース4:退職者は「爆弾」を持って去っていく

​一番恐ろしいのが、退職時のトラブルです。

創業メンバーの一人だったDさんが、方針の違いから退職することになりました。喧嘩別れに近い状態でした。

​社長は「PCは返してもらったし、社内チャットのアカウントも削除したから大丈夫」と思っていました。しかし、盲点がありました。

「Dさんの個人のスマホに入っているLINEの履歴と連絡先」です。

  • リスクの発生点
    Dさんの個人のLINEには、数年分の顧客とのやり取り、「社長、これどうしましょう?」という社内相談の履歴、そして何より「顧客と直接繋がっている友だちリスト」がそのまま残っています。 Dさんが翌月、競合他社を立ち上げました。 Dさんは手元のスマホを開き、かつての顧客に一件ずつメッセージを送ります。 「お世話になっております。Dです。この度独立しました。以前よりお安くしますので……」 ​これは法的には不正競争防止法などに抵触する可能性がありますが、起きてしまってからでは遅いのです。顧客リストという会社の資産が、退職者の「私物」として持ち出されてしまった瞬間です。

​なぜ、「信頼」だけでは会社を守れないのか

​零細企業の経営者とお話ししていると、必ずと言っていいほどこの言葉が出てきます。

「うちは少人数だし、みんな信頼できるメンバーだから。ガチガチに縛るのはなんか違うんだよね」

​その気持ちは素晴らしいものです。信頼関係は組織の基盤です。

しかし、セキュリティにおいて「性善説(人を信じて任せること)」だけに頼るのは、経営上の大きなリスクになります。

​誤解しないでください。「従業員が悪さをするから疑え」と言っているわけではありません。

むしろ逆です。「従業員をトラブルの当事者にさせないために、仕組みで守る」必要があるのです。

​ルールがない=「個人の責任」になる

​例えば、ある日突然、顧客情報が流出したとします。原因は不明です。

社内に明確なセキュリティルールがなかった場合、どうなるでしょうか?

​「あいつ、飲み会でスマホ出しっぱなしにしてたよな……」

「そういえば、カフェで仕事してるって言ってたけど……」

​確固たる証拠がなくても、状況証拠だけで「誰か」が疑心暗鬼の対象になりかねません。

もし、明確なルール(パスワード設定、紛失時の報告義務など)があり、全員がそれを守っていたとしたらどうでしょう。

​「彼はルール通りに運用していた。だから彼の過失ではない」

​このように、会社として従業員を守ることができます。「信頼しているからルールを作らない」のではありません。「万が一の時にその人を守りたいから、あえてルールを作る」のです。

​この視点の転換ができるかどうかが、会社と従業員の未来を分けます。

​0円でできる!「私用スマホ業務利用(BYOD)」7つの基本ルール

​ここからは、高額なツールを一切使わず、今すぐ(なんならこの記事を読んだ直後から)始められる「現実的なセキュリティ対策」をご紹介します。

​これを社内のチャットで共有するだけでも、リスクは大幅に減らすことができます。

​ルール1:OSとアプリのアップデートは「業務の一環」

​「スマホの調子が悪くなるからアップデートしたくない」「通信量が減るから後回し」

プライベートなら個人の自由ですが、業務データを扱う端末としては非常に危険な状態です。

​古いOS(iOSやAndroid)やアプリを使い続けることは、セキュリティの穴を放置しているのと同じです。

  • 対策
    「OSとLINE、ブラウザのアップデート通知が来たら、その日のうちにWi-Fi環境でアップデートすること」を業務上の約束事にします。

​ルール2:画面ロックは必ず設定する

​「いちいちロック解除するのが面倒くさい」という理由で、パスコードを設定していない、あるいは「1111」などの単純な数字にしているケース。

これは紛失時のリスクが大きすぎます。

  • 対策:
    1. パスコード必須
      推測されにくい数字に設定してもらう。
    2. 生体認証の活用
      Face ID(顔認証)やTouch ID(指紋認証)なら、手間なくセキュリティが保てます。設定方法がわからない社員がいれば、サポートしてあげましょう。

​ルール3:データの「スマホ保存」禁止。「見るだけ」を徹底する

​スマホ本体(ローカル)にファイルが保存されていると、紛失した時にデータごと失われます。

原則として、データはすべてクラウド(Googleドライブなど)に置き、「スマホは閲覧用」して使う意識を徹底させます。

  • 対策:
    • ​添付ファイルは「端末に保存」せず、プレビュー機能で確認して終わる。
    • スクショの扱い
      前述の通り、スクショは画像データとして本体に残ります。「メモ代わりのスクショ」は避け、テキストでメモを取る習慣を推奨しましょう。

​ルール4:公衆Wi-Fiの利用には注意する

​カフェなどの暗号化されていないフリーWi-Fiは、通信内容を他人に覗き見られるリスクがあります。

業務データを扱う際は、そのまま接続するのは避けましょう。

  • 対策
    • テザリング
      スマホのキャリア回線を使ってPCをネットに繋ぐのが、最も安全で手軽です。
    • HTTPS確認
      ブラウザのURL欄に「鍵マーク(https)」がついているサイト以外では、ID・パスワードを入力しないようにします。

​ルール5:スマホを家族や友人と共有しない

​自宅でスマホを置きっぱなしにし、子供が動画を見るために触る。

微笑ましい光景ですが、誤操作でデータを削除したり、誤ってメッセージを送ったりするリスクがあります。

  • 対策
    • ​「業務データが入っている端末は、ロックをかけたまま管理する」ようお願いします。
    • ​どうしても貸す必要がある場合は、特定のアプリ以外開けない機能(iPhoneの「アクセスガイド」など)を活用しましょう。

​ルール6:紛失時の「報告」を最優先にする

​スマホを無くした時、従業員が一番恐れるのは「怒られること」です。

その恐怖から報告が遅れ、その間に被害が拡大してしまうことがあります。

  • 対策
    • ​「無くしたら即報告! 早ければ早いほど助かる!」と伝えておく。
    • ​「報告が遅れたら問題だが、即座に報告すれば責めない」という姿勢を明確にします。これで隠蔽を防げます。

​ルール7:位置情報検索(iPhoneを探す等)をオンにする

​紛失したスマホがどこにあるかを探したり、遠隔でデータを消去したりするための機能です。

  • 対策
    • ​iPhoneなら「探す」アプリ、Androidなら「デバイスを探す」設定をオンにしておくよう依頼します。
    • ​ただし、これはプライバシーに関わるため「監視するためではなく、紛失時の緊急対応のため」であることをしっかり説明し、納得してもらいましょう。

​ツールに頼らず「運用」でカバーする工夫

​ここからは、さらに一歩進んで、毎日の業務フローの中に「セキュリティ」を自然に溶け込ませるテクニックを紹介します。これも追加コストは0円です。

​Googleアカウントの「公私分離」

​仕事でGmailやGoogleドライブを使っている場合、個人のGoogleアカウント(@gmail.com)でそのまま業務を行っていませんか?

これだと、検索履歴もYouTubeの視聴履歴も、業務データもすべてごちゃ混ぜになります。

  • 【推奨】業務専用のGoogleアカウントを作る
    • ​無料のGmailで構いません。[会社名].[氏名]@gmail.com のような業務専用アカウントを一人ひとつ作らせます。
    • Chromeのプロファイル機能
      PCやスマホのブラウザ(Chrome)には「プロファイル」という機能があります。「仕事用」と「プライベート用」のプロファイルを作成し、切り替えて使うことで、ブックマークやパスワード保存を完全に分けることができます。これだけで「誤爆」のリスクは激減します。

​LINE WORKS(フリープラン)の導入検討

​「LINEで業務連絡」は便利ですが、やはり誤送信のリスクがつきまといます。

そこで、「LINE WORKS(ラインワークス)」のフリープランをおすすめします。

  • メリット:
    • ​見た目や操作感はLINEとほぼ同じなので、教育コストがかかりません。
    • ​「仕事の連絡はこっち」とアプリを分けるだけで、プライベートの友人への誤送信が物理的に防げます。
    • ​会社側でメンバー管理ができるため、退職時にアカウントを停止すれば、情報漏洩を確実に防げます。
    • ​100人まで無料。零細企業には十分すぎるスペックです。

​「紙」という盲点

​デジタルばかりに気を取られがちですが、アナログな情報漏洩も意外と多いものです。

  • パスワードを書いた付箋
    モニターの縁に貼っていませんか? 今すぐ剥がして、鍵のかかる引き出しに入れてください。
  • 裏紙利用
    印刷ミスの書類をメモ用紙(裏紙)として使っていませんか? その裏面に、顧客の住所や売上金額が書いてあったら……。裏紙利用は、機密情報が含まれないものに限定するか、シュレッダーを徹底しましょう。

​そのまま使える!「誓約書・ガイドライン」文面案

​最後に、入社時や、これからルールを適用する際に使える簡単な文面案をご用意しました。

堅苦しい契約書というよりは「お互いの認識を合わせるための確認書」です。社内のチャットやメールで送って、合意をもらうだけでも効果があります。

​【雛形】私用端末の業務利用に関する確認事項

件名:私用スマートフォンの業務利用に関するお願い

​業務効率化のため、個人のスマートフォンを業務に使用することを認めていますが、情報セキュリティと皆さんのプライバシーを守るため、以下のルールを守ってください。

  1. ロック設定
    端末には必ずパスコードまたは生体認証ロックをかけます。
  2. OS更新
    OSや業務使用アプリは、原則として最新版にアップデートします。
  3. データ管理
    顧客情報や社内資料を、端末本体に保存(ダウンロード)しません。
  4. 公衆Wi-Fi
    暗号化されていないフリーWi-Fiには接続しません。
  5. 紛失時の対応
    万が一、端末を紛失した場合は、昼夜を問わず直ちに代表(または担当者)へ報告します。
  6. 退職時の処理
    退職する際は、端末内の業務に関するデータ(連絡先、チャット履歴、画像、書類データ等)を、会社の担当者の立ち合いのもと、速やかに削除します。

​会社は、皆さんが安心して働ける環境を作るためにこのルールを設けています。ご協力をお願いします。

​完璧を目指さなくていい。「鍵」をかける習慣から始めよう

​セキュリティ対策に「終わり」はありませんが、最初から100点を目指す必要もありません。

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​その一言が、大切な会社と、そこで働く大切な仲間を守ることに繋がります。

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