「AIを使えば、ボタン一つで完璧な議事録ができる」
「これからはプロンプトエンジニアリングの時代だ」
そんなキラキラした言葉を信じてChatGPTに手を出したものの、結局、出力された「それっぽいだけの文章」を直すのに1時間以上かかっていないでしょうか。あるいは、完璧な回答を引き出そうとプロンプト(指示文)をこねくり回しているうちに、本来の業務が手付かずになり、気づけば定時を過ぎている……。
これは、効率化を目指して導入したAIによって、逆に現場の業務が「破産」している状態です。
効率化の罠:10分のために2時間かける人々
最近、巷では複雑怪奇な「最強のプロンプト」がもてはやされています。しかし、現場で泥水をすすってきたPMOの視点から言わせてもらえば、あんなものは実務では使い物になりません。
たかだか10分の作業時間を削るために、2時間かけてプロンプトを調整し、出力結果を何度も検証する。これはもはや「効率化」ではなく、単なる「新しい遊び」です。予算を削るために導入したツールが、その運用コストや管理の手間によって、予算以上の人件費を食いつぶしている。そんな本末転倒な事態が、あちこちのプロジェクト事務局で起きています。
AIは「秘書」ではなく「粗削りの職人」
私たちがChatGPTに期待すべきは、完成品としての「綺麗な議事録」ではありません。
現場のドロドロした議論、言った・言わないの応酬、結論の出ない迷走——。そんな、人間臭い「生の記録」を、とりあえず読めるレベルにまで「10分でゴミ出し」してもらうこと。それだけで十分なのです。
完璧主義を捨て、AIとの「適当な付き合い方」を覚える。
この記事では、プロンプトを極めること(プロンプト特夫)で業務を破綻させないための、PMO流の泥臭いAI活用術をお伝えします。
1. 「プロンプトエンジニアリング」という名の時間泥棒
「最強のプロンプト」「これだけで完璧な議事録ができる指示文」——。ネット上には、まるで魔法の呪文のようなプロンプトが溢れています。しかし、事務局の現場でそれらを忠実に再現しようとすると、ある奇妙な現象に気づくはずです。
「AIに指示を出すための準備に、一番時間がかかっていないか?」
これが、現代の事務局が陥っている「プロンプトエンジニアリング」という名の時間泥棒の正体です。
「10分のために2時間かける」本末転倒
本来、ツールは「楽をするため」にあるはずです。しかし、完璧な回答をChatGPTから引き出そうと、背景情報を整理し、役割(ロール)を与え、出力形式を微調整し、何度も試行錯誤(プロンプト特夫)を繰り返す。
気づけば、プロンプトをこねくり回すだけで1時間が経過しています。
その1時間があれば、自分でメモを見返して要点をまとめ、関係者に共有するまで終わっていたかもしれません。10分の作業を自動化するために2時間を費やす。これは効率化ではなく、ただの「新しい趣味」です。
趣味でやるなら構いませんが、一分一秒を争うプロジェクトの現場でこれを行うのは、プロフェッショナルとして「業務の破産」を意味します。
「AIの清書」を信じてはいけない
なぜ、私たちはここまでプロンプトにこだわってしまうのか。それは、AIに「そのまま提出できる綺麗な完成品」を出させようと欲張るからです。
しかし、冷静に考えてみてください。AIが出力した「綺麗な文章」は、必ず人間の目でチェックしなければなりません。
- 固有名詞が間違っていないか
- ニュアンスが逆になっていないか
- 現場の空気感を無視した「よそよそしい言葉」になっていないか
プロンプトをどれだけ作り込んでも、この「最終確認」の手間はゼロにはなりません。むしろ、プロンプトが複雑になればなるほど、AIの出力も複雑になり、チェックの難易度が上がるという皮肉な結果を招きます。
PMOが求めるべきは「80点の清書」より「30点のゴミ出し」
現場の事務を停滞させないコツは、AIに完璧を求めないことです。
「そのまま議事録として配布できるもの」を目指すから、プロンプト作りが終わらなくなるのです。
PMOが本当にやるべきは、カオスな会議の録音やメモをAIに放り込み、「何が議論され、何が決まっていないのか」という骨組みだけを最短時間で吐き出させること。 30点の出来でも、骨組みさえ見えていれば、あとの肉付けは人間がやった方が圧倒的に早い。
プロンプトエンジニアリングという「学問」に逃げるのではなく、ツールを「使い捨ての道具」として雑に扱う。この冷めたスタンスこそが、地に足のついた事務局体制への第一歩です。
2. ツール導入の隠れたコスト:なぜ『便利』が『赤字』を生むのか
「月額数千円で事務作業が劇的に減るなら安いものだ」
そんな計算で導入したAIツールが、実は会社やプロジェクトに「目に見えない赤字」を垂れ流していることがあります。
ツールそのものの利用料はたかが知れています。本当のコストは、そのツールの周りで浪費される「人間の時間と精神的エネルギー」です。これを無視して「便利そうだから」と導入を強行すると、現場の業務は音を立てて崩れていきます。
「自動化」の裏に隠れた「手動の保守」
AIが自動で議事録を生成するといっても、その前段には多くの「手作業」が潜んでいます。
- 会議の音質を確保するためのマイク設定や位置調整
- AIが誤認した専門用語や固有名詞を一つずつ修正する作業
- ツールがアップデートされるたびにプロンプトを書き換える手間
これらはすべて、PMや事務局メンバーの貴重な工数です。「ボタン一つで」と謳われていても、そのボタンが正しく動くようにメンテナンスし続けるコストが、得られるメリットを上回ってしまう。これこそが、事務局体制を蝕む「便利の赤字」の正体です。
予算以上に高くつく「判断の遅れ」
最も恐ろしい隠れたコストは、金銭的な赤字ではなく、「PMが本来すべき判断を後回しにしてしまうこと」にあります。
事務局の仕事は、あくまでプロジェクトを前に進めるための「手段」です。しかし、ツールの設定やAIとの格闘(プロンプトの調整)に没頭するあまり、PMが「今、現場で何が起きているか」「次の一手をどう打つか」を考える脳の余白を失ってしまう。
1時間の会議のあと、AIが吐き出した支離滅裂な要約を必死に直している間に、現場のメンバーは「次の指示」を待っています。ツールの完成度を高めることに時間を溶かし、リーダーとしての判断が1日遅れる。その1日の遅れが、プロジェクト全体に与える損害は、AIツールの月額費用とは比較にならないほど巨大です。
ツールに「介護」を必要とするな
優れた事務局体制において、ツールは「自立して働く部下」であるべきです。しかし、現状の多くのAI活用は、人間がツールを「介護」している状態です。
- ツールが機嫌良く動くように、プロンプトを丁寧に書き換える。
- ツールが間違えないように、事前情報を手厚く入力する。
これでは、どちらが主役か分かりません。
「便利」という言葉の裏にある、こうしたドロドロとした実務の負荷を直視すること。そして、「その介護に費やす時間は、本当にプロジェクトの成功に直結しているか?」と自分たちに問いかける冷静さが、今、すべての現場に求められています。
3. PMOが求めるのは「清書」ではない。議論の「目詰まり」の発見だ
多くの人がChatGPTに「会議の内容を綺麗にまとめて」と頼みます。しかし、PMOの視点から言えば、そんな「まとまった議事録」は二の次で構いません。
プロジェクトを停滞させるのは、議事録の誤字脱字ではなく、「決まるべきことが決まらずに流された瞬間」です。PMOがAIに本当にやらせるべきは、美文の作成ではなく、議論の中に隠れた「目詰まり」を暴き出すことなのです。
「何が決まったか」より「何が棚上げされたか」
会議の終わりに「いい議論だったね」と解散したあとに、数日経ってから「あれ、あの件どうなった?」と火を吹く。これが現場のリアルです。
AIに期待すべきは、要約ではなく「抽出」です。
- 「Aさんが懸念を示したのに、そのまま話が流れた箇所はどこか?」
- 「期限を決めずに『検討する』とだけ言ったタスクはないか?」
- 「議論がループしていて、結局結論が出ていないポイントは?」
こうした「議論の不備」を、AIに血眼になって探させるのです。文法が少々おかしくても、構成がバラバラでも構いません。PMOがその「不備」に気づき、会議が終わった直後の10分以内に「ここ、決まってませんでしたよね?」と関係者に突っ込めるかどうか。このスピード感こそが、事務局としてのプロの仕事です。
事務局の価値は「書く力」ではなく「気づく力」
AIを使って2時間かけて完璧な議事録を作る人は、残念ながら「作業者」で終わってしまいます。
一方で、AIに3分で「議論の矛盾点」をリストアップさせ、それをもとに10分で次の打ち手を指示する人は「推進者」です。
PMOにとって、議事録は「提出物」ではなく「武器」であるべきです。
- 誰がボールを持っているのかを明確にする。
- リスクの芽を早めに摘み取る。
- 現場の認識のズレをその場で修正する。
この武器を研ぐためにAIを使うのであって、誰かに褒められるための綺麗な書類を作るためにAIを使ってはいけません。
AIの「空気を読む能力」の低さを逆手に取る
AIは人間のように「忖度(そんたく)」をしません。会議の空気が悪くなるのを恐れて、誰かが核心を避けたとしても、AIはデータとして「ここ、結論が出ていません」と平然と指摘します。
この「空気を読まない冷徹さ」こそ、泥臭い調整を担うPMOにとって最高の相棒になります。人間同士だと角が立つような指摘も、「AIがこう言っているから、念のため確認しておきましょう」と、ツールを「悪役」に仕立てることで、現場の調整は驚くほどスムーズになります。
4. 【実録】10分で終わらせる。適当なのに役立つ『泥臭いプロンプト』の例
プロンプトエンジニアリングの教科書には「役割を与えよ」「背景を詳しく書け」「出力形式を厳密に指定せよ」と書かれています。しかし、そんな暇があるなら、PMOは溜まったメールを一本でも多く返すべきです。
現場で本当に使えるプロンプトは、もっと雑で、もっと「目的」に直結しています。
プロンプトは「儀式」ではなく「立ち話」でいい
私が現場で推奨しているのは、構成案や装飾を一切無視した「ゴミ出しプロンプトです。ChatGPTを「有能なAI」として崇めるのをやめ、廊下ですれ違った部下に「おい、これ何が決まってないか教えろ」と声をかけるくらいの感覚で接します。
例えば、文字起こしした会議の生データを放り込むときのプロンプトは、これだけで十分です。
泥臭いプロンプトの例:
「以下の会議メモから、『誰が』『いつまでに』『何を』やるかだけ箇条書きにして。あと、結局決まらずにふわっとしているところを3つ教えて」
これだけです。役割設定(You are a professional PMO…)も、出力フォーマットの指定(Markdown形式で…)も要りません。それらを丁寧に書く時間に3分かけるなら、その3分を「出てきた結果のチェック」に充てる方が、事務局としての「破産」を防げます。
完璧な100点より、速報の60点
なぜこれでいいのか。それは、PMOの仕事の本質が「文書の清書」ではなく、「現場の滞留を1秒でも早く解消すること」にあるからです。
- 最強プロンプト(構築に15分): 95点の美しい議事録が出るが、確認と修正にさらに10分かかる。計25分。
- 泥臭いプロンプト(構築に10秒): 60点の箇条書きが出るが、不足分を自分で補うのに5分。計5分強。
この「20分の差」が、1日に何度も繰り返される会議の中で、PMOの寿命とプロジェクトの進捗を左右します。綺麗な表を作ることに酔いしれるのではなく、汚くてもいいから「次のアクション」を即座に特定し、関係者にチャットで飛ばす。そのスピードこそが、現場の人間がPMOに求めている価値です。
「AIのクセ」を直すより「自分の目」を信じる
AIが変な敬語を使ったり、要約が少しズレたりするのは当たり前です。それをプロンプトで「教育」しようとしてはいけません。AIの教育(プロンプトの微調整)にコストをかけるのは、予算以上の人件費を溶かす「赤字業務」です。
「AIは間違えるもの」という前提で、30秒で吐き出させた粗い情報を、PMOの経験というフィルターでサッと濾(こ)して、現場に流す。 この「人間が最後を担う」という諦めにも似た割り切りが、AIを本当の意味で使いこなすコツです。
5. AIに仕事をさせるな。AIを使って「自分が判断する時間」を稼げ
多くの事務局やPMOが勘違いしていることがあります。それは「忙しく手を動かしていることが正義だ」という思い込みです。
しかし、現実は逆です。「余裕のないPMO」は、プロジェクトにとって最大の爆弾です。
管理者が自分の作業(AIの調整や議事録の清書)に追われ、現場のわずかな異変に気づけなくなったとき、プロジェクトは静かに崩壊を始めます。AIを使う真の目的は、AIに仕事を完遂させることではなく、あなたの「脳の余白」を取り戻すことにあります。
「脳のメモリ」を作業で埋めるな
プロジェクトの現場では、常に予想外のトラブルが起きます。
- キーマンの急な離脱
- クライアントの心変わり
- 技術的なデッドロック
これらに対処するためには、PMOの脳には常に20〜30%の「空き容量」が必要です。
AIを使って10分で「ゴミ出し(情報の整理)」を終わらせるのは、その浮いた時間でコーヒーを飲むためではありません。「今、チームの誰が疲弊しているか」「次の会議で誰が反対しそうか」といった、数値化できないリスクを察知するために脳のメモリを空けておくためです。
AIには「嘘」や「空気」は読めない
ChatGPTは、文字起こしされたテキストから要約を作ることは得意ですが、その裏にある「人間の感情」を読むことはできません。
「分かりました(本当は納得いっていないが、これ以上言っても無駄だと思っている)」
「検討します(実質的な拒絶だが、角を立てないための言い回し)」
こうした言葉の裏側にある「泥臭い真実」を見抜くことこそが、人間にしかできない、そしてプロジェクトを成功させるために最も重要な仕事です。AIに清書をさせている間に、あなたは「発言者の声のトーン」や「沈黙の時間」を思い出し、次の根回しの戦略を練る。これが、AIを正しく「踏み台」にするPMOの姿です。
「アウトプット」ではなく「アウトカム(成果)」に執着する
綺麗な議事録(アウトプット)を出すことは、事務局の「自己満足」に過ぎない場合があります。
本当に必要なのは、その議事録を読んだ人が「あ、自分のボールはこれか。今日中にやらなきゃ」と動き出すこと(アウトカム)です。
AIに3分でタスクを抽出させ、残りの7分でそのタスクの担当者に「さっきの件、無理言ってすみません。これ、いつ頃着手できそうです?」と個別にチャットを送る。
この「人間同士の泥臭いフォロー」に時間を割く方が、2時間かけて作った完璧な議事録をメールで一斉送信するよりも、100倍プロジェクトは動きます。
AIはあくまで「作業の短縮」に使い、浮いた時間はすべて「人間関係の調整」という、最もコストがかかり、かつ最もリターンの大きい業務に全振りしてください。
6. まとめ:ツールに振り回される事務局から、ツールを使い捨てるプロフェッショナルへ
「最新のAIを使いこなさなければならない」という強迫観念は、今日この瞬間に捨ててください。
私たちが向き合っているのは、ChatGPTの画面ではなく、プロジェクトという名の「生き物」です。そこには、予算の壁があり、納期の重圧があり、何より、思い通りに動かない「人間」がいます。
そんなドロドロとした現場において、AIはあくまで「数ある道具の一つ」に過ぎません。100円ショップで買ったハサミを使い倒すように、AIもまた、自分たちの仕事を少しだけ楽にするために、雑に、そして冷徹に使い捨てればいいのです。
「完璧」を捨てた先に、本当の効率化がある
「完璧なプロンプト」を追い求め、業務を破綻させてしまうのは、私たちが真面目すぎるからです。しかし、事務局のプロとして本当に守るべきは「書類の美しさ」ではなく、「プロジェクトを止めないこと」のはずです。
AIに30点の「ゴミ出し」をさせ、残りの70点分を自分の経験と勘で補い、浮いた時間で現場の仲間と対話する。この「地に足のついた」活用こそが、結果として最も早く、最も確実にゴールへ辿り着く道になります。
事務局は孤独なPMの「うしろぽっけ」でありたい
効率化の波に呑まれ、ツールに振り回され、本来やりたかった「価値ある仕事」が見えなくなっている。もしあなたが今、そんな霧の中にいるのなら、一度立ち止まって「誰のための、何のためのツールか」を問い直してみてください。
私たち「うしろぽっけ」は、ツール導入をゴールにしません。
現場の目詰まりを解消し、PMが胃を痛めずに判断を下せる環境を整える。そのために、AIも、アナログな調整も、あらゆる手段を泥臭く使い分けます。
あなたが抱えているその「名もなき事務の重圧」を、私たちは一緒に背負いたいと考えています。スマートな成功法則ではなく、明日からの現場が少しだけ軽くなる、そんな実務の知恵をこれからも発信し続けます。
プロジェクトという過酷な旅を、ツールに振り回されて終わらせないために。
一歩一歩、地に足をつけて進んでいきましょう。
そのプロジェクトの「重荷」
半分お預かりします。
PMとしての孤独な決断や、現場との板挟み、そして終わりのない事務作業。 一人で抱え込むには、プロジェクトはあまりに重く、複雑です。 「うしろぽっけ」は、あなたの隣に座り、絡まった糸を一本ずつ解いていくパートナーです。 まずは、今の現場で起きている「悲鳴」をそのままお聞かせください。
無料で相談してみる※地に足のついたお返事を差し上げます。