「学生の相談役」? いいえ、あなたは「泥臭い営業マン」であり「詐欺師を見抜く刑事」です。
「人事の採用担当になりたいです! 学生の人生相談に乗って、背中を押してあげたいからです!」
就職活動中の学生や、未経験の転職希望者から、こんなキラキラした志望動機をよく聞きます。
しかし、現場で血と汗を流している採用担当者は、心の中で乾いた笑いを浮かべながらこう思うはずです。
「人生相談? 甘いな。こっちは『入社』という契約をもぎ取る、ゴリゴリの営業なんだよ。しかも、商品は『ウチの会社』、顧客は『人生を迷う人間』という、世界一売るのが難しい営業だ」と。
採用担当(リクルーター)の仕事。
それは、ただ説明会でニコニコ座っている仕事ではありません。
ターゲット(優秀な人材)を見つけ出し、口説き落とし、競合他社というライバルから守り抜き、入社というゴールまで伴走する。
その過程では、信じていた内定者に連絡を無視されたり(サイレントお祈りならぬサイレント辞退)、入社前日に「やっぱり辞退します」と言われたり、現場の上司から「なんでいい人が全然来ないんだ!」と理不尽に詰められたりします。
華やかに見える舞台裏は、厳格な数字(KPI)との戦いであり、人間の「嘘と裏切り」との戦いです。
今回は、そんな過酷な、しかし会社の「遺伝子」を直接作るクリエイティブな仕事である、採用担当に向いている人の「リアルな適性」を5つ紹介します。
必要なのは、単なる愛想の良さではありません。
獲物を逃さない「ハンターの執念」と、傷ついても3秒で立ち上がる「鋼のメンタル」です。
特徴1:【ハンター視点】「待ち」ではなく「狩り」に出る攻撃性
一昔前の採用は「求人広告を出して、応募を待つ」という農耕型でした。
しかし、今の時代(特に少子化・人手不足)は違います。待っていても優秀な人は来ません。
向いている人は、「ダイレクトリクルーティング(スカウト)」を苦痛ではなく「狩り」として楽しめる人です。
- 索敵(サーチ)
転職サイトのデータベースから、「この経歴の人はウチに合う!」という原石を見つけ出す。 - 狙撃(スカウトメール)
定型文ではなく、「あなたのここが素晴らしい!」とラブレターのような個別のメールを送りつける。 - 捕獲(面談)
「まずはカジュアルに話しませんか?」と誘い出し、会社の魅力を刷り込む。
「応募が来ない」と嘆くのではなく「来ないなら、こっちから捕まえに行けばいいじゃない」と思える攻撃性。
営業職と同じく「目標数字(採用人数)を達成するためなら、泥水をすする覚悟がある」というハングリー精神を持った人が、これからの採用担当のスタンダードです。
特徴2:【名優(アクター)】どんな時でも「理想の会社の顔」を演じ切れる
採用担当は、求職者にとって「最初の会社の人」です。
あなたの印象が、そのまま「会社のブランドイメージ」になります。
たとえ昨晩、部長に「お前の採用した新人が使えない!」と怒鳴られて落ち込んでいようが、プライベートで大失恋していようが、説明会や面接の場(ステージ)に立ったら、スイッチを入れなければなりません。
「ようこそ! 当社はこんなに風通しが良くて、素晴らしい会社ですよ!(満面の笑み)」
向いている人は、この「女優・男優スイッチ」を持っています。
自分のネガティブな感情を完全に遮断し、相手が求めている「頼れる人事」「話しやすいお兄さん・お姉さん」を完璧に演じ切る。
この「プロフェッショナルな演技力」と「感情労働への耐性」こそが、求職者の心を掴む第一歩です。
「嘘をつく」のではありません。「会社の魅力を最大化して表現する(演出)」のです。
特徴3:【プロファイラー】「良いこと」しか言わない相手の“嘘”を見抜く
面接は、一種の「化かし合い」であり「高度な心理戦」です。
候補者は「御社が第一志望です!」「リーダーシップがあります!」と、就活本で練習してきた美辞麗句(鎧)を身にまとって現れます。
ここで「へぇ〜、すごいですね!いい子ですね!」と鵜呑みにする人は、採用担当失格です(そういう人が採用した人材は、入社後に早期退職しがちです)。
向いている人は、相手の完璧な鎧の隙間を、鋭く突くことができます。
- 候補者
「リーダーシップを発揮して、サークルをまとめました!」 - あなた
「素晴らしいですね。では逆に、周りがついてこなくて『孤独』を感じた瞬間はありましたか?」 - 候補者
「えっ……(目が泳ぐ)」 - あなた
(用意した答えがないんだな。ここからが本音の勝負だ)
言葉の内容ではなく、一瞬の表情の曇り、間(ま)、声のトーンの変化から、「本音」と「嘘」を嗅ぎ分ける。
まるでFBIのプロファイラーのように、相手の仮面を剥がし、素顔の人間性(カルチャーフィット)を見極める「洞察力」が必要です。
特徴4:【失恋マスター】「内定辞退(裏切り)」を3秒で忘れる
採用担当にとって最大のトラウマ、そして最も胃が痛くなる瞬間。
それが「内定辞退」と「音信不通(バックレ)」です。
何ヶ月もかけて口説き、食事に誘い、上司を説得して内定を出し、「一緒に働こう!」と固い握手を交わした内定者から、ある日突然、
「すみません、やっぱり他社に行きます(LINEで1行)」
と連絡が来る。あるいは、電話に出なくなる。
普通の人は、恋人に振られたような、あるいは詐欺に遭ったようなショックを受けます。「あんなに尽くしたのに…人間なんて信じられない…」と。
しかし、向いている人は違います。
「振られた? OK、次だ次! 悩んでる暇があったら、もっといい人を探そう!」
「去る者は追わず! 入社前に分かってよかった、ラッキー!」
と、即座に気持ちを切り替えられる「超・回復力(レジリエンス)」があります。
「サンクコスト(埋没費用)」に囚われず、ドライに割り切って次の獲物を探しに行ける人が、最終的に目標を達成します。
特徴5:【翻訳家】「現場のワガママ」を「魅力的な求人(JD)」に変換する
採用担当の本当のクライアントは、実は求職者ではなく「社内の現場マネージャー」です。
彼らは、市場相場を無視した無理難題を言ってきます。
「即戦力で、若くて、コミュ力があって、残業も厭わないエンジニアを連れてきて。あ、給料は安めで頼むね」
これをそのまま求人票(JD)に書いたら、誰も応募しません(ブラック企業確定です)。
向いている人は、この現場のワガママを「市場で売れる言葉」に翻訳し、パッケージングします。
- 現場の要望
「残業も厭わない人」 - あなたの翻訳
「なるほど、つまり『圧倒的なスピードで成長したい野心家』ということですね」→求人には「20代から責任あるポジションで、圧倒的成長を」と書く。 - 現場の要望
「給料は安めで」 - あなたの翻訳
「では『ストックオプション』や『フルリモート』など、金銭以外のメリットを強調しましょう」
現場のニーズを汲み取りつつ、求職者に刺さる言葉に変換する「コピーライティング力」と「企画力」
あなたは、自社という商品を市場に売り込む「凄腕のマーケター」でもあるのです。
AI時代、採用は「スクリーニング」から「アトラクト(口説き)」へ
「履歴書のチェックや面接の日程調整はAIに代わる」と言われます。
確かに、条件で足切りするだけの「スクリーニング(選別)」や、スカウトメールの自動送信はAIの方が得意でしょう。
しかし「優秀な人材を口説き落とす(アトラクト)」ことだけは、AIには絶対に不可能です。
本当に優秀な人は、どの会社からも引く手あまたです。条件だけで会社を選びません。
「あなたと一緒に働きたいと思った」「あなたの熱意に負けた」「あなたが私のキャリアを真剣に考えてくれた」
最後は「採用担当者の人間力(ヒューマンスキル)」で心が動きます。
AIが面倒な事務作業をやってくれるおかげで、あなたはより多くの時間を「人と向き合い、心を動かすこと」に使えます。
これからの採用担当は、単なる「面接官」から「Company Evangelist(会社の伝道師)」として、その熱量で人を巻き込む力が何よりも重要になります。
あなたは会社の「遺伝子」をデザインしている
もしあなたが、
「毎日嘘をつかれている気がして疲れた」
「ノルマがきつくて辞めたい」
「結局、自分は何のスキルも身についていないのではないか」
と思っているなら、視点を少し変えてみてください。
あなたの目の前にいるその候補者は、3年後の会社のエースかもしれません。
あるいは、会社の危機を救う救世主かもしれません。
その人を見つけ出し、入り口を開けてあげられるのは、世界であなただけです。
あなたは単なる面接官ではありません。
会社の遺伝子を選び、組織の未来をデザインする「アーキテクト(建築家)」です。
その誇りを持って、今日も最高の笑顔と「嘘を見抜く目」を持って、海千山千の候補者たちと対峙してください。
あなたの「隠れた才能」と「お疲れ度」、こっそり測ってみませんか?
「記事を読んで『これ私のことかも?』と思ったけど、実際どうなんだろう?」
「面接で笑顔を作りすぎて、家に帰ると真顔になってしまう……」
そんなふうに思った方のために、うしろぽっけでは2つの無料診断を用意しました。
どちらも登録不要、休憩時間の1分でできるので、仕事の息抜きにポチポチっと遊んでみてください。
① 12問でわかる「バックオフィス適職診断」
一口に事務職と言っても、「法律を守る労務タイプ」もいれば、今回の記事のように「人を口説く採用(営業)タイプ」もいます。
心理学(RIASEC理論)に基づいて、あなたの性格が一番輝くポジションを分析します。
② 笑うのに疲れたら。「職場ピエロ度診断」
採用担当は、会社の顔として常に「明るく元気な人」を演じなければなりません。
オンとオフの切り替えに疲れて、仮面が外れなくなっていませんか?
そんなあなたの「心の摩耗度」を可視化してみませんか?