不自由なPCと、私たちの毎日
「新しいソフトのインストールは禁止です」
会社のPCで何かを始めようとすると、決まってこの壁にぶつかります。セキュリティが大事なのは重々承知していますが、日々大量のデータをコピペし、同じようなメールを何通も打っている身からすれば、「じゃあ、この手間はどうすればいいの?」と、少しだけ途方に暮れてしまいます。
世の中の「DX」や「最新AIツール」の話は、どこか遠い国の出来事のよう。
結局、今日も使い慣れたExcelとブラウザだけで、地道に作業をこなすしかない……。
でも、諦めるのはまだ早いかもしれません。
特別なソフトを入れられないのなら、今あなたのPCに最初から入っている「標準装備」を、とことん使い倒してみませんか。
この記事では、厳しい制限のなかで戦うバックオフィス担当者のために、情シスさんに相談しなくても自分の力でデスクワークを少しずつ楽にしていける方法をご紹介します。
派手なことはできませんが、明日から「あ、ちょっと楽になったかも」と思えるような、地に足のついた工夫を一緒に見ていきましょう。
戦略1:Excel VBAを「現代の武器」として再定義する
「今さらマクロ?」と思われるかもしれません。最近は便利なクラウドツールが次々と登場し、VBA(マクロ)は少し古い技術のように語られることもあります。
でも、インストール制限があるPCにおいて、Excel VBAは「情シスさんの許可がいらない、唯一の自動化ツール」という、最強のポジションにいます。Excelさえ入っていれば、そこはもう立派な開発環境。新しくソフトを入れるための長い申請書を書く必要も、数週間待つ必要もありません。
- 追加コストがゼロ
すでにあるExcelを使うので、予算の相談がいりません。 - ファイル操作に強い
大量のPDFの名前をルール通りに変えたり、バラバラのフォルダにあるデータを1枚の表にまとめたり。地味で時間のかかる「整理整頓」こそ、VBAの得意分野です。
今は、すべてのコードを自分で書く必要はありません。生成AIに「これを実現するVBAを書いて」と頼めば、下書きはすぐに出来上がります。それを貼り付けて少し調整するだけで、3時間の作業が3秒で終わるようになります。
戦略2:最初から入っている「Power系ツール」を味方につける
VBAが「職人の道具」だとしたら、こちらは「現代の標準装備」です。Microsoft 365を導入している会社であれば、実は最初から使えるようになっていることが多い強力な味方です。
- Power Automate Desktopあなたの代わりに動く「透明な手」
Windows 11ならスタートメニューを覗いてみてください。すでに「Power Automate」が入っているはずです。「毎日決まったサイトからデータをダウンロードする」といった、ブラウザをまたぐ作業を自動で再現してくれます。 - Power Apps:自分専用の「デジタル道具箱」
ブラウザ上で動くので、インストール制限は関係ありません。「備品管理フォーム」や「社内アンケート」など、パズルを組み合わせる感覚で、自分たちが使いやすい道具を自作できます。
これらはMicrosoftの「公式機能」なので、情シスさんにも「標準機能の範囲内で改善したいんです」と相談しやすいのが大きなメリットです。
戦略3:ブラウザは「窓」ではなく、ひとつの「OS」である
ソフトが入れられないPCにおいて、唯一の自由な領域。それが「ブラウザ(EdgeやChrome)」です。
- インストール不要の「Webツール」を使いこなす
PDFの結合、画像の変換、QRコード作成。昔ならソフトが必要だったことも、今はブラウザ上で完結するツールがたくさんあります。 ※「うしろぽっけ」がWebツールにこだわっているのも、この制限を回避するためです。 - 「お気に入りバー」を自分専用のメニューに
よく使うWebツールをお気に入りバーに並べておけば、それはもうあなた専用のアプリランチャーです。デスクトップは変えられなくても、ブラウザの中だけは、自分が最も仕事がしやすいようにカスタマイズしましょう。
戦略4:AIを「有能な外部コンサル」として雇う
社内PCでAIが使えるなら、あるいは個人のスマホが手元にあるなら、AIは「やり方」を相談する最高のパートナーになります。
- 「一番早いルート」を聞く
「Excelでこういう表を作りたいけれど、関数とVBAどっちがいい?」「インストールなしでできる最短の方法は?」と聞いてみてください。AIは、あなたの手元にある「限られた持ち札」のなかで、最善の組み合わせを提案してくれます。 - 「エラーの通訳」をしてもらう
VBAなどを触っていてエラーが出たとき、その意味不明なメッセージをそのままAIに投げてください。何が原因で、どこを直せばいいのかを、あなたの言葉で噛み砕いて教えてくれます。
戦略5:「設定」ひとつで、毎日の「ちり積も」ストレスを削り取る
派手なツールだけが効率化ではありません。毎日何百回と繰り返す「小さな動作」を楽にすることが、私たちの時間を守るための確かな知恵になります。
- 「クリップボード履歴(Win + V)」の活用
キーボードの「Windowsキー + V」を押してみてください。これまでコピーした内容がリストで表示されます。Excelとブラウザを何度も往復して、一つずつコピペする手間がなくなります。 - 標準の「OCR機能」を使い倒す
新しいソフトなしでも、Windows標準の「Snipping Tool」などには、画像の中の文字をテキストとして読み取る機能が備わっています。「コピーできないPDF」も、これさえあれば手入力不要です。
戦略6:情シスさんは「敵」ではなく、同じ「船の乗組員」
最後に、技術以上に大切なのが「人間関係」です。
情シスさんも、本当は社員に楽をしてほしいと思っています。ただ、会社を守るために「ダメ」と言わざるを得ない立場なだけです。
「このソフトを入れたい」とだけ伝えると却下されますが、「こういう作業に3時間かかっていて困っている。標準機能の範囲で、何かいい方法はないでしょうか?」と課題を共有すれば、彼らは最強のアドバイザーになってくれます。
まとめ:制限があるからこそ、工夫は光る
「インストール禁止」というルールは、確かに不自由です。でも、その不自由さは、決して「効率化を諦める理由」にはなりません。
むしろ、限られた道具のなかで「どうすれば今の作業を1秒でも短くできるか」と知恵を絞るプロセスこそが、あなたの事務スキルを誰にも真似できないほど鋭く磨き上げてくれます。
最新のシステムを導入することだけが正解ではありません。
うしろのポケットに忍ばせた、いつものExcelやブラウザの設定を少しだけ変えてみる。そんな泥臭い一歩の積み重ねが、結果として、あなたの大切な時間を守ることに繋がります。
不自由な環境で、それでも「もっと良くしたい」と奮闘するあなたの毎日を、私たちは心から応援しています。
ひとりで悩んでいませんか?
「こんな制限があるけれど、もっと楽にしたい」「このExcel、どうにかならない?」
そんな、現場のちょっとした「困った」を一緒に形にできれば嬉しいです。
小さなツールの作成や、日々の業務の効率化について、どうぞ気軽にお聞かせください。
相談はこちら