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​「バックオフィスは金を生まない」の大誤解。間接部門こそが「利益率」を支配する論理的理由

​ビジネスの世界には、不思議な「階級」のようなものがあります。

役職の違いではありません。「場所」の違いです。

​スポットライトを浴びて売上をつくる「直接部門(フロントオフィス)」

そして、舞台裏でそれを支える「間接部門(バックオフィス)」

​「間接」と言われると、どうしても「メインじゃない」「おまけ」「なんなら、いなくてもなんとかなる」みたいな、ちょっと寂しいニュアンスを感じませんか?

まるで、ビジネスという試合において、ベンチに座っているだけのような。

​多くの経営者や、そこで働くバックオフィスの人たち自身も、この言葉に少し縛られている気がします。「私たちは稼いでいないから」「コストを使うだけの部門だから」と、どこか引け目を感じてしまっている。

​でも、はっきり言います。その認識は間違いです。

それも、ただの間違いではなく、経営を「損益計算書(PL)」という一面的な数字でしか見ていないから起こる、大きな誤解なんです。

​ここでは、「縁の下の力持ちとして頑張ろう」みたいな精神論は一旦置いておきましょう。

もっとドライに、数字と構造の話をします。「なぜバックオフィスがないと、会社のお金が減るのか」その理由を、一つずつ解き明かしていきたいと思います。

目次

​「いなくても問題ない」は本当か?

​「極論を言えば、バックオフィスなんていなくても会社は回るよ」

飲み会の席や、会議の雑談で、そんな言葉を聞いたことがあるかもしれません。

​たしかに、物理的には回ります。

個人事業主や、創業したばかりのベンチャー企業を見てください。総務部も経理部もありません。社長が自分で営業をして、夜中に請求書をつくり、給与計算をして、備品をAmazonで注文しています。専任のスタッフがいなくても、ビジネスは動いています。

​でも、経済学的に見ると、この状態は「大赤字」なんです。

ここに、「機会損失」という見えないコストが発生しているからです。

​想像してみてください。時給換算で5万円の価値を生み出せる社長やトップセールスマンが、時給1,500円で外注できるような事務作業に1時間費やしている姿を。

帳簿の上では、その1時間のコストは「タダ」に見えるかもしれません。でも実際は、その会社は「4万8,500円の損」をしています。本来なら稼げたはずの利益を、ドブに捨てているのと同じだからです。

​バックオフィスが存在する一番の理由は、「誰かがやってあげる」という優しさではありません。

稼ぐ力がある人たち(フロントオフィス)から、稼ぐこと以外の「ノイズ」をすべて取り上げて、彼らを「稼ぐことに集中させる」

そのための、極めて合理的な分業システムなんです。

​もしあなたの会社にバックオフィス機能がなく、それでも回っているとしたら、それは「いらない」からではありません。

誰か――おそらく社長か、現場のエース――が、その見えないコストを背負い込んで、自分のパフォーマンスを犠牲にしているだけなんです。

​なぜ「うしろぽっけ」なのか

​このサイトでは、バックオフィスのことを「うしろぽっけ」と呼んでいます。

これには、ちゃんとした理由があります。

​そもそも、なんでズボンには「後ろポケット」があるんでしょうか?

財布やスマホを入れるためですよね。

じゃあ、なんでポケットに入れるのか?

​答えはシンプルです。「両手を空けるため」です。

​ビジネスという戦場において、フロントオフィスは常に両手を使って戦わなければいけません。お客さんと握手をしたり、ハンドルを握ったり、プレゼンの資料を指し示したり。その手に、請求書や契約書の束を持たせてはいけないんです。それでは戦えませんから。

​バックオフィスが「後ろ」にいるのは、序列が低いからではありません。

フロントが前を見て走るときに、邪魔にならず、でも必要なときにサッと取り出せる一番いい場所が「後ろ」だからです。

​普段は存在を意識しないくらい自然だけど、ふとした瞬間に手を伸ばせば、必ずそこにある。

ビジネスという服の一部であり、なくてはならない機能。それがバックオフィスです。

​利益の方程式と、守りの価値

​「でも、結局はお金を稼いでないじゃん」

そう思う人もいるでしょう。たしかに、売上(Top Line)をつくるのは営業の仕事です。

​でも、ビジネスの「利益」って、単純な引き算ですよね。

「利益 = 売上 - コスト」

​フロントオフィスは「売上」を最大化しようと攻めます。でも、売上は水物です。景気やライバルの動きで、どんなに頑張っても下がることがあります。

一方で、バックオフィスが担当するのは「コスト」の最小化と、「リスク」の排除です。

​1億円売り上げても、ザル勘定で経費がかさんだり、契約書のミスで損害賠償になったりしたら、利益はゼロどころかマイナスになります。

逆に、売上が横ばいでも、バックオフィスがしっかり機能してムダを削ぎ落とし、オペレーションを最適化すれば、利益率は劇的に上がります。

​会社を存続させるための「お金(内部留保)」を実際に手元に残しているのは、実は「攻め」のフロントではなく、「守り」のバックオフィスによる「利益確定」のプロセスなんです。

​この連載を読み進めてもらえれば、「間接部門」という言葉の響きが、今までとは違って聞こえてくるはずです。

それは単なるコストセンターではありません。

会社の生存を左右する、重要な「司令塔」の役割が見えてくると思います。

​第1章:その「節約」は、実は「大赤字」かもしれない

​「自分でやればタダだから」

これは、コスト意識の高い人ほど陥りやすい罠です。

​起業したての頃や、部署の予算が厳しいとき、ついこう考えてしまいます。「経理担当を雇うと月20万かかる。もったいないから、夜や週末に自分でやろう。そうすれば20万浮くじゃないか」と。

​通帳の残高だけを見れば、たしかに20万円減らずに済みました。

でも、この瞬間に、もっと大きな金額が会社の未来から消え去っていることに気づいている人は、意外と少ないんです。

​「時給」という残酷なものさし

​ちょっと嫌らしい話をしますが、ビジネスにおける人の価値を「時給」で考えてみましょう。

​たとえば、バリバリ稼ぐトップセールスマンや、経営判断をする社長の時給価値が、仮に「3万円」だとします。(実際、会社の利益を牽引する人の1時間は、それくらいの価値を生みます)

​その彼が、領収書の整理やデータ入力に「1時間」かけたとします。

この作業、もしアルバイトの人やアウトソーシングに頼めば、時給「1,500円」でやってもらえる仕事です。

​ここでの計算式はこうです。

30,000円(本来稼げた価値) - 1,500円(作業の市場価値) = 28,500円

​この28,500円が「機会損失」です。

自分でやることで、会社は28,500円分の損を出したことになります。

​「いやいや、実際に財布からお金が出ていったわけじゃないから」と思うかもしれません。

でも、ビジネスは「投資」と「リターン」のゲームです。時給3万円のリソース(資源)を、時給1,500円の作業に突っ込むというのは、投資効率として最悪の判断なんです。

​極端な話、最新のハイスペックなゲーミングPCを買ってきて、それで電卓アプリだけを起動して使っているようなものです。PCが泣いていますよね。

人間も同じです。その人が最も輝く、最も価値を生む場所に時間を集中させない限り、組織全体のパフォーマンスは絶対に上がりません。

​大谷翔平にチケットもぎりをさせるか?

​もっとわかりやすい例を出しましょう。

大谷翔平選手を想像してください。

​彼は野球の天才です。投げてよし、打ってよし。

でも、おそらく身体能力が高いので、スタジアムの掃除をさせても超一流でしょうし、チケットのもぎりをやらせても、ものすごいスピードでさばくかもしれません。

​じゃあ、球団経営者が「人件費削減だ!」と言って、試合前の大谷選手にチケットもぎりをさせるでしょうか?

絶対にさせませんよね。

​なぜなら、彼には打席に立ってもらい、マウンドに立ってもらうことが、球団にとって(そしてファンにとって)最大の利益を生むからです。彼がチケットをもぎっている1時間は、球団にとって「数億円の損失」になりかねません。

​バックオフィスの役割は、ここにあります。

「大谷翔平には、野球だけをさせる」

これが、バックオフィスが存在する究極の理由です。

​「営業さん、あなたは外でお客さんと話してきてください。面倒な書類作成は引き受けます」

「社長、あなたは未来の事業計画を考えてください。今の資金繰り管理はこちらでやります」

​これは、「雑用係」ではありません。

組織のエースたちが、その才能を100%発揮できる環境を整える「才能の最大化装置」なんです。

​こう考えると、バックオフィス部門にかかる人件費は、単なる「コスト」ではなく、フロントオフィスの生産性を爆上げするための「レバレッジ(てこ)」だということがわかってきます。

​「誰にでもできる仕事」の落とし穴

​もう一つ、よくある誤解があります。

「バックオフィスの仕事なんて、マニュアルさえあれば誰でもできる」という言葉です。

​たしかに、データ入力や封入作業など、単純作業に見えるものはあります。

でも、「誰にでもできる」からといって、「誰がやってもいい」わけではありません。

​先ほどの話に戻りますが、誰にでもできる仕事こそ「最も時給単価が低い人(あるいはシステム)」がやるべきなんです。

それが経済合理性です。

​そして、実はここからが重要なんですが、バックオフィスの仕事は、突き詰めると「誰にでもできる仕事」ばかりではありません。

法改正への対応、複雑な税務処理、トラブルを未然に防ぐ契約書のチェック。これらは高度な専門知識を要します。

​これを、専門外の営業マンや経営者が「見よう見まね」でやるとどうなるか?

時間がかかる上に、間違えます。

そして、その間違い(リスク)は、忘れた頃にやってきて、会社に致命的なダメージを与えます。

​プロに任せるということは、「速い」だけでなく、「安全」を買うということでもあるんです。

​第2章:穴の空いたバケツに、水を注ぎ続けるのか?

​「売上はすべてを癒やす」

ダイエーの創業者、中内㓛氏の有名な言葉です。

​たしかに、売上がガンガン伸びているときは、少々の問題は隠れてしまいます。多少の無駄遣いがあっても、事務処理が遅れても、勢いでお金が回るからです。

でも、成長が鈍化した瞬間、あるいは予期せぬ不況が来た瞬間、隠れていた問題が一気に牙を剥きます。

​ここで、会社を「バケツ」、売上を「水」だとイメージしてみてください。

​攻撃力だけでは、水はたまらない

​フロントオフィス(営業・マーケティング)の仕事は、このバケツに水を注ぐことです。

蛇口を全開にして、あるいは外から重い水を運んできて、必死にバケツを満たそうとします。

​じゃあ、バックオフィスの仕事は何か。

それは「バケツの穴をふさぐこと」です。

​もし、バケツの底に小さな穴が無数に空いていたらどうなるでしょうか?

どれだけ優秀な営業マンが大量の水を注ぎ込んでも、水はどんどん漏れていきます。

水位(=利益)は一向に上がりません。

​「今月は利益が残らなかったな。よし、来月はもっと売ってこい!」

多くの会社が、こうやって号令をかけます。

でも、これは穴の空いたバケツに対して「もっと勢いよく水を注げ!」と言っているのと同じです。疲弊するだけで、根本的な解決にはなりません。

​賢い経営なら、まずはガムテープを持って裏側(バックオフィス)に回り、穴をふさぐはずです。

穴さえふさげば、蛇口を少しひねるだけでも、水は確実にたまっていきます。

これが、バックオフィスが担う「利益確定」の機能です。

​「1円のコスト削減」は「10円の売上」に匹敵する?

​少し数字の話をしましょう。

あなたの会社の「経常利益率」はどれくらいですか?

業種にもよりますが、仮に「10%」だとしましょう。

​これは、100万円売り上げて、ようやく手元に10万円残る計算です。

逆に言えば「10万円の利益を出すためには、100万円の売上が必要」ということです。

​ではここで、経理担当者が契約を見直して、毎月の固定費や無駄な手数料を「10万円」削減したとします。

この「10万円のコスト削減」は、経営インパクトとしてどれくらいの価値があるでしょうか?

​答えは「100万円の売上を作ったのと同じ価値」です。

​100万円の商品を売るのは大変です。競合とのコンペに勝ち、顧客に頭を下げ、納品し、クレーム対応もしなければなりません。

でも、バックオフィスにおける「見直し」や「改善」は、社内の努力だけで完結します。しかも、一度仕組み化してしまえば、来月も再来月も自動的に10万円が浮き続けます。

​「営業が取ってきた100万円」と「総務が浮かせた10万円」

PL(損益計算書)上の場所は違っても、最終的に会社に残るキャッシュ(現金)としては、まったく同じ価値なんです。

いや、確実性と継続性を考えれば、バックオフィスが生み出した10万円の方が、質が良いとさえ言えるかもしれません。

​バックオフィスは「金を生まない」なんて、とんでもない誤解です。

彼らは、最も効率的な方法で、利益という果実を直接絞り出しているんです。

​「ゼロの掛け算」という恐怖

​そしてもう一つ。バックオフィスには、コスト削減以上に重要な、もっと恐ろしい役割があります。

それは「ビジネスという計算式に『× 0(掛けル・ゼロ)』をさせないこと」です。

​ビジネスは、足し算だけでできているわけではありません。

(商品力 + 営業力 + 技術力) × リスク管理

この最後の「リスク管理」が、バックオフィスの領域です。

​普段、この係数は「1」です。

商品が良くて営業が強ければ、順当に成果が出ます。

​しかし、法務が契約書の不備を見逃したり、労務が残業管理を怠って労基署に踏み込まれたり、経理が税務申告をミスして重加算税を食らったりしたらどうなるか。

この係数が、突然「0」や「マイナス」になるんです。

​想像してみてください。

どんなに素晴らしい商品を開発しても、知財管理が甘くて特許侵害で訴えられたら、販売停止です。(売上ゼロ)

どんなに社員が頑張っていても、ハラスメント対策を怠ってSNSで大炎上したら、ブランドは崩壊します。(信用ゼロ)

​フロントオフィスが積み上げているのは「足し算」の努力です。

でも、バックオフィスが握っているのは「掛け算」のスイッチです。

​彼らが日々、地味に書類をチェックし、法律改正に対応し、口うるさくルールを守らせようとしているのは、なぜか。

それは、会社全体の努力を一瞬で無にする「ゼロのスイッチ」を押させないためなんです。

​「攻め」の強さは、会社の成長スピードを決めます。

でも、「守り」の強さは、会社の寿命を決めます。

​どんなに速いスポーツカーでも、ブレーキが壊れていたら怖くてアクセルを踏めませんよね。

バックオフィスという高性能なブレーキと整備士がいるからこそ、フロントオフィスというドライバーは、安心してアクセルをベタ踏みできるのです。

​こうして見ると、バックオフィスの仕事は「事務」という言葉では片付けられない、経営の根幹に関わる機能だということがわかってきます。

​第3章:その「ベテラン社員」は、守護神か、それとも時限爆弾か?

​あなたの会社に、こんな人はいませんか?

​「備品の場所から、複雑な給与計算の特例、過去の経緯まで全部知っている」

「困ったときは、とりあえずその人に聞けば解決する」

​いわゆる「お局様」とか「スーパー総務」と呼ばれるような、ベテラン社員さんです。

彼ら彼女らは、一見すると会社の「守護神」のように見えます。実際、頼りになりますし、仕事も速い。

でも、経営的な視点で見ると、実は「最大のリスク要因(時限爆弾)」になり得る存在なんです。

​「あの人がいないと回らない」の恐怖

​なぜ、頼れるベテランがリスクなのか。

答えはシンプルです。「その人がいなくなったら、全てが止まるから」です。

​IT業界には「バス係数(Bus Factor)」という、ちょっとブラックな用語があります。

「プロジェクトの主要メンバーが、明日バスに轢かれて出社できなくなったら、そのプロジェクトは破綻するか?」という指標です。

​バックオフィス業務は、この「バス係数」が極めて低くなりやすい(=特定の人への依存度が高い)領域です。

  • ​「請求書のこの項目の処理方法は、田中さんしか知らない」
  • ​「銀行の振込パスワードの管理場所は、佐藤さんしか知らない」
  • ​「この契約書がなぜこういう条件になったのか、当時の担当者はもういない」

​もし明日、その「守護神」が病気で倒れたら?

親の介護で急に田舎に帰ることになったら?

あるいは、もっと好条件の会社に引き抜かれたら?

​その瞬間、会社の機能は麻痺します。

誰も請求書を出せない、給与が振り込まれない、過去のトラブルの経緯がわからない。

「守護神」が抜けた穴はあまりに大きく、会社はパニックに陥ります。

​依存することの心地よさは、麻薬に似ています。

「あの人に任せておけば安心」という思考停止は、組織として「その人なしでは生きられない体」になっているのと同じなのです。

​バックオフィスが「ブラックボックス」化する理由

​なぜ、バックオフィスはここまで属人化しやすいのでしょうか。

それは、営業などのフロント業務と違って「成果が見えにくく、プロセスが軽視されがちだから」です。

​営業なら「どうやって売ったか」がチームで共有されやすいですが、総務や経理の仕事は「結果(書類ができていること)」だけが求められがちです。

「どうやって作ったか」は、誰も気にしません。

​すると、担当者はどうするか。

自分だけのやり方、自分だけのExcelマクロ、自分だけのメモ書きで、業務を構築し始めます。

これが「秘伝のタレ」化の始まりです。

​「マニュアルを作るより、自分でやったほうが速い」

「いちいち説明するのが面倒くさい」

​こうして、業務はどんどんその人の頭の中だけに格納され、外からは中身が見えない「ブラックボックス」になっていきます。

ブラックボックス化した業務は、改善もできません。誰も手が出せないからです。

非効率なやり方が何年も温存され、担当者のプライドと共に「聖域」となってしまいます。

​「職人芸」を「科学」に変える

​誤解しないでいただきたいのは、そのベテラン社員さんが悪いわけではないということです。

むしろ、会社のために責任感を持って仕事を抱え込んでくれた結果かもしれません。

​悪いのは、「仕組み(システム)」ではなく「人」に依存し続けた、経営の怠慢です。

​バックオフィス強化の第一歩は、この「職人芸(アート)」を「科学(サイエンス)」に変えることです。

  • 暗黙知(頭の中にある知識)形式知(マニュアルやデータ) に変える。
  • ​「あの人しかできない」を「誰でもできるようにする」
  • ​「記憶」に頼るのをやめて、「記録」に残す。

​ここでようやく、我々が提唱する「うしろぽっけ」のようなITツールやクラウドシステムの出番が来ます。

​ツールを導入する本当の目的は、「楽をするため」だけではありません。

業務のプロセスをシステムという「型」に流し込むことで、強制的に標準化し、誰でも扱える状態にする(ブラックボックスを開ける) ためなんです。

​「うしろぽっけ」のツール群が、なぜシンプルで、誰にでも使えるデザイン(UI)にこだわっているのか。

それは、特定の「詳しい人」を作らないためです。

新入社員でも、社長でも、誰が触っても同じ結果が出せる。これこそが、組織としての「強さ」です。

​究極の目標は「誰でも代わりがきく」状態

​「あなたじゃなきゃダメなんだ」

これは、恋愛ドラマなら殺し文句ですが、ビジネスのバックオフィスにおいては敗北宣言です。

​最高のバックオフィスとは、

「誰がやっても、同じクオリティで、滞りなく回る状態」

です。

​冷たい言い方に聞こえるでしょうか? 「社員を歯車扱いするのか」と。

違います。逆です。

​「誰でも代わりがきく」状態を作って初めて、その人は「そのルーチンワークから解放される」のです。

属人化から開放されたベテラン社員は、その豊富な知識を使って、もっとクリエイティブな仕事――業務改善の企画や、若手の教育、経営への提言――に時間を使えるようになります。

​システムや仕組みに任せられることは、任せてしまう。

そして人間は、人間にしかできない「判断」や「配慮」に集中する。

​これこそが、バックオフィスの生産性を爆発的に高める唯一の方法であり、「うしろぽっけ」が目指す「両手が自由な状態」の完成形なのです

​第4章:AIは「敵」か、それとも最強の「相棒」か?

​「AIが進化すれば、バックオフィスの仕事はなくなる」

最近、まことしやかにこう言われています。

​ChatGPTやGeminiのような生成AI、そしてRPA(ロボットによる業務自動化)の進化は凄まじいです。

今まで人間が手入力していたデータは一瞬で処理され、契約書のチェックもAIが数秒で終わらせる時代がすぐそこに来ています(というか、もう来ています)。

​では、バックオフィスの人間は不要になるのか?

私の答えは「NO」です。

ただし、「『作業(ワーク)』しかしていない人は不要になる」という厳しい条件がつきます。

​「作業」はロボットへ、「仕事」は人間へ

​ここで、言葉の定義をはっきりさせましょう。

「作業」と「仕事」は違います。

  • 作業(Task): 決まったルール通りに手を動かすこと。正解が一つしかないもの。(例:請求書のデータ入力、経費精算のチェック、給与計算)
  • 仕事(Work): 状況に合わせて判断し、価値を生み出すこと。正解がないもの。(例:例外的なトラブルへの対応、働きやすい制度の企画、落ち込んでいる社員へのケア)

​残酷な事実ですが、「作業」において、人間はもうAIに勝てません。

人間は計算ミスをするし、疲れるし、機嫌が悪くなるし、サボります。でもAIは、24時間365日、文句ひとつ言わずに爆速で正確に処理し続けます。

この領域でAIと張り合おうとするのは、竹槍で戦車に挑むようなものです。

​だから、バックオフィスの人間がやるべきことは、「作業」を喜んでAIに明け渡すことです。

「私の仕事を奪わないで!」と抵抗するのではなく、「面倒なことをやってくれてありがとう!」と押し付けるのです。

​そうして空いた両手で、人間にしかできない「仕事」をする。

これこそが、AI時代の生存戦略です。

​「行間」を読むのは、まだ人間にしかできない

​では、人間にしかできない「バックオフィスの仕事」とは何か。

それは「文脈(コンテキスト)の理解」と「感情への配慮」です。

​例えば、経費精算で考えてみましょう。

「タクシー代 3万円」という申請があったとします。

ルール上は「上限1万円」だとしましょう。

​AIなら、0.1秒で「規定違反:却下」と判定します。これで終わりです。正しいですが、冷たいです。

​でも、人間のバックオフィス担当者なら、そこに「文脈」を見出せるかもしれません。

「あの日、電車が止まるほどの大雪だったな。この営業さんは大事な商談のために、やむを得ずタクシーを使ってくれたのかもしれない」

​そう気づけば、対応は変わります。

「規定上はNGですが、今回は緊急避難として特例申請を出しましょう。その代わり、理由書を一筆書いてくださいね」と提案できるかもしれません。

​この「粋な計らい」や「ルールの運用におけるさじ加減」

これは、現場の空気感や、社員の顔色、その時の状況という「行間」を読める人間にしかできません。

​ルールは守らなければいけませんが、ルールに縛られて思考停止してはいけない。

「AIはルールを守り、人間はルールを作る(そして時々、賢く破る)」

この役割分担ができるバックオフィスこそが、強い組織を作るのです。

​「社内カスタマーサクセス」という考え方

​これからのバックオフィス担当者の肩書きは、「事務員」ではなく「社内カスタマーサクセス」になるべきだと私は思っています。

​カスタマーサクセスとは、「顧客を成功させる仕事」です。

バックオフィスにとっての顧客は誰か? 「社員(フロントオフィス)」です。

​社員が気持ちよく働けているか。

無駄な手続きでストレスを感じていないか。

法的なリスクに怯えずにチャレンジできているか。

​彼らを「成功」させるために、環境を整え、障壁を取り除く。

これはもう、単なる管理部門ではありません。「ホスピタリティ産業」です。

​AIがやってくれるのは「マイナスをゼロにする(ミスをなくす)」ところまでです。

そこから先、「ゼロをプラスにする(やる気を出す、安心感を与える)」のは、人間の温かいコミュニケーションにかかっています。

​「うしろぽっけ」というブランド名には、そんな思いも込めています。

ポケットは、体温が伝わるくらい近くにあるものです。

冷徹なシステムとして管理するのではなく、「いつもそばにいて、困ったときに体温を感じられる距離感でサポートする」

それが、デジタル全盛の時代だからこそ輝く、アナログな価値なのだと思います。

​第5章(最終章):透明な「OS」としてのプライド

​ここまで、かなり長い時間をかけて「バックオフィス」という仕事の解像度を上げる話をしてきました。

​最後にこの話をどう着地させるか悩みましたが、結局のところ、精神論や感情論ではなく、やはり「構造」の話で締めくくるのが一番誠実だと思いました。

​「感謝されるべきだ」とか「主役になるべきだ」といった話ではありません。

もっとドライで、でももっと本質的な「組織のOS(オペレーティングシステム)」としてのあり方についてです。

​「普通」を維持する、という異常な難易度

​私たちは普段、iPhoneやWindowsを使っていて、OSのことを意識しません。

アプリがサクサク動いて当たり前。ネットに繋がって当たり前。

でも、ひとたびOSがクラッシュしたり、バグったりすると、途端に全ての作業がストップし、私たちは激怒します。「なんで動かないんだ!」と。

​バックオフィスの仕事は、これによく似ています。

​給与が毎月25日に振り込まれること。

オフィスに行けばWi-Fiが繋がること。

法改正があっても、いつの間にか社内規定が対応していること。

​これらは、社員にとって「空気」のように当たり前のことです。

でも、この「当たり前」を維持するために、裏側でどれだけ膨大なパラメータ調整と、メンテナンスと、バグ修正(トラブル対応)が行われているか。

その複雑さは、表側の人間には想像もつきません。

​「何も起きない」

これこそが、バックオフィスにおける最高難易度の成果です。

トラブルが起きない、不満が出ない、法的リスクが顕在化しない。

この「平穏な日常」を作り出すために、私たちは日々、カオスと戦っています。

評価されにくいのは当然です。私たちの成果物は「マイナスが発生しなかったこと(ゼロ)」なのですから。

​でも、わかる人にはわかります。

優秀なエンジニアが良いコードを見ると「美しい」と感じるように、優秀な経営者は、整備されたバックオフィスを見ると「強い」と感じるものです。

​「技術的負債」を溜めないために

​システム開発の世界には「技術的負債(テクニカル・デット)」という言葉があります。

「とりあえず動けばいいや」と、汚いプログラムコードを書き殴って放置しておくと、後で修正しようとした時に莫大な利子がついて返済不能になり、システムが破綻する現象のことです。

​これは組織運営でも全く同じことが言えます。

​「とりあえず売上が立てばいい」と、契約管理を適当にする。

「面倒だから」と、属人的なアナログ作業を放置する。

「人がいないから」と、労務問題を先送りにする。

​これらはすべて、組織にとっての「負債」です。

スタートアップの勢いがある時は誤魔化せても、組織が大きくなった瞬間、この負債は「組織崩壊」という形で一括返済を迫られます。

​バックオフィスが日々やっている「口うるさいチェック」や「ルールの徹底」は、実はこの「組織的負債」を溜め込まないための、地道な返済作業なんです。

​フロントオフィスが「今」の売上を作るなら、バックオフィスは「未来」の負債を消している。

どちらが欠けても、会社は永続できません。

「攻め」と「守り」という対立構造ではなく、「短期的な成果」と「長期的な存続」という時間軸の分担なのです。

​インフラへの投資は「コスト」ではない

​そう考えると、バックオフィスへの投資(ツール導入や人材採用)を「コスト」と呼ぶことのナンセンスさが際立ちます。

​道路がボコボコで、電気も通っていない土地に、超高層ビルは建ちません。

それと同じで、バックオフィスという「地盤」が緩い会社に、大きな売上という「重量物」を載せたら、会社は沈みます。

​GoogleやAmazonといった巨大企業が、なぜあそこまで巨大になれたのか。

それは、彼らのバックオフィス機能(法務、財務、人事システム)が、世界最強レベルで堅牢だからです。

強固な岩盤の上だからこそ、彼らは安心してクレイジーな実験(新規事業)を積み上げることができるのです。

​もし経営者が「もっと会社を大きくしたい」と願うなら、見るべきは売上目標のグラフだけではありません。

足元の地盤――バックオフィスが、その重量に耐えられる設計になっているかを確認すべきです。

そこへの投資をケチるということは、砂上の楼閣を建てようとするのと同じくらい、リスクの高いギャンブルです。

​「黒子」であることの美学

​私は、「間接部門」という言葉があまり好きではないと言いましたが、同時に「主役になりたい」とも思っていません。

映画で言えば、私たちは主演俳優ではなく、脚本家や照明技師、あるいは劇場そのものを管理する支配人でありたい。

​観客(顧客)は、主演俳優(サービス・商品)を見に来ます。それでいいんです。

でも、照明が落ちれば映画は見れません。脚本が破綻していれば名演技も台無しです。

​「誰のおかげで映画が見れていると思っているんだ」なんて恩着せがましいことは言いません。

ただ、エンドロールの片隅に名前が載り、舞台裏で「今回の現場もトラブルなく回ったな」とコーヒーを飲む。

そんな「プロフェッショナルの黒子」としての美学が、この仕事にはあると思います。

​最後に:「うしろぽっけ」の役割

​長くなりましたが、私たち「うしろぽっけ」が提供したい価値も、ここにあります。

​私たちは、あなたがビジネスという舞台で輝くための、主演俳優にはなり得ません。

ですが、あなたの衣装の「後ろポケット」に入っている、小さなマルチツールのような存在でありたいと思っています。

​ボタンが取れそうな時にサッと直せる。

ネジが緩んだ時に締め直せる。

そんな、地味だけど「あると助かる」機能を提供し続けること。

​あなたが、つまらない事務作業やトラブルに足を取られず、前だけを向いて全力疾走できるように。

私たちは、あなたの視界に入らない「背中側」から、静かにサポートし続けます。

​「間接」上等。「コストセンター」結構。

そんな言葉には目もくれず、今日も淡々と、組織のOSをアップデートしていきましょう。

​それが、私たちバックオフィスの、誇り高い「仕事」なのですから。

さあ、あなたの「うしろぽっけ」を整えましょう

組織改革なんて大げさなことから始める必要はありません。
まずは、日々の「ちょっと面倒」をなくすことから。

うしろぽっけでは、バックオフィス業務を少しだけ楽にする、
シンプルでかわいいWebツールを公開しています。

記事のご感想や、「こんなツールが欲しい」というリクエストもお待ちしています。

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