「華やかなパーティ」? いいえ、あなたは「社会と会社を繋ぐ架け橋」であり「信頼の番人」です。
「広報になりたいです。流行に敏感だし、SNSで発信するのが好きで、会社の魅力をキラキラ伝えたいからです!」
就職活動中の学生や、未経験の転職希望者から、こうした志望動機をよく耳にします。
しかし、現場で汗をかいている現役の広報担当者は、優しく、しかし真剣な眼差しでこう問いかけるでしょう。
「では、必死に書いたプレスリリースを記者に100通送って、99通無視されても、翌朝また『新しい情報です!』と笑顔で電話できますか? もし自社製品に不具合が見つかった夜、ネットでの批判を見つめながら、逃げずに誠実な『お詫び文』を作成できますか?」
広報(Public Relations)の仕事。
それは、雑誌の取材を受けてニコニコするだけの仕事ではありません。
「無関心な世間」に対して、会社の想いを届けるために走り回る「地道な伝道師(エバンジェリスト)」であり、会社が危機に瀕した時には、矢面に立って信頼を守り抜く「防波堤」です。
広告はお金を払えば掲載されますが、広報はお金を払いません。
武器は「情報」と「情熱」と「誠実さ」だけ。
「お願いです、この技術は社会のこの課題を解決するんです!」と、プライドを捨てて頭を下げ、記事にしてもらう。
今回は、そんな華やかさとは程遠い、しかし会社の「ブランド」と「信頼」をたった一人(あるいは少人数)で背負う広報に向いている人の「リアルな適性」を5つ紹介します。
必要なのは、映え写真のスキルではありません。
99回フラれても1回の掲載を喜べる「不屈のメンタル」と会社への「深い愛情」です。
特徴1:【翻訳家】「地味な機能」を「社会を変える物語」に変換する
広報の基本業務の一つに「プレスリリース作成」があります。
しかし、開発現場から上がってくる情報は、往々にして専門的で、一般の人には難解です。
「新素材Xを使用した部品を開発しました。従来比で耐久性が15%向上しています」
これをそのまま発信しても、多忙なメディア関係者は「ふーん(ニュースバリューがない)」と判断し、ゴミ箱行きになってしまいます。
向いている人は、この地味な事実情報を「社会記号(ソーシャルコンテキスト)」に翻訳します。
- 翻訳前(事実)
「耐久性がアップした部品」 - あなたの翻訳(物語)
「インフラ老朽化と人手不足に悩む日本を救う! 交換頻度を減らし、作業員の負担を劇的に減らす『メンテナンスフリーの奇跡の部品』」
「モノ(Product)」を売るのではなく、その背後にある「物語(Story)」と「社会的意義(Social Good)」を伝える。
つまらない事実を、誰もが読みたくなるニュースに変える「編集者視点」こそが、広報の最大の武器です。
特徴2:【信頼の開拓者】「既読スルー」されてからが仕事の始まり
広報の仕事の半分は、新聞記者やテレビ局のディレクターにネタを提案する「メディアキャラバン(メディアプロモート)」です。
これは、ある意味で営業以上に過酷なアプローチ業務です。
「忙しいから!」と電話を切られるのは日常茶飯事。
心を込めてメールを送っても、返信が来るのは100件中1件あれば良い方です。
「こんな宣伝みたいなネタ、ニュースにならないよ」と厳しい指摘を受けることもあります。
向いている人は、この「拒絶の嵐」にいちいち傷つきません。
「おっ、今日は電話に出てくれた! 一歩前進!」
「この記者は環境問題には興味がないけど、教育問題には関心があるのか。じゃあ切り口を変えて、別のネタを持ってまた会いに行こう」
反応がないことを「否定」と捉えず、「まだタイミングや切り口が合っていないだけ」と前向きに捉えられる「鈍感力」と「粘り強さ」
この「泥臭い継続力」がある人だけが、あの日経新聞の一面や、テレビの特集枠を勝ち取ることができます。
特徴3:【火消しのプロ】炎上の中で「冷静な氷」になれる
現代の広報にとって避けて通れないのが「危機管理広報(クライシスマネジメント)」です。
SNSでの不適切発言、製品の不具合、情報の漏洩……。
ある日突然、スマホの通知が鳴り止まなくなり、会社が危機的状況に陥ることがあります。
社内が「どうしよう!」「隠した方がいいんじゃないか?」「誰の責任だ!」とパニックになっている時、広報に向いている人の頭脳は逆に冷えていきます。
- 事実確認
「推測は不要です。まずるは事実確認。誰が、いつ、何をしたか。隠さず全部出してください」 - 初動対応
「言い訳は後です。まずはお客様への謝罪と、現状の報告を、1時間以内にリリースします」 - 文面作成
「『遺憾です』という言葉は他人事に見えます。ここは『深くお詫び申し上げます』とし、再発防止策を具体的に入れましょう」
全員が感情的になっている中で、一人だけ「氷のように冷静」になり、社会からの信頼を回復するための最短ルートを計算できる。
「平時の笑顔」より「有事の誠実さ」を持てる人こそ、真の広報です。
特徴4:【社内のチアリーダー】「読まれない社内報」に魂を込める
広報の仕事には、社外への発信だけでなく、社員に向けた「社内広報(インナーコミュニケーション)」という重要な役割があります。
しかし、悲しいことに、一生懸命作った社内報やイントラネットの記事は、忙しい現場の社員にはスルーされがちです。
「広報は売上も作らずに、遊んでるようでいいよな」なんて陰口を叩かれることもあります。
向いている人は、それでもめげずに「お節介」を焼き続けます。
- 「営業の〇〇さん、MVPおめでとう! そのノウハウ、全社に広めさせてください!」
- 「開発チームの苦労話、すごく感動的だから記事にして残しましょう!」
組織が大きくなると、隣の部署が何をしているか分からなくなり、セクショナリズムが生まれます。
そんな中で、部署と部署を繋ぎ、「ウチの会社って、結構いい人たちがいるじゃん」と社員に再認識させる。
目立たないけれど、組織の「エンゲージメント(愛社精神)」という土壌を耕しているのは、あなたの地道な活動なのです。
特徴5:【狂気的な愛】自社製品の「一番のファン」でいられる
テクニック以上に重要なこと。それは「愛」です。
広報は、自分が「いい」と心から思っていないものを、メディアや社会に紹介することはできません。
記者はプロです。あなたが「仕事だから仕方なく紹介している」のか、「本当に心から推している」のか、一瞬で見抜きます。
向いている人は、自社への「愛」が狂気のレベルです。
- 自社製品をプライベートでも誰よりも使い込んでいる。
- 社長の理念や創業ストーリーを、自分の言葉で熱く語れる。
- 会社の悪口を言われると、自分の家族を侮辱されたように悔しがる。
「私は、この素晴らしい会社やサービスを、世界中の人に知らせる使命がある」。
この宗教的とも言える「強い信念」があるからこそ、99回無視されても、100回目の電話をかける勇気が湧いてくるのです。
AI時代、広報は「配信係」から「関係構築家(Relation Builder)」へ
「プレスリリースの自動作成や、メディアリストの作成はAIで効率化される」と言われます。
確かに、定型的な文章作成やデータ集めといった作業は、AIの方が得意でしょう。
しかし、「記者と膝を突き合わせて本音を聞き出す」「炎上しているSNSの文脈(コンテキスト)を読んで、適切な言葉を選ぶ」「社員の熱量を言語化する」という仕事は、感情を持たないAIには絶対に不可能です。
AIは、「この記者は最近こういう記事を好んで書いているから、この切り口で提案してみよう」という「人間臭い配慮」はできません。
AIは、不祥事の謝罪会見の場で、汗をかきながら誠心誠意頭を下げることはできません。
面倒な作業から解放されたあなたは、より深く「人」と向き合い、メディア、社会、そして社員との「信頼関係(Public Relations)」を構築する「Relation Builder」として、かけがえのない存在になります。
まとめ:あなたは会社の「声」であり「顔」だ
もしあなたが、
「成果が数字で見えにくくて評価されない」
「社内でも社外でも孤独を感じる」
と悩んでいるなら、思い出してください。
あなたの書いた一本のプレスリリースがきっかけで、その商品を知り、生活が豊かになった人がいます。
あなたの誠実な対応のおかげで、会社の信頼が守られ、社員が安心して働けるようになった瞬間があります。
社長以外で、会社の看板を背負って堂々と社会に発信できるのは、広報だけです。
あなたは、会社の「声(Voice)」そのものです。
その誇りを胸に、今日も地道に、泥臭く、しかし誰よりも誠実に、会社の愛を叫び続けてください。
あなたの「隠れた才能」と「お疲れ度」、こっそり測ってみませんか?
「記事を読んで『これ私のことかも?』と思ったけど、実際どうなんだろう?」
「毎日メディアにアプローチしても反応がなくて、笑顔の裏で心が折れそう……」
そんなふうに思った方のために、うしろぽっけでは2つの無料診断を用意しました。
どちらも登録不要、休憩時間の1分でできるので、仕事の息抜きにポチポチっと遊んでみてください。
① 12問でわかる「バックオフィス適職診断」
一口に事務職と言っても、「正確さが命の経理タイプ」もいれば、今回の記事のように「言葉と情熱で世界を変える広報タイプ」もいます。
心理学(RIASEC理論)に基づいて、あなたの性格が一番輝くポジションを分析します。
② 笑うのに疲れたら。「職場ピエロ度診断」
広報は、会社の不祥事や批判に対しても、常に冷静に、時には笑顔で対応し続けなければなりません。
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