机の端で少し冷めたコーヒーを口に含みながら、少しだけ御社の現場の「本当の風景」を思い浮かべてみてください。
「その業務は、担当のAさんじゃないとわからない」
「Bさんが休むと、取引先への支払いが1日遅れてしまう」
経営者や責任者として、こうした状況に微かな、しかし消えない不安を覚えたことはないでしょうか。あるいは、その不安を解消するために高額なシステムを導入したのに、結局そのシステムを使いこなせるのが「特定の人だけ」になり、依存の形が変わっただけ……。そんな皮肉な結果に頭を抱えてはいませんか。
実は、事務現場における属人化の正体は、担当者のスキルの高さではありません。システムと実務の間に広がる「名もなき判断」の積み重ねです。
今回は、派手なIT用語を並べたDXの成功物語ではなく、地味だけれど確実に組織を強くする「属人化解消の本質」について、私の10年の現場経験からお話しします。
いつの間にか築かれた、現場の「触れてはいけない聖域」
私がPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)として多くの企業の支援に入る中で、必ずと言っていいほど直面するのが、「特定の個人の中にだけ存在する、独自の解法」です。
それは、前任者が数年がかりで継ぎ足し、改変を繰り返してきた巨大なExcelシートであったり、背景も意図も不明なまま動き続けている複雑な関数群であったりします。関係者の間では、もはや中身を問うことすら憚られる「触れてはいけない聖域」のようになっています。
担当者は、その複雑怪奇な手順を熟練の技でこなします。しかし、一歩外から見れば、それは「解読不能な呪文」を毎日唱えているようなものです。
なぜ、これほどまでに属人化が進んでしまうのか。
それは、担当者が悪意を持って情報を独占したからではありません。むしろその逆です。「目の前の仕事を、何としてでも自分の代で終わらせよう」という、責任感ゆえの工夫が積み重なった結果なのです。
会社が用意した汎用的なシステムでは対応できない「現場の微細なイレギュラー」を埋めるために、彼らは自分なりの「手動の橋」を架けざるを得なかった。その孤独な努力の蓄積が、いつしか誰にも中身がわからない「ブラックボックス」へと変貌してしまったのです。
「属人化」という名の、目に見えない経営負債
このブラックボックス化した業務は、経営の視点から見れば、単なる効率の悪さではありません。「いつ爆発するかわからない経営負債」です。
想像してみてください。その「聖域」を守っている担当者が、突然の病気やライフイベント、あるいは引き抜きで明日から来なくなったとしたら。
その瞬間に、月次の決算が止まり、顧客への請求が遅れ、積み上げてきた信頼が崩れていく。これは決して大袈裟な話ではなく、実際に多くの企業で起きている「静かな危機」です。
また、属人化がもたらす損失は、リスクだけではありません。「組織の進化を止めてしまう」という、さらに根深い問題を引き起こします。
- 教育コストの底なし沼
新人が入ってきても、その「独自の解法」を理解するまでに膨大な時間を要し、結局は「ベテランの背中を見て覚える」という非効率な教育しかできなくなります。 - 改善への拒絶反応
新しいシステムを導入しようとしても、「今のこの複雑な処理を再現できないなら、新システムはいらない」という現場の抵抗にあい、多額の投資が形骸化します。 - 心理的な停滞
担当者自身も、「この仕事は自分にしかできない」という自負が強まるあまり、新しい技術や効率的な手法を取り入れることに対して保守的になってしまいます。
このように、属人化は組織の柔軟性を奪い、変化への対応力をじわじわと削り取っていくのです。
「スキルの継承」を諦め、「道具の共有」へ舵を切る
では、この属人化という難題を、どうやって解いていけばいいのでしょうか。
多くの企業が試みる「マニュアル化」や「引き継ぎ資料の作成」は、残念ながら根本的な解決にはなりません。なぜなら、「属人化している業務そのものが、人間に高い負荷をかける複雑な構造」になっているからです。
私たちが提案するのは、スキルの継承を促すことではなく、「誰が操作しても同じ結果を出せる道具」を共有することです。
「うしろぽっけ」が開発する小さな道具(マイクロツール)は、いわばその「聖域」の壁を取り払い、中にある複雑なロジックを技術の裏側に隠蔽します。
- 専門的な知識がなくても、ボタン一つで処理が終わる。
- 複雑な判断基準をプログラムに肩代わりさせ、人間は「最終確認」に専念する。
- 誰が触ってもミスが起きないよう、直感的で迷わせないインターフェースを被せる。
これまでは担当者の「脳内」で処理されていた高度な判別や集計を、誰でも触れる「道具の機能」として実装する。これによって、業務は「個人の所有物」から「組織の共有資産」へと生まれ変わります。
技術を「独占」させないための、デザインという優しさ
属人化を解消するためのツールに必要なのは、機能の多さではありません。「使う人の不安をどれだけ取り除けるか」という視点です。
私がUI(ユーザーインターフェース)のデザインにこだわるのは、それが「属人化の心理的障壁」を下げる唯一の手段だからです。
無機質で冷たい画面は、使う人に「間違えてはいけない」というプレッシャーを与え、結局は「慣れている特定の人」に操作を委ねる結果を招きます。
しかし、丸みを帯びたデザイン、そして「次に何をすればいいか」を迷わせない親切な設計があれば、デジタルに不慣れな社員でも安心してその道具を手に取ることができます。
「技術を独占させないために、技術を民主化する」。
これこそが、うしろぽっけが目指す属人化解消の本質です。
特別なスキルを持った「職人」がいなくても、組織全体が淀みなく動き続ける。そんな、人にも経営にも優しいバックオフィスの姿を、私たちは形にしていきます。
【まとめ】「あなたしかできない仕事」を、「みんなの成果」へ
事務現場に潜む属人化という名のブラックボックス。それを解体することは、担当者の仕事を奪うことではありません。むしろ、彼らを「聖域を守り続けなければならない」という重圧から解放し、もっと自由で創造的な仕事へといざなうためのプロセスです。
御社の現場に、いつのまにか「触れてはいけない業務」が生まれてはいませんか?
その正体を知り、仕組みで解決することは、組織が本当の意味で身軽になり、新しい挑戦を始めるための第一歩です。
立派な依頼書や仕様書は要りません。
まずは、現場で起きている「困りごと」や、ため息の出るような「手作業」の話を聞かせてください。PMOとしての経験を活かし、あなたの言葉を、明日からの組織を支える「仕組み」へと翻訳させていただきます。
現場の「ささくれ」を仕組みで解決する
「何をどう頼めばいいかわからない」という状態でも構いません。
「このExcel作業を自動化したい」「担当者が辞める前に仕組みを整えたい」といった、具体的なお悩みから、まずはご相談ください。
御社の現場に深く入り込み、隠れたリスクを一つひとつ、心地よい道具へと作り替えるお手伝いをいたします。
※ 強引な勧誘は一切ございません。まずは現状のお伺いから始めさせていただきます。