「サポート役」に憧れた先に待つ、手柄なき戦場
「私、裏方で支えるのが好きなんです」
転職面接でよく聞くこの言葉。「自分が前に出るよりも、頑張る誰かをサポートして、チームで目標を達成したい」。そう考えて営業事務(営業アシスタント)を選ぶ人は非常に多いです。
求人票にも「営業さんの頼れるパートナー」「『ありがとう』がやりがい」と、美しい言葉が並んでいます。
しかし、いざ現場に入ると、その「パートナーシップ」が対等ではないことに気づかされます。
そこにあるのは、ドラマのような「二人三脚」ではありません。営業担当者が散らかした仕事をひたすら片付け、彼らが忘れた約束の謝罪を代行し、それでも手柄は全て営業のものになる。そんな残酷なまでの「主従関係」です。
ノルマはないが、「理不尽」はある
「営業事務にはノルマがありません」。これは事実です。
しかし、「ノルマに追われて殺気立った営業担当者からの、論理破綻したオーダー」という、別のストレスが存在します。
売上が上がれば営業の実力、トラブルが起きれば事務のミス。
成功の果実は分配されず、失敗の責任だけが回ってくる。この「リスクとリターンの不均衡」こそが、営業事務における最大の採用ギャップです。
この記事では、「オフィスの花形」というイメージの裏で、都合の良い「影武者」として消費されないための、業務のリアルな実態と自衛策を徹底解剖します。
1. 「見積書作成」という名の「探偵業務」
求人票には「見積書の作成」としか書かれていません。
しかし、現場で求められるのは、単に数字をタイピングするスキルではなく「営業の雑な指示を解読する推理力」です。
解読不能なメモと、後出しジャンケン
営業担当者からの依頼は、常に不完全です。
- 「あれ、いつものやつで適当に見積もっておいて!」(いつものやつとは?)
- 「A社にB商品を100個。急ぎで!」(定価でいいのか? 値引き率は? 納期は?)
事務担当者は、過去の履歴を漁り、社内規定を確認し、「たぶんこれだろう」と予測して作成します。しかし、それで間違っていれば「なんで確認しなかったの?」と怒られ、確認すれば「そんな細かいこと聞いてくるなよ、忙しいんだから」と舌打ちされる。
この「聞いても地獄、聞かなくても地獄」のジレンマが、日常的に発生します。
「利益計算」の責任転嫁
さらに恐ろしいのが、原価計算のミスです。
営業担当者が原価を間違えて伝えてきたせいで、赤字の見積書を出してしまった場合。
なぜか怒られるのは、最終的に入力した事務担当者です。
「お前がプロなら、この原価がおかしいって気づくべきだろう!」
営業の数字に対する甘さを、事務が「最後の砦」としてカバーすることを強要される。入力代行ではなく「リスク管理代行」をさせられているのです。
2. 「納期調整」という名の「物理法則との戦い」
「受発注・納期管理」という業務。これは事務作業ではなく、「実現不可能な約束をなんとかする魔法使い」の仕事です。
「明日納品」という無理ゲー
営業担当者は、契約欲しさに平気で無理な約束をします。
「大丈夫です! 明日お届けします!」
その報告を受けた事務担当者の手元には、在庫切れの商品と、物理的に1日はかかる配送ルートの現実があります。
ここから、事務担当者の孤独な戦いが始まります。
工場に頭を下げて製造ラインをねじ込んでもらい、配送業者に電話して「なんとか特別便で…」と懇願し、それでも間に合わなければ、顧客に「配送トラブルで…」と嘘をついて謝罪する。
感謝されるのは「営業」、謝るのは「事務」
必死の調整でなんとか間に合った時、顧客は言います。「さすが田中さん(営業)、仕事が早いね!」。
間に合わなかった時、顧客は言います。「事務の手配ミスで遅れてるんだって? 困るよ」。
汗をかいて走り回った事務の努力はブラックボックスの中に消え、営業の「手柄」か、事務の「ミス」のどちらかに変換される。この「成果の搾取」構造に気づいた時、多くの事務担当者が虚無感に襲われます。
3. 「電話対応」という名の「人間盾(ヒューマンシールド)」
居留守の共犯者にされるストレス
「営業さんお願い」という電話に対し、隣でスマホをいじっている営業担当者が目で合図を送ってきます。「居ないって言って」。
事務担当者は、息をするように嘘をつかなければなりません。
「申し訳ございません、あいにく席を外しておりまして…」
電話の相手が怒っている時ほど、営業は電話に出ません。事務担当者は、事情もわからないまま、顔も見えない相手からの罵倒を、営業担当者の代わりに受け止め続ける「防波堤」になります。
「伝言」は伝わらない
さらに、「折り返し電話させます」と伝えても、営業担当者が折り返さないことが多々あります。
数時間後、再びかかってきた電話で怒られるのは、またしても事務担当者です。
「さっき伝えただろ! どうなってるんだ!」
自分のミスではないのに、組織の代表として謝り続ける。
この「サンドバッグ業務」が、「電話対応あり」というたった一言に含まれているのです。
【「盾」になりすぎていませんか?】
他人のミスをかばい、理不尽な怒りを受け流すことが「日常」になっていませんか?
それは高い適応能力ですが、同時に心を殺す行為でもあります。あなたが職場で「都合のいい緩衝材(ピエロ)」になっていないか、診断してみましょう。
👉 職場でのピエロ度、気づかれ度を診断する
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4. 「気配り」は評価されず、スキルはガラパゴス化する
インセンティブという名の「身分制度」
同じフロアで、同じ目標に向かって働いているはずなのに、給与体系には明確な壁があります。
目標達成時、営業には「報奨金」が出て、全社総会で表彰されます。
事務には、「いつも通りのお給料」と、営業からの「余ったお菓子」が配られるだけ。
「縁の下の力持ち」とは聞こえがいいですが、現実は「インフラ扱い」です。電気や水道と同じで、あって当たり前、止まればクレーム。感謝という対価が得られにくい構造なのです。
「社内調整力」は転職でゴミになる
長く勤めれば勤めるほど、「あの気難しい工場長を動かすコツ」や「部長の機嫌を損ねない書類の出し方」といった「社内政治スキル」が熟練していきます。
しかし、これは一歩外に出れば1円にもならないスキルです。
職務経歴書を書こうとした時、愕然とします。「受発注」「電話対応」。書けることがこれしかない。
高度なマルチタスクと危機管理を行ってきたはずなのに、それは「事務職」という枠組みの中では「定型業務」として処理されてしまう。「何でも屋」になりすぎて、「何者でもない」まま歳を重ねる恐怖が、営業事務にはあります。
5. 【解決策】面接で見抜く「奴隷契約」回避のキラー質問
「パートナー」か「下請け」かを見極める
では、どうすれば「都合のいい影武者」にならずに済むのでしょうか。
面接で以下のポイントを確認し、会社が事務職をどう定義しているかを見抜く必要があります。
1. 担当比率と「雑用」の境界線
- 質問
「事務の方1名につき、何名くらいの営業担当者をサポートする体制でしょうか? また、個人のスケジュール管理や経費精算も業務に含まれますか?」 - 狙い
「1人で10人以上」は物理的に無理(=放置される)。「個人の精算も含む」場合、それは事務ではなく「秘書兼雑用係」です。
2. システム化の進捗度
- 質問
「受発注業務は、専用のシステムがありますか? それともFAXやメールからの手入力がメインでしょうか?」 - 狙い
「FAXが現役」の会社は、入力ミス=事務の責任になるリスクが高く、業務量の天井が見えません。システム化への投資を渋る会社は、事務員の残業でカバーしようとする傾向があります。
3. 評価と発言権
- 質問
「営業部門が目標を達成した際、事務スタッフにはどのような形で還元・評価される仕組みがありますか?」 - 狙い
ここで「えっと、特にないけど…みんなで飲みに行くくらいかな」と言葉を濁す会社は危険です。「賞与評価に加点される」「事務リーダーのポストがある」など、明確なキャリアパスがあるかを確認しましょう。
「言いにくいこと」を笑顔で聞くリハーサル
面接で「FAXですか?」「お金もらえますか?」とは聞きにくいものです。
しかし、ここを確認しないのは、目隠しをして地雷原を歩くようなもの。
大切なのは、相手を不快にさせない「聞き方のテクニック」です。
【面接練習ツール:Reflect(リフレクト)】
うしろぽっけの「Reflect」で、この「キラー質問」を練習してみましょう。
Before(不安そうに):
「あの…評価とかって、どうなってるんですか…?」
After(プロらしく):
「チームの一員として数字に貢献したいと考えています。営業部門の達成時に、事務スタッフがどのように評価・還元される仕組みがあるか、モチベーションの一環としてお伺いできますか?」
内容は同じでも「表情」と「枕詞」で印象は180度変わります。
自分の顔を録画して、「ポジティブな質問」に見えるかチェックしてください。この準備が、あなたの今後数年間の働きやすさを決定づけます。
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あなたは「脇役」ではない
営業事務は、決して「主役(営業)」の引き立て役ではありません。
商品とお金を正確に動かす、物流と信用の要(かなめ)です。
もし今の職場で、あなたが単なる「便利屋」として消費されていると感じるなら、それはあなたの能力不足ではなく、会社の構造の問題です。
「サポートが好き」「段取りが好き」というあなたの素晴らしい才能を、搾取する場所ではなく、プロフェッショナルとして尊重してくれる場所で発揮してください。
【あなたの適正は本当に「事務」?】
実は、あれこれ気が利くあなたは、事務よりも「営業」そのものや、「広報」「人事」、あるいは「Sales Ops(営業企画)」の方が向いているかもしれません。
思い込みを捨てて、フラットに自分の可能性を診断してみませんか?
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