AIにコードを書いてもらったけど「どこで動かすの?」会社のPC(インストール禁止)でツールを自作・実行する完全ガイド【Python/JS/VBA】

目次

​AIの画面と、あなたのデスクトップの間にある「深い溝」

​「この業務を自動化するツールを作って」

​そうAI(ChatGPTやGeminiなど)に頼めば、ほんの数秒で魔法のようなプログラミングコードが生成される時代になりました。「すごい!これで明日から楽になる!」と心が躍る瞬間です。

​しかし、その直後に多くのバックオフィス担当者が、ある「絶望」に直面します。

「で、この黒い画面(コード)を、どこに貼り付ければ動くの?」

​AIのチャット画面の中では完璧に動いているように見えるそのツール。しかし、いざそれを自分のパソコンで使おうとすると、途端にハードルが上がります。

  • ​「Python環境が必要です」と言われたけど、会社のPCには入っていない。
  • ​インストールしようとすると「管理者権限のパスワード」を求められて弾かれる。
  • ​そもそも、勝手にソフトを入れたら情シス(情報システム部)に怒られる。

​結局、生成されたコードを眺めるだけで、元の手作業に戻ってしまった経験はないでしょうか。

​この記事は、プログラミングの専門知識がないバックオフィス担当者に向けて、「AIが書いたコードを、セキュリティの厳しい会社のパソコン(ローカル環境)で、どうやって安全に動かすか」という一点に絞って解説します。

​今のあなたのPC環境を変えることなく、「ブラウザだけ」「Excelだけ」で動かす方法から、業務フローへの具体的な組み込み方まで。AI活用における「ラストワンマイル(最後の1歩)」の埋め方を、現実的な視点で整理しました。

​「コードは書けた。あとは動かすだけ」。その状態にあるあなたが、次に取るべき具体的な手段を持ち帰ってください。

​第1章:基礎知識

​なぜ「AIのコード」はあなたのPCですぐ動かないのか?

​AIから出力されたコードを、Wordやメモ帳に貼り付けて保存し、ダブルクリックしても何も起きない。あるいは、謎の英語のエラーが出て終了する。

この原因は、あなたの能力不足でも、AIのミスでもありません。「キッチン(実行環境)」がないのに「料理(プログラム)」をしようとしているからです。

​1-1. コードは「レシピ」、実行環境は「キッチン」

​プログラミング言語(PythonやJavaScriptなど)で書かれたコードは、あくまで「料理のレシピ」です。

「人参を切る」「鍋で煮込む」と書かれた紙があっても、包丁も鍋もコンロもない部屋では、カレーは完成しません。

  • Pythonのコード:
    レシピ(指示書)
  • Pythonのインストール:
    コンロや鍋(実行環境)を用意すること

​大企業のPCの多くは、業務に必要な「電子レンジ(Excel)」や「ポット(ブラウザ)」だけが置かれた、簡易的な給湯室のような状態です。ここに、いきなり本格的な「業務用の巨大オーブン(Pythonの実行環境)」を持ち込もうとしても、スペースもなければ、ガスの配管(システム権限)も繋がっていないのです。

​1-2. 「環境構築」という最大の壁

​AIは親切なので、「Pythonをインストールしてください」「pip install pandasを実行してください」と教えてくれます。しかし、バックオフィス担当者にとって、これが最大の罠です。

​会社のPCでこれを実行しようとすると、以下の壁にぶつかります。

  1. 管理者権限の壁:
    インストーラーを起動した瞬間、「管理者のユーザー名とパスワードを入力してください」というポップアップが出て、先に進めない。
  2. ネットワークの壁(プロキシ):
    仮にインストールできても、外部から便利な部品(ライブラリ)をダウンロードしようとすると、社内のファイアウォールに阻まれる。
  3. 環境変数の壁:
    「パスを通す」という意味不明な呪文に阻まれ、コマンドが認識されない。

​これらを無理やり突破しようとするのはやめましょう。それは情シスの仕事を増やすだけでなく、セキュリティ事故の原因にもなり得ます。

​私たちは、「今ある給湯室の設備(Excelやブラウザ)だけで、どうにかして三ツ星料理を作る」という工夫をする必要があるのです。

​第2章:診断チャート

​あなたの環境で選べる「武器」はどれだ?

​まずは、あなたの会社のPC環境で「何が許されているか」を確認しましょう。これによって、AIに「何語で書いて」と依頼するべきかが決まります。

​診断チェックリスト

​以下の質問に答えて、自分の現在地を確認してください。

Q1. インターネットブラウザ(Chrome/Edge)は使えますか?

  • ​YES → 【ルートA:HTML/JavaScript】 が最有力候補です。
  • ​NO → 完全オフライン環境(希少ですが)の場合、Q2へ。

Q2. Microsoft Excelはインストールされていますか?

  • ​YES → 【ルートB:VBA】 が鉄板の選択肢です。
  • ​NO → Google Sheetsを使う場合はGAS(Google Apps Script)になりますが、今回は「ローカル環境」に絞るため割愛します。

Q3. フォルダの中に「exeファイル(実行ファイル)」を置いて、ダブルクリックで起動することは許可されていますか?

  • ​YES(特に制限なし) → 【ルートD:Portable Python】 の可能性があります。
  • ​NO(監視ソフトで警告が出る) → 絶対にやってはいけません。ルートAかBを選んでください。

Q4. 「PowerShell」または「コマンドプロンプト」を開くことはできますか?

  • ​YES → 【ルートC:PowerShell】 で、ファイル操作などの自動化が可能です。
  • ​NO(ブロックされている) → ルートAかBに絞りましょう。

​各ルートの「攻略難易度」と「できること」

​【ルートA】ブラウザだけを使う(HTML/JS)

  • 安全性:
    ★★★★★(最も安全)
  • 難易度:
    ★☆☆☆☆(テキストファイル1つで動く)
  • 得意技: テキストの整形、計算ツール、データの並べ替え、パスワード生成、JSON/CSVの簡易編集。
  • 弱点: Excelファイルの直接編集や、パソコン内の別フォルダにあるファイルの操作は苦手(セキュリティ上の制約)。

​【ルートB】Excelを使う(VBA)

  • 安全性:
    ★★★★☆(社内標準ツールのため安心)
  • 難易度:
    ★★★☆☆(AIの翻訳精度に依存する)
  • 得意技:
    複数のExcel集計、請求書作成、Outlookメールの下書き作成、業務システムとの連携(IEモード等)。
  • 弱点:
    処理速度がPythonより遅い。AIにとってもVBAはPythonより少し書き間違いが多い。

​【ルートC】Windows標準(PowerShell)

  • 安全性:
    ★★★☆☆(強力すぎるため、情シスによっては禁止している)
  • 難易度:
    ★★★★☆(黒い画面を使う心理的ハードル)
  • 得意技:
    「フォルダ内のファイル名を一括変換」「古いファイルを全部削除」「ZIP解凍・圧縮」などのファイル操作。

​【ルートD】Pythonポータブル化(Embeddable Python)

  • 安全性: ★☆☆☆☆
    (情シス非推奨の可能性大。自己責任)
  • 難易度: ★★★★★
    (環境構築の手間がある)
  • 得意技:
    全て。最強。AI画像認識、スクレイピング、複雑なデータ分析など、なんでもあり。
  • 条件:
    どうしてもPythonでなければ解決できない高度な課題がある場合のみ選択する「奥の手」。

​第3章:【ルートA】ブラウザだけを使う(HTML/JavaScript)

​最も「怒られない」最強の抜け道

​もしあなたが、「ちょっとした計算」や「文章の整形」、「パスワード生成」などのツールを作りたいなら、PythonやExcelを開く必要すらありません。あなたが今このページを見ている「ブラウザ(Google ChromeやMicrosoft Edge)」こそが、実は高性能なプログラム実行環境だからです。

​このルートの最大のメリットは、「テキストファイルを1つ保存するだけ」で完了するという点です。インストールも不要、黒い画面も不要。情シスに検知されることもまずありません。

​3-1. 仕組み:メモ帳が「アプリ開発環境」になる

​やり方は驚くほどシンプルです。

  1. ​パソコンに入っている「メモ帳」を開く。
  2. ​AIが書いたコードを貼り付ける。
  3. ​名前をつけて保存する時、末尾を .txt ではなく .html にする。
  4. ​保存したファイルをダブルクリックする。

​たったこれだけで、自作のツールがブラウザ上で起動します。

​3-2. 実践!AIへの「魔法の頼み方」

​通常、Webサイトを作る時は「HTML(骨組み)」「CSS(見た目)」「JavaScript(動作)」という3つのファイルを分けますが、初心者にとって3つのファイルを管理するのは面倒です。

​そこで、AIには「全部入りの単一ファイル」を作らせます。以下のテンプレートを使って指示を出してください。

【コピペ用:AIへの指示プロンプト例】

あなたは優秀なフロントエンドエンジニアです。
以下の要件を満たす、業務効率化ツールを作成してください。

# ツールでやりたいこと
(ここに作りたいものを書く。例:入力された文章の余計な空白を削除して、全角・半角を統一するツール)

# 技術的な制約(重要)
・配布のしやすさを考慮して、HTML、CSS、JavaScriptのコードを**すべて1つのHTMLファイル内に記述(埋め込み)**してください。
・外部のCDNやライブラリは読み込まず、バニラJS(標準機能)だけで動くようにしてください。
・デザインは、Bootstrap風のシンプルで見やすい、モダンなUIにしてください。
・PCだけでなく、スマホで見ても崩れないレスポンシブ対応にしてください。
・使い方がわかるように、画面の上部に簡単な説明文を入れてください。

この「すべて1つのHTMLファイル内に記述」という指示がキモです。これを入れるだけで、AIは <style>〜</style> や <script>〜</script> というタグを使って、すべての要素を1つのファイルにまとめてくれます。

​3-3. 実際に作れるツールの例

​この方法で作るのに適しているのは、「テキスト(文字)や数字を加工するツール」です。

  • メール定型文作成機:
    • ​相手の名前と件名を入れると、失礼のないビジネスメール本文を自動生成する。
  • 「表記ゆれ」チェッカー:
    • ​「申し込み」と「申込み」が混在していないかチェックし、統一する。
  • パスワード生成ツール:
    • ​「8文字以上、記号なし」など、社内規定に合ったランダムなパスワードを10個作る。
  • Json/XML整形ツール:
    • ​システムから吐き出された読みづらいデータを、見やすく改行・インデントする。

​3-4. ファイルの保存方法(完全図解)

​AIがコードを出力したら、以下の手順で保存します。ここだけは間違えないでください。

  1. ​生成されたコードを、右上の「Copy code」ボタンでコピーする。
  2. ​Windowsのスタートメニューから「メモ帳」を開き、貼り付ける。
  3. [ファイル] > [名前をつけて保存] を選ぶ。
  4. ​ファイル名の欄に 便利ツール.html と入力する。
    • 重要: 最後に必ず .html (ドット・エイチ・ティー・エム・エル)をつける!
  5. ​「ファイルの種類」を「すべてのファイル (.)」に変更する(推奨)。
  6. ​「エンコード」が「UTF-8」になっていることを確認して「保存」。

​これでデスクトップに、ブラウザのアイコン(ChromeやEdgeのマーク)がついたファイルが誕生します。それをダブルクリックすれば、あなたの作ったツールが動きます。

​3-5. 弱点と注意点

​この方法は手軽ですが、セキュリティ上の理由から「パソコン内のファイルを勝手に操作すること」は苦手です。

  • できること:
    画面上の入力欄にテキストを貼り付けて、加工して、コピーする。
  • できないこと:
    デスクトップにあるExcelファイルを直接開いて上書き保存する(これは次の章の「VBA」の出番です)。

​第4章:【ルートB】Excelを使う(VBA/マクロ)

​普段のExcelが実は最強の実行環境

​「Pythonはインストール禁止だけど、Excelなら全社員のPCに入っている」。この状況こそが、バックオフィスにおける最大の勝機です。

Excelに搭載されているプログラミング言語「VBA(マクロ)」を使えば、Pythonに近い自動化が可能になります。

​Pythonほどの処理速度はありませんが、「Excelのセルを直接操作する」「Outlookでメールを送る」「フォルダ内のファイルを一覧にする」といった業務は、むしろVBAの方が得意です。

​4-1. AI活用術:「PythonコードをVBAに翻訳させる」

​AIはPythonを書くのが大好きで、放っておくとすぐにPythonのコードを出してきます。しかし、そこで諦める必要はありません。

​もしAIがPythonのコードを出してきたら、このように返してみてください。

​「そのロジックは素晴らしいです。ただ、私の会社のPCではPythonが動きません。同じ機能を、ExcelのVBAマクロとして書き直してください。 コードはそのままコピペできるように書いてください」

​驚くべきことに、AIは「Pythonの論理」をそのまま「VBAの文法」に翻訳してくれます。

【AIへの指示テンプレート(新規作成時)】

# やりたいこと
指定したフォルダに入っている複数のExcelファイル(請求書)から、
「合計金額(E10セル)」と「請求先名(B2セル)」を抜き出して、
いま開いているシートに一覧表としてまとめるツールを作りたいです。

# 制約条件
・会社のPCなのでPythonは使えません。Excel VBAで作ってください。
・コードがわからない私でも使えるように、コードの貼り付け場所を丁寧に教えてください。
・処理が終わったら「完了しました!」とメッセージを出してください。

4-2. 最初の関門:「開発タブ」を召喚する

​VBAを使うには、Excelのメニューに隠されている「開発」タブを表示させる必要があります。これは一度だけ設定すればOKです。

  1. ​Excelを開き、[ファイル] > [その他] > [オプション] をクリック。
  2. [リボンのユーザー設定] を選ぶ。
  3. ​右側のリストにある [開発] にチェックを入れて [OK] を押す。

​これで、画面上部に「開発」というタブが現れます。ここが「自動化への入り口」です。

​4-3. コードの貼り付け方(Visual Basic Editor)

​AIが書いてくれたVBAコードを、Excelに組み込みます。黒い画面が出ますが、怖がる必要はありません。

  1. [開発] タブの [Visual Basic] ボタンを押す(または Alt + F11 キー)。
  2. ​出てきた画面のメニューから [挿入] > [標準モジュール] をクリック。
  3. ​真っ白な画面が出てくるので、そこにAIが書いたコードを貼り付ける。
  4. ​この画面(エディター)を閉じて、Excelの画面に戻る。

​4-4. 保存の落とし穴:「マクロ有効ブック」

​ここが最大の注意点です。

マクロが入ったExcelファイルは、通常の .xlsx 形式では保存できません(保存しようとすると、マクロが消えてしまいます!)。

  • [名前をつけて保存] の画面で、ファイルの種類を 「Excel マクロ有効ブック (*.xlsm)」 に変更して保存してください。

​4-5. エラーが出た時の「AIへの泣きつき方」

​VBAはPythonに比べて少し繊細で、AIが一発で完璧なコードを書けないこともあります。「実行時エラー」が出た時は、その画面をAIに見せるのが一番の解決策です。

【エラー発生時のAIへの聞き方】

​「コードを実行したらエラーが出ました。

エラー番号:実行時エラー ‘9’

エラーメッセージ:インデックスが有効範囲にありません。

​『デバッグ』ボタンを押すと、以下の行が黄色くハイライトされています。

Set ws = Worksheets(“Sheet1”)

​どう修正すればいいですか?」

​このように具体的に伝えると、AIは「ああ、シート名が違いましたね。ではこう書き換えてください」と修正版を出してくれます。このやり取り(デバッグ)も、AI時代のプログラミングの醍醐味です。

​Excelを使ったルートBは、既存業務との相性が抜群です。

しかし、「ファイル名を一括で変えたい」「フォルダ構造を整理したい」といった、Excelの外側の操作(Windows自体の操作)をしたい場合は、次のルートCが役立ちます。

​第5章:【ルートC】Windows標準機能を使う(PowerShell)

​意外と知られていない「黒い画面」の正当な使い方

​「黒い画面(コマンドプロンプトやPowerShell)を使うなんて、エンジニアだけの仕事でしょ?」

そう思われがちですが、実はバックオフィス担当者こそ、このツールを使うメリットが巨大です。

​なぜなら、「1000個あるファイルのファイル名を変える」とか「昨年度のデータをフォルダごと圧縮して移動する」といった単純作業を、Windows標準の機能だけで一瞬で終わらせることができるからです。

​5-1. 何が得意なのか?

​Excel(VBA)が「Excelファイルの中身」をいじるのが得意なのに対し、PowerShellは「Windowsそのもの(ファイルやフォルダ)」をいじるのが得意です。

  • ファイル整理
    デスクトップに散らばったファイルを、拡張子(.xlsx, .pdf)ごとにフォルダ分けする。
  • 一括リネーム
    「請求書_A社.pdf」「請求書_B社.pdf」…の先頭に、今日の日付「20260122_」を一括でつける。
  • ログ収集
    パソコンの設定情報やインストールされているソフトの一覧を書き出す(棚卸し業務など)。

​5-2. 実行方法:実は「コピペ」だけで動く

​PowerShellには「スクリプトファイル(.ps1)」を作って保存する方法もありますが、会社のセキュリティ設定によっては実行がブロックされることがあります。

​そこで、最も確実でエラーが出ない「その場でコピペ実行」の手順を紹介します。

  1. PowerShellを起動する:
    • ​Windowsキーを押して、「PowerShell」と入力し、青いアイコンの「Windows PowerShell」をクリックします。
  2. AIが書いたコードをコピーする。
  3. 黒い(青い)画面の上で「右クリック」する:
    • ​※ここがポイントです。PowerShellでは、右クリックするだけで「貼り付け」が行われます(Ctrl+Vでも可)。
  4. Enterキーを押す。

​これだけで、フォルダ内のファイルが一瞬で整理されます。ツールとして保存しなくても、「作業したい時にAIにコードを書いてもらって、貼り付けて実行して終わり」という使い捨てスタイルが、実は最も安全で手軽です。

​5-3. 安全第一!「Undo(元に戻す)」は存在しない

​PowerShellは強力すぎるため、「Ctrl + Z(元に戻す)」が効きません。

間違って「必要なファイルを全削除するコード」を実行してしまったら、取り返しがつきません。

【鉄の掟】

  • ​いきなり本番のフォルダで実行しない。
  • ​必ず「ダミーフォルダ」(テスト用のコピーフォルダ)を作って、そこで一度試してから本番で行う。

​5-4. 実践!AIへの指示プロンプト

​ファイル操作系のタスクを依頼する場合、AIには「対象のフォルダパス」を明確に伝える必要があります。

【コピペ用:AIへの指示プロンプト例】

あなたはWindowsの専門家です。PowerShellのコードを書いてください。

# やりたいこと
デスクトップにある「請求書整理」というフォルダの中に、大量のPDFファイルが入っています。
これらのファイル名の先頭に、今日の日付(例:20260122_)を一括で追加したいです。

# 対象フォルダ
C:\Users\User\Desktop\請求書整理
(※このパスは自分のPCに合わせて書き換えてください、とコメントを入れてください)

# 制約
・いきなり実行せずに、まずは「何というファイル名に変更されるか」を画面に表示するだけの「テストモード(-WhatIf)」でコードを書いてください。
・初心者がコピペで実行できるように、コードの意味を日本語で解説してください。

この「テストモード(-WhatIf)」という指示がプロのコツです。これを付けると、実際にはファイル名を変更せず、「実行したらこうなりますよ」というシミュレーション結果だけを表示してくれます。これを見て安心してから、-WhatIf を外して本番実行すれば、事故は起きません。

​5-5. 応用:バッチファイル(.bat)にする手もある

​毎回コードを貼り付けるのが面倒な定型業務なら、「バッチファイル」にするという昔ながらの手法も有効です。

  1. ​AIに「このPowerShellコードを実行するバッチファイル(.bat)を作ってください」と頼む。
  2. ​出力されたコードをメモ帳に貼り付け、整理実行.bat という名前で保存する。
  3. ​これをダブルクリックするだけで、処理が走るようになります。

​これなら、黒い画面を開く必要すらなくなります。

​第6章:【ルートD】Pythonを「インストールせず」に使う(Portable Python)

​究極の奥の手:フォルダの中でこっそり飼う「箱入りPython」

​これまでの方法は「ブラウザ」や「Excel」など、代用品を使っていました。しかし、どうしても「画像認識」や「数万件のデータの高速処理」など、本家のPythonでないとできない仕事もあります。

​通常、Pythonを使うには「インストール」が必要ですが、情シスの許可が下りないことがほとんどです。

そこで登場するのが、「インストール不要版 Python(WinPythonなど)」です。

​これは「Portable(ポータブル)版」とも呼ばれますが、「持ち運ぶ」という意味ではありません。

「PCのシステムを汚さず、ひとつのフォルダの中だけで完結して動く」という意味です。

​6-1. 会社のルール別「生存確率」チェック

​この方法は、インストール不要とはいえ、外部のプログラムを動かすことになります。あなたの会社のセキュリティレベルで「使えるか」を冷静に判断してください。

  • 【NG】Webからのファイルダウンロードがブロックされている
    • ​→ このルートは使えません。無理に突破しようとせず、ルートA(ブラウザ)かB(Excel)で頑張りましょう。
  • 【NG】「未承認のexeファイル」を実行すると検知される
    • ​→ 起動した瞬間に情シスに通報される恐れがあります。諦めましょう。
  • 【OK】GitHubなどの技術サイトにはアクセスでき、Zip解凍もできる
    • ​→ この場合のみ、チャンスがあります。

※注意: 物理的なUSBメモリの使用が禁止されている会社では、絶対に「自宅でUSBに入れて持ってくる」ことはしないでください。 情報持ち出し/持ち込み違反で重大な処分を受けます。あくまで「社内ネットワーク経由で、正規の手順で入手できる場合」に限ります。

​6-2. 選択肢は「WinPython」一択

​公式のPythonではなく、「WinPython(ウィン・パイソン)」をおすすめします。

これには、最初からデータ分析に必要な「Pandas」や「Excel操作ライブラリ」などが全部入っており、解凍するだけで準備が完了するからです。

​6-3. 導入ステップ(フォルダに置くだけ)

  1. ダウンロード
    • ​WinPythonの公式サイト(GitHub)から、最新ではなく少し安定したバージョン(例:WinPython_3.10…dot)のZipファイルをダウンロードします。
  2. 配置
    • ​ダウンロードしたファイルを、自分の「マイドキュメント」や「デスクトップ」などのユーザーフォルダに置きます。
    • ​※Cドライブ直下(C:\)などは権限がないため避けましょう。
  3. 解凍
    • ​ダブルクリックして解凍します。これで「Pythonが詰まったフォルダ」が出来上がります。インストール作業は一切発生していません。

​6-3. どうやってコードを実行するの?(黒い画面の飼い慣らし方)

​WinPythonを解凍しただけでは、パソコン本体に「Pythonはここにいます」という登録(パスを通す作業)がされていません。そのため、普通のコマンドプロンプトを開いて python と打っても反応しません。

​そこで、初心者でも一番失敗しない「ドラッグ&ドロップ専用の発射台」 を作ります。これを作れば、毎回黒い画面でコマンドを打つ必要がなくなります。

【手順:ドラッグ&ドロップ用バッチファイルの作成】

  1. WinPythonを解凍したフォルダを開きます(python-3.10.xx などのフォルダが見えている場所)。
  2. 何もないところで右クリックし、[新規作成] > [テキスト ドキュメント] を選びます。
  3. できたファイルに以下の3行をコピーして貼り付けます。
@echo off
REM このフォルダの中にあるPythonを使って、ドロップされたファイルを実行する
"%~dp0python-3.10.xx.amd64\python.exe" "%~1"
pause

​重要: 3行目の python-3.10.xx.amd64 の部分は、実際にあなたのフォルダにある名前と同じになるように書き換えてください。ここが間違っていると動きません。

4. 保存して閉じます。
5.ファイル名を 新しいテキスト ドキュメント.txt から Pythonで実行.bat に変更します。​アイコンが歯車の形などに変われば成功です。

【使い方はカンタン】

AIに書いてもらったPythonコード(test.py)を、この Pythonで実行.bat のアイコンの上にドラッグ&ドロップしてください。

これだけで、黒い画面が立ち上がり、プログラムが実行されます。処理が終わると「続行するには何かキーを押してください…」と表示されるので、結果を確認してから閉じることができます。

​6-4. ライブラリを追加したい時(pipの使い方)

​WinPythonには最初から「Pandas(データ分析用)」や「OpenPyXL(Excel操作用)」が入っていますが、もしAIから「pip install PyPDF2 をしてください」と言われたらどうするか。

​この場合も、パソコン本体の設定をいじる必要はありません。WinPythonには専用の入り口が用意されています。

  1. WinPythonフォルダの中にある 「WinPython Command Prompt.exe」 を探してダブルクリックします。
  2. 専用の黒い画面が立ち上がります。ここなら、いつもの呪文が通じます。
pip install PyPDF2

3. エンターキーを押すと、文字が流れてインストールが完了します。
これで、このフォルダの中のPythonだけで、その機能が使えるようになります。会社のPC全体には何の影響も与えません。

6-5. セキュリティに関する「最後の警告」

​この方法は技術的に「インストール」を回避できますが、会社のコンプライアンスとしてはグレーゾーン、あるいはブラック(禁止)の場合があります。

​特に以下の点には細心の注意を払ってください。

  • USBメモリの使用は厳禁
    前述の通り、物理的なUSBメモリにこのWinPythonを入れて持ち込むのは絶対にやめましょう。情報持ち出し・持ち込みのリスクとみなされ、厳しい処分の対象になります。
  • Webスクレイピングの注意
    Pythonを使えば、Webサイトから情報を自動収集(スクレイピング)できますが、社内ネットワークから外部サイトへの大量アクセスは、セキュリティ機器で検知されます。「毎朝1回だけニュースを取ってくる」程度なら大丈夫でも、「1分間に1000回アクセス」などは攻撃とみなされます。

​「こっそり使う」のではなく、「既存の環境(Excelなど)ではどうしても不可能な業務があり、かつセキュリティリスクがない方法としてこれを選んだ」と、上司や情シスに説明できる理論武装をしておくことが、あなた自身を守ることになります。

​第7章:運用フロー

​「野良ツール」にしないための業務フロー

​せっかく苦労してツールを作っても、使い方が難しくて自分しか使えない状態(属人化)になっては、会社にとってリスクのある「野良ツール」扱いされてしまいます。

最後に、これを「チームの資産」にするための仕上げを行いましょう。

​7-1. マニュアルもAIに書かせる

​ツールが完成したら、AIとのチャットの最後にこう頼んでください。

​「ありがとうございます。完璧に動きました。

このツールの使い方を説明する、チームメンバー向けの ReadMe.txt (説明書)の内容を書いてください。

  1. ​何をするツールか(メリット)
  2. ​準備するもの(入力ファイルの形式など)
  3. ​実行手順(ドラッグ&ドロップするだけ、等)
  4. ​注意点 を含めて、初心者に優しく書いてください」

​出力されたテキストをコピーして、ツールと同じフォルダに 説明書.txt として保存します。これがあるだけで、それは「怪しいファイル」から「業務ツール」に昇格します。

​7-2. 実行用ショートカットを作る

​フォルダの奥深くにあるツールを、毎回クリックしに行くのは面倒です。

実行用ファイル(HTMLファイルやExcelファイル、先ほどのBATファイル)のショートカットを作成し、デスクトップの分かりやすい場所に置きましょう。

  • 悪い例: invoice_renamer_v2.bat (怖くて誰も触れない)
  • 良い例: 【自動】請求書ファイル名変更ツール (親しみやすい)

​アイコンも、右クリックの「プロパティ」から変更して、わかりやすいイラストに変えておくと、チームメンバーへの導入がスムーズになります。

​7-3. メンテナンス係を決める(プロンプトを残す)

​「このツール、エラーが出るようになったんですけど」と言われた時、あなたが異動していたら誰も直せません。これがAI開発の最大の弱点です。

​これを防ぐために、「AIへの指示文(プロンプト)」自体を保存してください。

AIとのチャット履歴、あるいは最初に送った指示文を、WordやOneNoteなどに保存し、ツールと一緒に保管します。

【引き継ぎ用メモ】

もしこのツールを修正したい時は、AIに以下の文章を投げて、続きを相談してください。

(ここにプロンプトを貼り付ける)

​こうしておけば、後任者がプログラミングを知らなくても、そのプロンプトを使ってAIに修正を依頼できます。「コードを残す」のではなく「会話のきっかけを残す」のが、AI時代の引き継ぎ術です。

​まとめ:あなたは「作業者」から「ツール開発者」へ

​「会社のPCだから何もできない」

「情シスが厳しいから新しいことは無理」

​そう諦めていた状況でも、実は「ブラウザ」「Excel」「PowerShell」「フォルダ完結型Python」という4つの選択肢があることが分かりました。

​AIは、あなたの「面倒くさい」「楽をしたい」という意思さえあれば、それを実現するコード(レシピ)を数秒で書いてくれます。

あとは、あなたがそのレシピを、自宅のキッチン(会社のPC環境)に合わせて少し工夫してあげるだけです。

  1. 【ルートA】 簡単なテキスト処理や計算なら、メモ帳で作れるHTMLで。
  2. 【ルートB】 既存の帳票作成やメール送信なら、いつものExcel VBAで。
  3. 【ルートC】 大量のファイル整理なら、コピペで動くPowerShellで。
  4. 【ルートD】 どうしても高度な分析が必要なら、フォルダ完結のWinPythonで。

​この使い分けができれば、あなたは単なる「バックオフィス担当者」ではなく、「業務改善エンジニア」としての価値を持つことになります。

​まずは今日、一番簡単な「ルートA(ブラウザ)」で、メモ帳にコードを貼り付けて 便利ツール.html を作るところから始めてみませんか?

その小さなアイコンをダブルクリックした瞬間、あなたのパソコンはただの事務用品から、あなた専用の頼れる相棒へと進化するはずです。

​「やっぱり難しい…」と思ったら、うしろぽっけにご相談ください

​この記事では、AIと既存のツールを使って業務を効率化する方法をご紹介しました。

しかし、いざ自分の手でやろうとすると、

​「ウチの会社のセキュリティ設定だと、結局どれが使えるの?」

「VBAのエラーがどうしても直せない…」

「そもそも、この業務を自動化できるのかどうかが分からない」

​といった、記事だけでは解決できない個別の壁にぶつかることもあるかと思います。

「うしろぽっけ」は、そんなバックオフィス担当者様の「あと一歩」を支援します。

​私たちは、単なるシステム開発会社ではありません。皆様と同じように、日々「名もなき仕事」や「突発的なタスク」に追われてきた経験があるからこそ、「情シスに怒られない範囲で、現実にどう動かすか」という悩み痛いほど分かります。

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​そんなご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

あなたの「うしろぽっけ」に入っている相棒のように、こっそりと、でも確実に、あなたの業務を軽くするお手伝いをいたします。

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